長崎『安楽子』50年続く名酒場。極上刺身に煮穴子、〆はヒラス鉄火巻

長崎『安楽子』50年続く名酒場。極上刺身に煮穴子、〆はヒラス鉄火巻

2022年12月1日

長崎の中心街・浜町にある『安楽子(あらこ)』は50年続いてきた大衆割烹。水揚げ魚種日本一と言われる長崎の海の幸を味わうならばここで間違いなし。毎日仕入れる鮮度抜群の魚を腕のいい大将がさらに美味しく調理してくれます。酒場好きならば、長崎を訪ねた際は必ず飲みに行ってほしい名店です。

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旅行の醍醐味は、酒場の品揃えと味にあり

博多から西九州新幹線等で1時間30分。長崎も近くなりました。新幹線の開業で注目が集まる長崎へ旅行・出張される方は多いのではないでしょうか。長崎へ行ったら、グラバー庭園や眼鏡橋を観光し、夜は展望台から1000万ドルの夜景を眺めて…と、旅行プランを立てるかと思いますが、忘れてはいけないのが夜のごちそうです。

日本一の海岸線(面積比)を有し、水揚げされる魚種は250種類以上とこれまた日本一を誇る「海の県」長崎に来たら、やはり魚をつまみに飲みたいですよね。

長崎で半世紀の歴史があり、魚が美味しい店といえば『安楽子』です。地元の人々が足繁く通う地域密着の店で、長崎出張では必ず同店を訪ねる人もいるという遠方からの常連さんも多いと聞きます。

外観

場所は長崎の繁華街である浜町・銅座・思案橋エリア。JR長崎駅から路面電車で10分ほど。観光通電停下車。春雨通り(路面電車の通り)から1本入った細い路地に構えるいぶし銀の建物です。

年季が入っていても清潔感があり、外観だけで「いい酒場」だと感じます。さあ、暖簾をくぐりましょう。

内観

大将を中心にお手伝いの人たちで切り盛りしています。「いらっしゃい」と静かに丁寧に迎えてくれる大将。職人の表情ですが、話すと気さくな方です。

冷蔵ケースを配したカウンターは、大将の前で飲める特等席です。長年使い込んでいても歪みのない一枚板が素晴らしいですね。生花に酒瓶、飾られた陶器の平皿。すべてが温かく、そこに座るだけで自然とお酒が進みそうです。

ケースの中も注目です。鯛やヒラス、鯵や穴子などが輝いています。いつも感じていますが、港町にある名酒場の魚はハリ・ツヤが段違いです。

あれを刺身で、これを煮付けで…と考えたところで、献立を開きたいと思います。

品書き

樽生ビールはサッポロ生ビール黒ラベル:500円~。瓶ビールはサッポロヱビス:600円、サッポロラガービール:600円など。

日本酒は杵の川:400円、焼酎は壱岐ゴールドなど:420円~。サワー類は濃いめのレモンサワー:450円など。

黒板メニュー

刺身盛り合わせ:1,350円、サザエ刺し:1,400円、ヒラス刺し:950円、鯛刺し:950円、あじ(たたき):850円、いわし刺し:700円、カジキマグロ(サス):950円、煮穴子:1,200円、尾の身:2,600円、穴子天:1,100円~、カキフライ:750円~、くじらスジポン:550円、オバネギ:1,050円~など。

定番料理

いか刺し:800円~、たこ刺し:800円~、くじら盛り合わせ:2,200円~、あら煮:850円~、エビ天ぷら:950円~、自家製スリミ:500円~、鉄火巻(ヒラス):900円~。

長崎の魚は、一度食べたら忘れられない美味しさ

サッポロ生ビール黒ラベル 中ジョッキ(600円)

老舗の酒場には、どっしりと構える昔ながらの中ジョッキが似合います。提供品質が抜群によいサッポロ生ビール黒ラベルで乾杯!

おばねぎ(1,050円~)

黒板メニューから、贅沢な一品、「おばねぎ」。主菜までのつなぎ役ではなく、むしろ主役級の美味しさです。

長崎では「おば」と呼ばれるこちらは、全国的には「おばいけ」でおなじみ。鯨の尾びれ付近でとれる希少部位です。漢字で書くと「尾羽」。江戸時代から大村湾で鯨の水揚げが行われており、鯨は長崎の食文化のひとつとなっています。

酢味噌につけて頬張れば、コリコリとした食感に続き上品な旨味が広がります。鼻に抜ける酢味噌の爽やかな香りも心地よく、その余韻に自然とビールが進みます。

ヱビスビール(600円)

あわせるビールは、ヱビスビール。釣り竿に鯛を持つ恵比寿様が描かれたビールが魚料理に合うことは言うまでもありません。本場ドイツの製法をもとに、130年間、日本食との相性を磨いてきたビールです。

刺身盛り合わせ(1,350円~)

左からヒラス(ひらまさ)、カジキマグロ(サス)、真鯛、鯵たたき。まず、ヒラスのコリコリ感に驚かされます。活魚特有の硬さではなく、引き締まった身の弾力です。噛むと脂が溶け出し、甘い醤油も相まって舌がとろける感覚に。あぁ、たまりません。

モチモチの鯵のコク、湯霜造りの鯛の濃厚な旨さもたまりません。そしてなにより、長崎の人々に愛されてきた「サス」ことカジキマグロが絶品。舟大工町の老舗寿司店の大将が「旬のサスの美味しさは本マグロに引けを取らない」と言っていたことを思いだします。

杵の川特別純米酒 磨き60 安楽子ラベル(900円)

焼酎の消費量が圧倒的に多い九州でも、長崎は比較的日本酒は好まれており、いくつもの銘酒をつくる蔵があります。杵の川は諫早の蔵で、首都圏でも話題になることが多いお酒です。特別純米磨き60は、酸味と甘味のバランスがよく、食中酒として刺身から天ぷらまで幅広く合わせられます。

自家製スリミ(500円)

そんな杵の川に合わせて頼んだのが、自家製の蒲鉾のてんぷらです。揚げたてホクホクの状態なので、上品な白身の味がより引き立ちます。

煮穴子(1,200円~)

穴子が好物で、産地で見かけると必ず注文するようにしています。安楽子の穴子は、ここ最近の中で最も印象に残る味でした。「黄金穴子」と言われているハラが金色に輝いた対馬の穴子だそう。

口の中でとけるほどふわっと煮てあるのに身崩れしていません。舌の上で広がるねっとりとした脂と甘いタレの兼ね合いは秀逸。

サッポロラガービール(600円)

美味しい料理を食べると、途中でビールに戻りたくなる!ということで、小休憩でサッポロラガービールを。飴色の酒場に似合う赤星です。

サザエつぼ焼き(1,500円)

食べごたえ十分!大きなサザエが運ばれてきました。やや高価ですが、貴重な長崎の「天然サザエ」です。養殖の小ぶりのものとは違い、潮にもまれたサザエは殻のいかつさと裏腹に、甘味があり非常に上品な味わい。特有のクセはなく、サザエ本来の旨苦い味が楽しめます。

鉄火巻(900円~)

締めには、安楽子の名物にもなっている「鉄火巻」を。一般的に鉄火巻といえばマグロを巻きますが、こちらでは長崎名物のヒラス(ヒラマサ)を使っています。長崎では鉄火巻といえば「ヒラス」ということは多々あるようです。コリコリとした歯ごたえとコクが楽しめます。

いままでお伺いしていなかったことを悔やむほどの名店です。賑やかな大箱や施設内飲食店では感じられない、長崎ならではの空気を感じる心地よいひとときでした。

皆さまも、長崎を訪れた際は『安楽子』の暖簾を潜ってみてはいかがでしょう。ここには酒場でしか感じられない長崎の旅情があります。

ごちそうさま。

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(取材・文・撮影/塩見 なゆ 取材協力/サッポロビール株式会社)

店名大衆割烹 安楽子
住所長崎県長崎市浜町7−20
営業時間営業時間
16:30~22:00
定休日
日曜日
開業年1973年