佐世保「水月」 活魚を楽しむ港町の大衆割烹。活イカに舌鼓。

佐世保「水月」 活魚を楽しむ港町の大衆割烹。活イカに舌鼓。

2018年12月20日

長崎県第二の都市、佐世保。非県都ながら九州では9番目に人口が多い街です。同じ長崎県でも長崎市とは異なる文化圏を持ちます。長崎が古くからの外交都市としてヨーロッパの文化を取り入れ栄えたのに対し、長崎はアメリカ文化のエキスが多め。かつては鎮守府が置かれ、現在も海上自衛隊や米海軍の基地が置かれる現役の軍港でもあります。

そんな背景の中で、佐世保バーガーやレモンステーキといった”ハイカラ”な郷土料理が有名となりましたが、海風吹く佐世保の酒場はやはり活魚が欠かせません。佐世保の飲み屋街・山県町の大衆割烹「水月」は、佐世保の海を楽しむ地元の定番処です。

 

入り組んだ海と山に挟まれた僅かな平地に人々の暮らしがあります。街の中心のすぐとなりに海が迫り、街歩きはメリハリをもって楽しめます。国内第三位の造船会社「佐世保重工業」の存在も、飲み屋街を賑わいをもたらせています。

 

街の中心にダイレクトにつながるJR九州・佐世保線 佐世保駅。飲み屋街やホテルなどは駅からすぐの場所です。

 

佐世保駅といえば、JR最西端の駅としても有名です。

 

中心の商店街「させぼ四ヶ町商店街」は、佐世保に寄港する船舶の乗員も歩き、国際色豊か。比較的元気な商店街です。

 

そこから一本脇に入ると広がる佐世保の飲み屋街。早い時間はチェーンの一部を除き飲み屋さんはほとんどやっていません。そんな中で、水月はお昼から開く力強い存在。創業70余年の老舗です。

 

名物はなんといっても活魚料理。特別な値段でもなく、手軽に利用できるのも嬉しいポイントです。ヒラメにカサゴにイカなどが元気に泳ぐ水槽の間を抜けて店内へ。

 

佐世保の冬の幸といえば「トラフグ」。1人で一尾は贅沢すぎるので、いつかのお楽しみに。

 

季節の肴が並ぶ短冊に、変わらぬ木札の品書き。どっしり構えた佇まいは老舗飲み屋好きの心をくすぐります。

 

樽生がサントリープレミアムモルツ、ハイボールがトリスでサワー類もサントリー系が中心です。加えて、瓶では昔ながらのキリンラガーを用意。焼酎はさすが九州、定番をしっかり揃えています。

 

飴色の空間に飴色の瓶ビールが似合います。福岡工場産のラガービール(550円)をトトトと注いで、では乾杯!

 

ビアタンを乾かしながら、料理を考えましょう。本日のおすすめは、活魚の「あらかぶ(カサゴ)」や「あじ」の刺身、ひらすも600円とリーズナブル。今日の目的、いか活き造り(1,800円から)を思い切って注文。1人でも食べられるサイズがあるとのこと。

 

板前さんがさっそく生簀へ。「墨を吐くので気をつけてください」とのこと。

 

慣れた手付きでささっと掬い上げます。

 

ぴちぴちと跳ねるイカは、すぐに厨房へ運ばれます。

 

待つこと数分、肉厚なのに驚くほど透き通った活イカのお造りがやってきました。呼子のイカが九州では知られていますが、隣接する佐世保も負けていません。鮮度抜群、ぷりっぷり。

 

あたまは、このあと揚げるか焼くか調理してくれるとのこと。

 

ふぐのように薄造りにいるのが佐世保のやりかた。こりっとした食感と、爽やかなコク、花のような余韻が印象に残る絶品です。

 

つけるお醤油は九州ですから甘め。これもまたお酒を誘います。

 

合わせるお酒は当然、地元の焼酎を。麦焼酎・壱岐スーパーゴールド(玄海酒造)のロック。グラスなみなみに注ぐのが九州流です。佐世保と壱岐の間でとれたイカを肴に地元の焼酎を飲む、旅先のひそかな贅沢を感じる瞬間です。

 

さて、他のメニューもご紹介します。くじら料理も豊富で、皮は300円ととってもリーズナブル。さえずりなど種類が豊富です。くじらは常連さん御用達の焼酎のトモ。地あがりの「あらかぶ」も安定のつまみです。

 

大衆割烹ですので、煮もの焼きもの、なんでもござれ。土地の味を楽しむならば、さきに紹介したあらかぶ味噌汁で〆るのもよさそう。鯛も水揚げされるので、鯛あら(500円)も手頃でよさそう。

 

ふぐを食べたい。でもとらふぐをしっかり食べるのも…。と選んだのは水揚げも多いサバフグの唐揚げ(600円)。

 

結構、肉が多く食べごたえあり。味はとらふぐとは言わなくても、ちゃんとふぐの美味しさを感じます。繊細な味に、三杯目の壱岐焼酎が気持ちピッチを揚げて吸い込まれていきます。

 

さっきのイカは、残りを焼いてもらいました。ここまでで一杯の値段なので、質のよさやボリュームを考えればだいぶ手頃感があります。軽くあぶったアタマは味噌の旨味もあって、ますますお酒が欲しくなります。

 

もう一品、と頼んだのは鯨の皮(300円)。ねっとり脂の旨味が体温によって口の中で溶けていきます。

 

土地で長く食べられている肴と酒の組み合わせは間違いありません。板前さんのお話や街の空気にも触れてお酒を飲めば、旅酒の魅力にハマり抜け出せません。

 

最後に〆の一本をもらって、楽しい時間もおしまい。夜になればカウンターもいっぱいになるお店、定番の夜もよいですが、通しで営業する付加価値を楽しむのも良いですよ。

老舗のカウンターに美味しい肴あり。ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ 取材協力/九州旅客鉄道株式会社)

 

水月
0956-22-4177
長崎県佐世保市山県町1-16
11:30〜23:00(年末年始以外無休)
予算3,000円