秋田『からす森』新鮮なもつ焼としょっつる鍋。創業50年の大箱酒場。

秋田『からす森』新鮮なもつ焼としょっつる鍋。創業50年の大箱酒場。

2022年4月2日

秋田駅前で50年。もつ焼きの『からす森』は、東京・港区の旧地名「烏森」(現・新橋)が店名の由来。奥に長いカウンターには、スーツ姿お父さんたちの笑顔が集まります。看板料理のもつ焼きに加え、しょっつる鍋など秋田らしい料理も揃います。

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外は寒くても大将の人柄はあったかい、秋田の人情酒場

新橋のガード下にあるもつ焼き店のような活気がある、秋田の大衆酒場『からす森』。創業から半世紀になる老舗で、味わい深い雰囲気の店内は、店に訪れる人を平凡な毎日に隣り合った非日常へと導きます。

秋田駅から徒歩5分ほど。近いので冬場の吹雪く季節でも比較的飲みに行きやすい場所です。駅前ショッピング施設「フォンテAKITA」や秋田の台所「秋田市民市場」などもある駅前繁華街の一画にあります。

店を切り盛りするのはベテランの大将。司令塔的な役割で、お客さんの席への案内や会計などを受け持ちます。注文をとったり切り盛りや提供は、お手伝いの大学生などの若いバイトさんたちのお仕事です。若手に仕事を任せつつ、大将は店内をくまなくみながら、常連さんと四方山話をしたり、はじめてのお客さんに料理のオススメを説明したりと接客に努めています。

さすが店を繁盛させてきた大将。遠すぎず近すぎず、笑顔ですっと飲兵衛の気持ちに寄り添う秋田弁トークに、再び秋田で飲むときは大将に会いに行きたいと思えます。

内観

店は奥に広く、川の字を書いたようなカウンター・テーブルの配置になっています。カウンターはいかにも仕事帰りの会社員風の人々が、各々いつもの料理で晩酌中。常連さんたちは大将が立つ酒燗器前に集まっており、どうやらここが特等席のようです。テーブル席では職場仲間的な4人グループが数組飲み会をしています。なお、二階には宴会用の座敷があるそうです。

壁面は取り扱うアサヒビールのポスター以上に、国鉄からJRのポスターや鉄道写真で埋め尽くされているのも印象的です。地方のターミナル駅前の酒場で飲んでいるという、こういう旅情もまたお酒のおつまみです。

ほとんどのお客さんが飲んでいるのは、大将愛用の間接加熱式の酒燗器で燗をつけた両関酒造(秋田県湯沢市)の両関銀紋(普通酒)です。

上の注ぎ口にお酒を入れ、一度お酒を通せばぬる燗になり、二度通せば熱燗です。

乾杯は瓶ビール「アサヒスーパードライ」で

お酒は後ほどいただくとして、まずはビールから。アサヒスーパードライの大瓶を傾け、ビアタンを満たしたら乾杯!

品書き

お酒

生ビールアサヒスーパードライ)中:600円・大:800円。瓶ビールアサヒスーパードライ)大瓶:700円、黒ビール小瓶:400円、日本酒両関):350円、生酒(700円)、ハイボールブラックニッカ):500円、レモンサワー樽ハイ倶楽部):500円、ワイン:900円など。

串焼き

かしらなんこつハツレバー玉子(卵巣)、カモイカゲソなど各130円。

料理

ホルモン煮込(豆腐入り/豆腐なし):500円、ミニホルモン煮込:300円、肉じゃが:400円、肉どうふ:500円、たらちり:800円、しょっつる鍋:600円、馬刺し:800円、いかそうめん:400円、まぐろ納豆:450円、クラゲ酢の物:300円、はらす:500円、豚肉鉄板焼:800円など。

秋田らしく、煮込み類とは別に肉鍋:700円もあります。

ほかにも、生ビール大と煮込み、串(かしら・タン・ハツ)がついた得々セット:1,100円が常連さんの一人飲みでよく注文されている様子。

大将と大学生と常連さん

なんこつ、たん、かしら(各130円)

注文を受けるのは大学生バイトの皆さんたちの担当です。焼台を担当するのは、他のお手伝いさんより一回りベテラン風のなれた手付きのお兄さん。

さて、秋田は畜産が盛んで大曲や横手は焼鳥(焼きとん)店が多いのですが、ここ秋田市もやきとりはお酒の定番おつまみです。『からす森』が人気の理由は駅前立地や大将の人柄だけでなく、豚モツの鮮度の良さとなにより美味しいことが大きそうです。

とくにしっとりとしたナンコツは絶品。タレはしっかり甘く濃い味です。

日本酒[両関銀紋](350円)

一升瓶をトクトクと酒燗器に入れ、蛇口にセットされたチロリにすっとお燗されたお酒が流れ込む。それをお客さんの目の前に置いたコップに注ぎ入れお燗酒の完成です。飲み飽きない旨口のお酒、県産米でつくる両関銀紋は実に秋田の酒場に似合うお酒といえます。

しょっつる鍋(600円)

串焼きだけでなく、サイドメニューも豊富なのが嬉しいです。とくに鍋物の充実ぶりは魅力的。秋田らしい料理としてしょっつる鍋を注文しました。

「うちでは鍋の魚はハタハタではなく鱈ですがよろしいですか?」

日本三大魚醤のひとつである「しょっつる」は、ハタハタを原料にしたもの。

「しょっつる鍋は味付けに魚醤を使っているからそう呼びますが、具はハタハタでなく、タラでも結構いけるんですよ」と常連さん。

晩秋から春頃までが旬の鱈、秋田では鱈の白子を「だだみ」と呼んて重宝していますし、鱈の身もまた、酒場の鍋には欠かせない具材なのですね。

コク深く旨味の強い鍋に、両関のふくよかな米の香りが大変よく調和します。

若いお手伝いさんたちのハキハキとした接客に、温厚そうなご主人、そして、そんな雰囲気が好きで集う常連さんたち。皆さんが醸し出すあったかいムードが、まだ寒さが残る秋田の夜でもほっこりとさせてくれました。

ごちそうさま。

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

店名からす森
住所秋田県秋田市中通4丁目11-3
営業時間17:00~22:30(日定休)
開業年1970年代