函館『市場亭』旬のヤリイカで昼ビール!70年続く自由市場の大衆食堂

函館『市場亭』旬のヤリイカで昼ビール!70年続く自由市場の大衆食堂

2022年1月21日

函館のヤリイカは冬が旬!夜は居酒屋で落ち着いてつまむのがよいですが、昼酒に豪快に頬張るというのも楽しいです。飲食店が仕入れにも使う函館の台所「函館自由市場」内にある『市場食堂』は最適な一軒でした。

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朝、イカが食べたくなったら空港へ

それは突然の思いつきでした。イカが食べたい!そういえば、函館のイカ刺しは冬が美味しいと居酒屋の大将から聞いたたことがあります。足取りも軽く朝の羽田空港へ。離陸から1時間ほどで眼下には津軽海峡がみえてきました。最近、海を見ると「おいしそう」という感情がわいてきます。

「はるばる来たぜ」、なんてもう言えないかもしれません。お昼前には函館空港に着陸し、そのまま空港連絡バスに乗り換えます。駅へ直行する空港リムジンバスのほかに路線バスも運行されており、飲食店へ向かうならば途中下車ができるこちらが便利です。

70年以上続く市民の台所「函館自由市場」

函館の市場といえば、JR函館駅に隣接する函館朝市が昔から観光地として有名です。宿泊施設も多い街の中心地にあり、バスや船、鉄道を利用する前後に立ち寄れる便利な存在です。

実は函館にはほかに「函館自由市場」と「中島廉売」という2つの市場があり、どちらも地元密着の存在です。今回訪ねる『市場亭』は、そのまま店名の通り、函館自由市場の中で長年続く老舗の食堂です。

函館自由市場は、「自由」と名がつく通り、その由来は1945年(昭和20年)の夏に自然発生した青空市場(ヤミ市)が起源です。数年後に現在の新川町電停付近に移転し、以来70年以上続いてきました。

建物の外観はカジュアルな雰囲気ですが、これは1995年(平成7年)大晦日に火災があり翌年に建て替えたことによるものです。一歩市場内に入ってみれば、昔ながらの市場だということは感じられるに違いありません。

細長い市場内には、鮮魚店を中心に約40軒が軒を並べています。特定の魚介類を揃える専門店も多く、早朝は近隣の飲食店の大将が仕入れていく姿が多数見られます。

市場の食事処、その名もずばり「市場亭」

外観

市場内には4軒の飲食店が営業しています。寿司、中華そば、喫茶店、そして食堂の『市場亭』です。市場で働く人々御用達の店なのですが、店内で食べている関係者はほとんどいません。そのかわり、長靴姿の人がお盆に載せた料理をもって出たりはいったり。市場の人は、皆さん自分の店で食べているのですね!

このように人の出入りが多い店ですが、大将も同様に頻繁に出入りしています。店に戻ってくるときは、手元にイカや魚を持っているようです。

そう、ここは魚介の在庫をほぼ持たない海鮮の食堂なのです。注文が入ると市場内に魚介類を取りに行き、それを持ち帰って調理し、お客さんに提供するという仕組みです。「市場の魚屋さんは店の冷蔵庫」なのだそう。

周囲を海に囲まれ、漁港と市場が直結していてるような函館ですから、魚の鮮魚がいいのは言うまでもありません。よっぽどのことがなければとれたてのイカが食べられます。※日曜は定休日

内観

ダウンにトレーナー、白エプロン姿の大将を中心に、数人で切り盛りするごくごく普通の家族的な大衆食堂です。和やかな雰囲気の中で、のんびりテレビを眺めながら地元の家族連れが定食を食べています。

こちらもビールをもらって、ほっとひといき。

しっゅと立ち上がる435型タンブラーが店の雰囲気にぴったり。女将さんが黒ラベルを泡少なめでたっぷり注いでくれました。北海道で飲むサッポロビールは、いつもよりちょっぴり特別です。

それでは乾杯!

(2023-07-03追記)ビールはサッポロからアサヒに変更されました。

品書き

お酒

朝7時から昼過ぎ頃までの営業にもかかわらず、お酒はよく出るそうです。

お酒高清水):450円、焼酎:350円、ビール中:500円、生ビールサッポロ黒ラベル):500円、冷酒:800円。

刺身

イカ刺:1,000円、イカソーメン:1,100円、ほっき刺:1,100円、ほたて刺:1,000円、つぶ刺:1,800円など。

食事・定食

いくら丼:1,500円、うに丼:2,300円、かに汁:1,000円、イカ刺定食:1,300円、とりめん:750円、親子丼:750円など。市場関係者の食事処でもあるので、海鮮に限らず、焼肉丼ラーメンまであります。

驚きの美味しさ!旬のヤリイカを心ゆくまで

イカ刺(1,000円~)

市場亭のイカ刺しは、なんと1杯すべて盛られてやってきます。ですので、1,000円~(大きさで多少変動)といってもけして割高ではありません。

エンペラもゲソも、クリーム色をしたキモも一緒に、お皿に溢れんばかりにもられてきます。これは食べごたえがありますね!

まだ水揚げからそれほど時間が経過していないため、半透明で大葉が透き通って見えています。お皿に薄造りのように敷いているのではなく、豪快にどさっと盛られているのも市場の食堂の醍醐味。もりもりと、お腹いっぱいいただきます。

持ち上げてもそれほど垂れない硬さがあります。噛むとコリコリとした食感が心地よいです。甘さがふんわりと広がり鼻にぬけます。これはたまらないと、すかさずビール。

高清水お燗(450円)

ビールで心地よくなってきたところで、お燗をつけてもらった高清水を。刺身とお燗酒、ここは函館で時刻は午後1時。なんと幸せな状況でしょう。

ヤリイカ刺しの美味しさ、再発見

函館は通年でイカの水揚げがありますが、夏季はスルメイカ(マイカ)で冬季がヤリイカと種類がかわります。ヤリイカはみずみずしくて甘いです。とくに旬の1月から春にかけてが絶品とのこと。

函館自由市場でこの日食べたイカは記憶に残る圧倒的な美味しさでした。一人だと、イカ刺しだけで満腹になりますが、それもまた良い思い出です。

ごちそうさま。

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

店名市場亭
住所北海道函館市新川町1-2
営業時間7:00~17:00(日第2第4木定休)
開業年1950年頃(市場の開業)