根室「どりあん」 クラシックと相性抜群。エスカロップは根室のソウルフード。

根室「どりあん」 クラシックと相性抜群。エスカロップは根室のソウルフード。

1969年(昭和44年)創業、食事と喫茶「どりあん」。この店名をご存知の方は北海道の出身か、はたまた北海道”通”の方でしょう。

北海道には様々な郷土料理がありますが、そのひとつに根室の「エスカロップ」があります。バターライスに薄切りのとんかつを載せ、特製のデミグラス風ソースをかけて完成するワンプレートの洋食料理です。

根室の洋食店で1963年(昭和38年)頃に考案された料理で、発祥のレストランは現存していないものの、その系譜にある店舗が現在も根室で営業中。それが「どりあん」です。

営業時間は朝10時から。喫茶店として利用しモーニングを楽しむ地元のお父さんに混ざって、朝から北海道限定ビール「サッポロクラシック」を片手に、旅先グルメを楽しんできました。

 

港町・根室。通年(火曜日定休)で朝からやっているお店は多くなく、JR根室駅周辺で日中から瓶ビールを傾けようと思うと、「どりあん」がぴったり。

ビロード張りの椅子とレトロな照明、暖炉のある内装がとてもあたたかい印象です。マスターやお姉さんが優しく接してくれます。海風がふきつける根室の坂道のピリっとした空気からぬくもりたっぷりの空間に入り、体が溶けてしまいそうな錯覚になりました。

 

どんな季節も、あったかい空間で落ち着いたなら、次に欲しくなるのはコレ。冷凍庫で冷やされたビヤタンに向けて、トットットッ…

 

北海道恵庭で醸造されるサッポロクラシック(中びん600円)で乾杯!

 

エスカロップ(870円・取材時)が名物ですが、洋食メニューは一通り揃っていて、もうひとつの名物と言われているドライカレーに牛肉を載せデミグラスソースをかけた「オリエンタルライス」も気になるところ。

スパゲッティミートソースにとんかつを載せた「カツミート」は、隣の都市・釧路の郷土料理「スパカツ」に似ています。魚介類にあふれた北海道沿岸の町のソフルフードには肉料理が多いです。

 

ソフトドリンクが並ぶ中、サッポロクラシックの瓶生だけ(季節銘柄が入ることもあります)が用意されています。21時と遅い時間までやっていることから、地元のタクシーの運転手さんに聞くと飲み会の〆に来る地元の人もいるそうです。

 

子供から大人まで、みんなが好きそうな料理「エスカロップ」。昭和で時間が止まったままの料理には、昨今の派手な料理にはない安心感があり、「絶対に美味しいよね」と食べる前から大きくうなずけます。

 

バターとデミグラスソースの組み合わせから味がこってりしているように思えますが、食べてみると予想以上に軽い印象です。パラパラのバターライスにこりっとした食感のタケノコがときどき入ります。この食感の変化に加え、ソースの酸味も軽く感じる要素。

 

サクサクの衣をまとった薄切りとんかつは、この厚さがベストなのかもしれません。全体的に味が絶妙なバランスでまとまっています。

美味しいなーとしみじみ思いながら、コクがあるのに余韻がすっきりとしたサッポロクラシックを、そこで一口。旅先グルメは生活圏にはない、じんわり感じる幸せがあります。

 

ライスとビールは難しい組み合わせなのに、瓶ビールをおかわりしたくなるほど相性よく感じる理由は、デミグラスソースの濃厚なビーフのエキスの力に思えます。二週間近くかけて仕込むそうです。

 

2019年で創業50年目となった「どりあん」。地元の人は自動車でやってきて、自宅用にテイクアウトで次々と購入していきます。長く続き、現在でも地元の人に支持されるよきお店でした。

根室に宿泊した翌朝は、エスカロップとクラシックがおすすめです。

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

 

どりあん
0153-24-3403
北海道根室市常磐町2-9
10:00~21:00(火定休)
予算1,900円