札幌の中心部に老舗の大衆酒場はあまりない。東京や大阪、仙台なんかのイメージで探してみると、その数の少なさで驚きます。大阪はターミナル駅前を目をつぶって歩いていても老舗酒場に当たるくらいの数があるのに。
そんな札幌・すすきので数少ない正統派老舗酒場といえば「道産子手作り たかさごや」をまずは紹介しなくてはならないでしょう。
もうすぐ創業から60年を向かえる老舗で、札幌という街そのものの歴史から考えてみたら、このお店がどれだけ早い時期からここで酒場をやっていたかがわかります。木造の建物に白い看板、藍色の暖簾がかかった店構えは、酒場好きならば悩むことなく飛び込むであろう素晴らしいビジュアルです。
店内も正統派酒場のつくりで大きなコの字カウンターを中心とし、木の天井から暖色照明がさがる暖かい空間。もうここの座っていられるだけで身震いをしてしまいそう。
へんな上品な感じではなく、テレビはあるし全体的に雑多な感じ。それがまたいいんです。観光客向けではなく、地元の方を相手にしているということがわかる作りこまれてない雰囲気が好き。
ビール(生550円)はもちろんサッポロです。すすきのの老舗酒場が星でなくて、どこに星があるでしょうか。435型タンブラーに星の肩のやや上でキープされている泡。フロスティミストの層が分厚く、泡が上に持ち上げられているほどです。いやーもうたまりません。写真撮っている場合じゃない(笑)
では乾杯!
ちなみに、瓶でヱビスと赤星も置いています。
柴田 清氏のお孫さんの柴田 努さんと乾杯。
柴田 清氏とは、昭和24年に朝日と分離した際の現在の企業としてのサッポロビールの初代社長で、お孫さんもサッポロビールにお勤めされています。サッポロビールは北海道で開拓使麦酒として発祥して今年で140年。その歴史を探る北海道への取材旅行で出会った人はまた特別な人でした。偶然ってあるものですね。黒ラベルがいつもよりさらに美味しく感じます。
年季の入ったフーデル、お通しも映えるというものです。大根おろしにフキ、ちびちびつまみながらお摘みを選びましょう。
お刺身、焼き魚、煮魚、酒の肴系の小鉢が基本で、季節や入荷によって料理がいろいろ変わっていくこちらのお店。価格はどれも千円未満と酒場価格で、料理屋や割烹よりも気軽に北海道食材を楽しめるのが嬉しい。居酒屋のメニューって本当にご当地の色が出ますよね。眺めているだけでお酒が進みます。
京都日替わりメニューは、ウニ、かわはぎ、子持ちシャコ、はまぐりにあん肝ポン酢。どれも大変きになるところ。
北海道の酒場は、角打ちにだってししゃもを置いていることがある、それくらい大衆魚なのでしょうね。大ぶりでたっぷりの玉子がつまったししゃもに舌鼓。ああ、ビールから金滴(330円)や北の錦(530円)に切り替えてちびちびとつまむのもいいなぁー。
日本酒と合わせるならばイカワタのホイル焼きがイイ!全国の居酒屋で見かけるメニューですが、原点は釧路の炉端焼き文化にあると言われています。(※諸説あります)
たかさごやも炉ばた料理のお店ですから、本格的で旨味がぎゅっと詰まった大変美味なものです。ビールが進みすぎてもう大変。
今日のメインディッシュ、きんき焼き。ものすごく脂が乗っていて深い味わい。日本酒からビールに戻したくなってきます!炉端焼きというと、大きなしゃもじで料理を提供するスタイルが注目されますが、やっぱり本質的には魚の美味しさが大事ですよね。炉端焼きの美味しさを再発見しました。
最後にビールをもう一杯。この空間にデンと置かれたグラスはそれだけで絵になります。古典的な酒場、木と暖色照明からくる温かい空間にキラリと光るビール、いいものですね!
北海道らしい料理が揃う老舗酒場。こんな場所でビールや日本酒を片手に、地元の魚をつまむというのは人生のなかで一度は経験たいと思いませんか?願っている夢は叶うもので、大変満足しました。
生ビールがすごく美味しいと思っていたら、帰り際に気が付きました。そうですか、パーフェクト黒ラベル認定店でしたか。なるほどね。
すすきのの老舗酒場、大変気に入りました。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ 取材協力/サッポロビール株式会社)
たかさごや
011-231-0841
北海道札幌市中央区南三条西4
17:30~23:00(日定休)
予算3,000円