元消防署だった建物を活用した、不思議な海鮮料理屋が小樽にあります。『庄坊番屋』という店名も消防署を意識したもの。飲食店街から離れた場所にありますが、地元の人が宴会や会食に利用する地元の人気店です。お昼から通しで営業しており、小樽の嬉しい昼飲みスポットでもあります。
目次
昭和26年築、旧小樽市消防本部で飲む
小樽といえば、倉庫を改装したビール醸造所やレストラン、銀行を改装したイタリアン、薬局だった建物で過ごせるカフェなどリノベーション物件の宝庫ですが、消防署を活用した居酒屋はあまり知られていません。
「小樽運河」エリアや、アーケード商店街「小樽都通り」、小樽名物・寿司屋が立ち並ぶ「寿司屋通り」などの定番観光スポットからは離れた「花園」にあります。小樽駅からは観光がてら歩いて15分ほど。小樽市役所や現小樽市消防本部にほど近い高台にあり、店名は『庄坊番屋』。
1951年(昭和26年)築の建物で、確かに年季は入っているものの、いかにも行政機関らしい堅強な外観で、消防署の名残を感じます。
外観
『庄坊番屋』の開業は1985年のこと。歴史ある飲食店の多い小樽ですが、37年続く庄坊番屋も街の景色に溶け込んでいます。
営業時間は11時30分から22時までと長く、中休みはありません。飲食店街から離れてポツンと建つ同店ですが、それだけ日中から利用する人が多いのでしょう。
内観
店内は店奥の階段などの一部を除き、完璧に飲食店としてリノベーションされています。板前さんたちが立つカウンター席が店の中心的な存在で、その前にはテーブル席がずらりと並びます。二階は座敷も用意されており、一人飲みから宴会まで幅広い用途に対応しています。
平日の正午頃に伺いましたが、すでにお酒を飲んでいるグループが数組居たことに驚きました。皆さん地元の方のようで宴会されています。
昼食時ということで、スーツや作業着姿の皆さんが次々と食事にやってきて、なかなかご盛業のようです。
品書き
お酒
樽生ビール:605円はアサヒスーパードライ、キリン一番搾り、サッポロクラシックの3銘柄あります。瓶ビール:605円もアサヒ、キリン、サッポロの3社揃い。日本酒(白鶴):407円、グラスワイン:715円などもあります。
酎ハイ各種は440円。
地酒
合同酒精(北海道)の北の誉 純米大吟醸鰊御殿:880円、國稀酒造(増毛)の國稀 純米吟風:825円、小林酒造(夕張郡栗山町)北の錦 特別純米:825円など。
料理
お刺身はホタテ:1,375円、ホッキ:1,265円、つぶ:1,320円、イカソーメン:1,650円など。お酒の友に、いくら:1,100円、かすべの煮こごり:1,045円、タコざんぎ:825円など。焼物は八角:1,045円、にしん姿焼き:990円、えび塩焼:1,100円など。その他、しゃこ柳川:2,200円、鉄砲汁:1,210円、天ぷら:880円、カキ酢:825円など。
寿司、丼ものは、寿司漁火10貫:2,310円、生ちらし:2,640円、番屋丼(うに、イクラ、アワビ):3,190円、サバ巻:990円など。
当地ならではの肴を楽しむという、旅のカタチ
サッポロクラシック 生ビール(605円)
有名観光地をそぞろ歩きするだけが観光ではないと思っています。土地に根付いた酒場を探し、当地ならではのおつまみを食べることだって、立派な旅の楽しみ方ではないでしょうか。
「飲むためだけに小樽に来ちゃいました」
「早い時間からお酒を飲むのは最高ですよね」、と話しかけてくれたお店の方にこう答えながら、さぁ、いただきます。
銘柄はサッポロクラシック。たっぷり入る中ジョッキで乾杯!
お通し(495円)
菜の花に新漬けがこの日のお通しです。お酒を誘う美味しい一品目です。
しゃこ刺身(1,155円)
蝦蛄といえば全国的には岡山などの瀬戸内や伊勢湾産が有名ですが、石狩・小樽のあたりでも水揚げがあります。以前、余市のウイスキー蒸溜所近くの海鮮居酒屋で食べたときの味が忘れられず、庄坊番屋でも頼んでみました。蝦蛄は大好物なんです。
取材は初夏だったこともあり、嬉しいことに子持ちでした。小樽は「しゃこ祭」なるイベントも開催されるほど蝦蛄推しなので、ぜひ食べてみてください。旬は二度あり、春から初夏までは子持ち蝦蛄があがり、10月からは柔らかい秋蝦蛄のシーズン(漁解禁)になります。
生ちらし(2,640円)
蝦蛄を肴に増毛のお酒「國稀」を楽しんだあとは、庄坊番屋名物の「生ちらし」をいただきます。丼ぶりものだからと侮るなかれ。庄坊番屋が地元で人気の理由のひとつがこの「生ちらし」で、酢飯よりも具材のほうが多いくらい魚介が山盛りなんです。
付け合せのお吸い物は、北海道らしい大ぶりのあさりが入っいます。
具は二重、三重に重なっています。マグロ、蝦蛄、ヒラメ、ゲソ、ホッキ、数の子などの下からは、ウニやホタテ、とり貝、たっぷりのイクラに甘エビ、アワビまででてきます。
盛り付け方を工夫すればもっと写真映えしそうなのですが、こういう素朴で実直な感じもいいものです。
コリコリで上品な磯の甘さがふわっと広がる肉厚なアワビ。お銚子があっという間になくなってしまいます。最後に、軽く酢飯でお腹を満たして大満足です。
お酒をのんびり飲みながら、美味しい肴に舌鼓をうつ。魚好きでしたらぜひ訪ねてほしい一軒です。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
店名 | 庄坊番屋 |
住所 | 北海道小樽市花園2-6-10 |
営業時間 | 11:30~22:00(水定休) |
開業年 | 1985年 |
公式サイト | http://www.shobobanya.jp/ |