木古内『瑠瞳』北海道最南端の駅前蕎麦屋で、海鮮天丼に舌鼓を打つ

1831年（天保2年）から続く豊漁を願う神事「禊（みそぎ）」が有名な道南の町・木古内。以前は都心からアクセスしづらい町でしたが、北海道新幹線の開通で、東京から1本で行けるようになりました。今回はそんな木古内の駅前にある蕎麦店『瑠瞳』で、地元食材をつかった海鮮天丼をつまみにビールを楽しめます。昼飲み可、お昼もお酒を提供しくれます。

絶景車窓、函館湾の対岸に函館山をみながら

北海道新幹線の渡道後最初の停車駅となる木古内。海と山に挟まれた、木古内川の扇状地に広がる人口5000人弱の小さな町ですが、松前半島における交流地として古くから栄えてきました。青函トンネル開通後は本州と北海道を結ぶ鉄道の大動脈が通るようになり、2016年の北海道新幹線開業にあわせて、なんとJR木古内駅は新幹線停車駅になりました。

道南最大の都市、人口25万人の函館とは函館湾を挟んだ対面にあり、在来線の道南いさりび鉄道線が約1時間で結んでいます。函館から片道1時間なので、日帰りの小旅行にもぴったりです。列車は海を見下ろす山際をゆったりとした速度で走り、函館湾越しに函館山の眺めが楽しめます。

缶ビールを持って乗るだけで楽しいローカル線

キヨスクでサッポロクラシック缶ビールを購入し、朝市で買ったお惣菜をつまみに車窓を眺めれば、すばらしき居酒屋ローカル線です。雪景色の中をゴトゴトと進み、列車はまもなく木古内に到着します。

懐かしいサッポロビールの広告付きホーロー駅名板が残る木古内駅。旅情たっぷりです。お客さんは足早に新幹線へ乗り換えていきますが、私は駅前のお蕎麦屋さんが目的地。

木古内駅前の蕎麦処 瑠瞳

真冬の木古内はなかなかの積雪量です。歩道は路面が見えず、踏み固められた雪の上を歩きます。目まぐるしく変わる空模様の中に突然現れる眩しいほど青い空はまるで北欧のよう。函館とも違う非日常感が冬の木古内の魅力です。

駅前にはバス待合室を兼ねた観光施設「道の駅みそぎの郷きこない」があります。施設内にもレストランはありますが、やはり目指したい場所は、町内にある家族経営の店です。

蕎麦処瑠瞳 外観

雪をかき分けるように歩くこと3分ほど、『蕎麦処 瑠瞳』は、駅利用者・関係者をはじめ、地元の人が通う町の蕎麦店です。創業は2008年、蕎麦職人のご主人とご家族で切り盛りされています。

乾杯は瓶ビール「サッポロ黒ラベル」で

正直、吹雪く駅前通りを歩いている人は私しかおらず、雪が吸音することもあって静まり返っていました。フードに積もった雪を払い落として店内に入ると、これがびっくり。カウンター以外は満卓状態です。作業着姿の働く人達や、地元にお住まいであろう老夫婦などで賑わっています。

あったかい雰囲気の中、緊張がとけると同時にビールが飲みたくなってきました。サッポロ黒ラベルで乾杯！

品書き

お酒

瓶ビール中びん（サッポロ黒ラベル）：550円、日本酒：500円、焼酎水割り：500円。

おつまみ

天ぷら盛り合わせ：1,300円、えび天ぷら：200円、かつとじ：950円など。

おそば・定食

もりそば：650円、いか天おろしそば：650円、とじそば：800円など。

天ぷらセット：1,100円、はこだて和牛御膳：1,520円、はこだて和牛バーガー：520円など。はこだて和牛は、木古内町の農家4軒で飼育されている赤毛の和牛のこと。

魚好きとしては、豊漁を祈願して寒中みそぎ祭りの人気料理を

海鮮みそぎ天丼（1,380円）

北海道は野菜もお肉も美味しいですが、沿岸の街で楽しみにしているのはやはり海産物です。こちら『瑠瞳』で海鮮を楽しむならばみそぎ天丼で決まり。ホタテ、キス、エビなどがふんだんに盛られた豪快な天ぷらは、ビールが進むこと間違いなし。

函館はキスが水揚げされる北限と聞きます。通年で道内産かどうかは難しいですが、そういう土地柄を考えて食べるのもまた楽しいです。

ごはんの量を控えめにすれば、天丼も立派なお酒のおつまみです。キスやホタテでビールを空けたあと、締めのご飯でお腹を満たす。こういう旅先の昼食もいいものです。

濃厚な旨味で美味しいふのりの味噌汁も気に入りました。

木古内といえば、お酒好きの間では地酒「地酒みそぎの舞」の町としても知られています。木古内の田んぼで収穫された米を使用し山形・鶴岡で醸造したもの。木古内の酒販店でしか購入できません。道南散策の合間に、酒販店や町の蕎麦店を訪ねてみてはいかがでしょう。

ごちそうさま。

（取材・文・撮影／塩見 なゆ）