釧路「鳥松」 ザンギ発祥の店。元祖の味は秘伝のタレが決め手です。

釧路「鳥松」 ザンギ発祥の店。元祖の味は秘伝のタレが決め手です。

2018年7月24日

いまでは全国的に知られた北海道の郷土料理「ザンギ」。道産子は鳥から揚げのことをこう呼びます。

定番のソウルフードとして札幌はもちろん北海道全土で食べられていますが、その発祥は道東最大の都市・釧路にある小さな焼鳥屋でした。今回は釧路の飲み屋街でおよそ60年続く元祖ザンギの店「鳥松」をご紹介します。

釧路市は人口17万人が暮らし、10万人規模の街としては日本最東端に位置します。景勝地の釧路湿原は街に隣接しており、また、最東端の街・根室への玄関口として道東観光における拠点となっています。

産業においても重要な位置にあり、日本唯一となった石炭鉱業所や大規模な食品、製薬、製紙工場が地域経済の核です。

人が集まるところに飲み屋あり。釧路の歓楽街は「末広」と呼ばれていて、駅から15分ほど歩いた場所に広がっています。人口の割りに規模が大きいのですが、ここもまた地方都市の運命か、中心部の空洞化で日中は寂しさを感じずにはいられません。

それでも、暮れてくるとどこからともなく人々が集まってきて、営業中の店に続々と人が飲み込まれていくので、飲み屋街としての役割は今も変わらず道東イチと言えそうです。

この一角で変わらず暖簾を掲げる「鳥松」。ザンギ発祥という背景を知らなければ、よっぽどの酒場好きでなければ気にせず通り過ぎてしまいそうなこじんまりとしたお店です。

1960年(昭和35年)、焼鳥屋として営業していた鳥松にブロイラーが持ち込まれたのがザンギの始まり。戦後、米国から持ち込まれたブロイラー。北海道はその広大な大地からブロイラーの一大産地となり、苫小牧にはその名もズバリ「ブロイラー」という店ができるほどの存在となりました。

そんなブロイラー、つまりは若鶏を、鳥松では焼鳥以外の方法で美味しく食べられないかとぶつ切りにして揚げてみたところ、これが人気となり、今に続きます。ザンギの名は、中国語の炸鶏(ザーギー)から来ているそうです。

鳥松のカウンターには変わることなく北極星が並び、ザンギと長年相思相愛の関係です。北海道生まれのビール、サッポロビール(470円)で乾杯!

若鶏野菜炒め、もつ煮込み、おにぎり味噌汁の他は、ザンギしかありません。営業中、続々とやってくる注文に応えるべく、厨房では営業中もブロイラーをぶつ切り中で、これをフレッシュなまま高温のラードで一気に揚げます。

骨まで混じっているいるのが元祖の「ザンギ」。食べやすく骨なしの部位を集めた「骨なしザンギ」もあります。手羽、ももは別に選ぶことも可能ですが、ほぼ全員ザンギか骨なしを頼みます。

お姉さんも着席と同時に「骨のあるザンギか、骨なしか」と二択で聞いてくるくらい。

二代目ご主人が黙々と揚げ続けています。そうして店内に充満する唐揚げのいい香り。これを肴にビールを飲んでいると、数分で完成です。

パリッとした表面と、若鶏の柔らかくジューシーな肉質、ハフハフしながら頬張って、やけどギリギリで飲み込んだ後はまったなしで生ビール。飲み込んだ後には幸せしか残りません。まさに「プハー!」な瞬間。

塩で軽く下味がついていますが、鳥松に来たならばカウンターに置かれたタレを試してみて。初代が全国を食べ歩かれて開発した秘伝のタレだそうで、これがやみつきになる美味しさ。ウスターソースに近い味ですが、コクと酸味に違いあり。

赤ワイン…とも違う、不思議なワインは300円。ぶどう酒といいましょうか、甘酸っぱい味で、ザンギと一緒に食べて飲んでとしていると不思議ととりこになっていくもの。謎の開明が待たれます(笑)

たとえこの後に梯子酒の予定が待っていようとも、そして散々食べてきた後だとしても、この一皿は間違いなくペロリと完食してしまうことでしょう。

タレつけで食べるカラっとジューシーな正統派ザンギ。釧路に訪れた際にはぜひ飲みの一軒に立ち寄られてみることをおすすめします。

ごちそうさま。

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

鳥松
0154-22-9761
北海道釧路市栄町3-1
17:00~24:00(日定休)
予算1,500円