久里浜「だるま」 御家族御揃いで!半世紀の歴史が物語るよき酒場

久里浜「だるま」 御家族御揃いで!半世紀の歴史が物語るよき酒場

2018年7月27日

久里浜といえば、誰もが教科書で習うペリー来航の地です。その頃は浦賀のほうが栄えていたようですが、浜辺の広さから久里浜が選ばれたそうです。

その後、久里浜は首都防衛の要として軍事施設が設けられ基地の街として拡大していきます。1942年には現在の京急電鉄となる路線が開通し、終戦後は軍事施設は発電所や研究施設、工業団地へと姿を変え、現在に至ります。

港湾、工業、そして研究都市として労働者が多い久里浜は、次々と酒場が誕生し、私鉄の終端付近の駅としては異色なほど立派な飲み屋街が広がっています。そしてこの街で老舗の酒場といえば「だるま」です。

駅前のアーケードは、商店が閉まった後もいたるところで赤ちょうちんが灯ります。だるまもそんな一軒です。

若鳥だるまの字体と、桁の少ない電話番号。いぶし銀の店構えにノンベエの心は揺さぶられます。

間口は他の商店と同じ3間ほどですが、店内は奥に広く、飴色の分厚いカウンターがひたすらに伸びています。入ってすぐに焼き場があり、80歳ほど、ベテランのお姉さんがご年配なのに若い子にも負けないほど元気に串を焼く姿が印象的。

品書きもまたかっこいい。黒い札に短冊、ホワイトボードと並び、看板料理の若鶏料理や炒めものまで幅広く取り揃えています。若鶏のぶつ切りを揚げたコマ揚げはお腹に余裕があればぜひお試しあれ。

馬刺し、サバ塩とバラエティ豊か。コロッケは手造りとのこと。焼鳥の種類も多くて何を頼むか悩みます。料理は400円台が多くて良心的です。

加えて日替わりメニューでは、なんと今は少なくなった鶉のフライや京急沿線に多い本気中華のひとつ、小籠包の文字も。

生麦のビール工場でつくられた沿線の味、だるまの樽生はキリン一番搾りです。乾杯!

お通しの大根おろしは焼鳥の箸休めにぴったり。女将さんが焼き上げる串で、100円から200円の価格帯です。タレは甘さ強めでみたらしのタレ風。昔懐かしい古き良き酒場の味といいましょうか、あれこれ語る必要もなく、素直にビールが進むいい塩梅です。

串はやはり頼むとして、取材時はいただきませんでしたが、揚げもののレベルは高く安定しています。

それにしても、ここの酎ハイは濃い。飲めば確実に京急線で気持ちの良い時間を過ごせることでしょう。品川・泉岳寺止まりならよいのですが、寝過ごしはしたくないなー…。

キリッと濃い甲類で二層化したレモンハイを飲みながら女将さんとお話タイム。家族経営のほっこりした空気に包まれた店内は、今日も久里浜の人で満席の賑わい。そうしてやってきたのは、気になっていたショウロンポウ。まさか、目の前で蒸し上げるとは思わないですよね。

水蒸気でぽくぽく仕上げて。固形燃料の火が消えたら出来上がり。アメリカ文化、そして横浜からの中華料理のテイストが流れ込む京急沿線の酒場は、他の地域にない独特なものがあります。こういう出会いがあるから、飲み歩きはやめられません。

お客さんは意外にも若いグループも多く、街に長年親しまれている酒場らしい土地の色を感じます。看板に書かれた”御家族御揃いで”の言葉のとおりです。

ごちそうさま。

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

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