釧路湿原をはじめとした自然豊かな観光都市・釧路。同時にこの地は北海道を代表する酒の肴の聖地でもあります。
炉端焼きやザンギが釧路発祥の酒の友として知られていますが、地元のビール好きの間では、スパカツこそ最強のビールのつまみと評判高いです。釧路市民の心の味、「スパカツ」は、鉄板で提供するスパケディミートソースとんかつ載せです。このなんともハイカロリーで満腹感ある料理がなぜビールに合うのか、発祥の店「レストラン泉屋」で体験してきました。
釧路へはJR根室本線を走る特急スーパーおおぞらが札幌や千歳から結んでいます。極寒の冬も安定して走る北海道縦断交通を代表する心強い列車です。
国鉄時代のムードを残すJR釧路駅。北海道開拓を力強く支えてきた動輪のシンボルが迎えてくれます。ここから鉄路はさらに東端の街、根室へ伸びています。
日本の食を支える酪農・農業地帯で、そして今は珍しくなった炭鉱が操業する街。街の規模は大きく、夜の提灯の数も道東イチです。
街の中心から路線バスで10分ほどで海岸線にでます。ドキュメンタリー番組などでしか見たことのない、北海道らしい広く青い世界がそこにあります。飲みに行くまでの遠回りで喉を乾かし、いざ「泉屋」へ。
街の中心に構えるレストラン泉屋本店。初代がホテルで修行ののち始めたお店で、創業は昭和30年代。60余年続く老舗洋食といえば、釧路だけでなく全国的にも貴重な存在です。
ランチタイムはもちろんのこと、日中から多くの地元客で賑わう店内。二階のメインフロアへは、取材時も行列ができていました。
正統派の日本洋食の雰囲気。これを喫茶店風とみるか、日本型のビヤホールのように見えるかは人それぞれ。私はもちろん後者の印象を受けました。
“レストラン”で”スパケディ”で昼から…そんなワードが並ぶと、本当に飲んでいいの?とお思いになるかもしれません。ご安心してください。店内は北海道産や世界のワイン、洋酒、そして北海道産の原料でつくるサッポロビールクラシックをしっかり揃えています。
赤い星マーク時代(現在のサッポロビールのシンボルは黄色で”シャイニングスター”と呼ばれています。)のレトロなビール樽風の飾りが素敵でしょ。やっぱりここはビヤホールでいいんです。(笑)
飲み物はサッポロ生ビールの大ジョッキを筆頭にワインや道内産日本酒など。
旭川の名物でも知られているポークチョップやステーキ、ビーフシチューにエビフライなど、標準的な洋食メニューを揃える中…
一番人気はスパケディのコーナーのスパカツです。
何を飲むかって、それは悩むことなく生ビール。もちろん大ジョッキです。20Lの生樽が次々空になるお店、生ビールの品質は言うまでもなく抜群によいです。
どーんと飲もうよ、お昼のサッポロビールで!乾杯。
賑わう店内でもオーダーや提供はストレスなし。長く続く人気店のスムーズな給仕に感動します。そうして届いたスパカツは、ミートソースが鉄板とふれてジュージュー音をたてはねています。紙エプロン必須の料理。
スパゲティミートソースとんかつ載せが、略されてスパカツ。茶色系料理の極みのような料理ですが、本能に従えばもちろんフォークがのびます。今日はカロリー気にせず食べたいだけ食べちゃおう!
北海道産ポークのとんかつは、クリーミーなナポリタンソースと絡んで特別な味に。いくつになってもこの味を嫌いな人はいないでしょう。
太麺で柔らかめ。茹でたあと軽く炒めてから鉄板に載せているので、麺だけでも美味しい。冬季は氷点下があたりまえの釧路。冷めないようにとカチカチに熱した鉄板を使い始めたそうですが、これがスパゲティをまだらにおこげにし、ますます美味しい。
炭水化物はおつまみにならない…そんなことを言っていた頃が私もありましたが、全面撤回します!あぁ、また釧路へいきたいです。
ザンギ、炉端焼き、そしてスパカツ。クセになる美味しいお酒の友がいっぱいの釧路へ、皆さんも飲みに行きませんか。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
レストラン泉屋 本店
0154-24-4611
北海道釧路市末広町2-28
11:00~21:30(月一回の火不定休)
予算2,000円