昭和初期から使われている、伝統のドラフトビールの注ぎ口「スイングカラン」(サッポロビールではスウィングカランと表記)について紹介します。
ビヤホールの老舗だけでなく、最近はスイングカランの魅力を伝える新店舗も続々と登場しています。
目次
- スイングカランとは
- スイングカラン設置店舗一覧
- 札幌「サッポロビール園」
- 函館「函館ビヤホール」
- 川口「麦酒処ぬとり」
- 神保町「ランチョン」
- 銀座「ニユートーキヨー数寄屋橋本店」
- 有楽町「ニユートーキヨー電気ビル店」
- 銀座「ビヤホールライオン銀座7丁目店」
- 銀座「ビヤホールライオン銀座5丁目店」
- 銀座「サッポロ生ビール黒ラベル THE BAR」
- 新橋「ビアライゼ’98」
- 浅草「神谷バー」
- 中野「麦酒大学」
- 東京「DEPOT 」
- 東京「酒場MORI」
- 八丁畷「久保田酒店」
- 大船「ビールスタンド ミナト」
- 向ヶ丘遊園「カフェバーmasa2sets向ヶ丘遊園本店」
- 難波「ニューミュンヘン南大使館」
- 呉「オオムラ亜」
- 広島「ビールスタンド重富」
- 広島「ビールスタンド重富ekie」
- 宇部「YURIN’S BEER」
- 松山「みゅんへん」
- 高知「ぐるまん亭」
- 黒崎「ダイマル」
スイングカランとは
現在、多くの飲食店で使用されているサーバーの注ぎ口は、コックを手前に倒すとビール、奥に倒すと泡ができます。
スイングカランはZ軸を中心に、ハンドルを回転させることで泡を注ぐもの。流速が早く、混み合うビヤホールなどではあっという間に注ぐことができるという利点がありますが、扱いが難しく、だれもが注げるものではありませんでした。
昭和40年代以降は現在のようなカランが登場し、数を減らしたスイングカラン。老舗ビヤホールなど一部にしかありませんでした。
それがいま、ビールファンの間で注目を集めています。今回は、全国の復刻版を含めたスイングカラン設置店をご紹介します。
スイングカラン設置店舗一覧
札幌「サッポロビール園」
開拓使館内にある「トロンメルホール」は、日本最大級のビヤホール。サッポロビール園の生ビールは伝統のスウィングカラン。注出から2~4秒でジョッキを満たす特殊なヘッド・ビール回路を使用しています。通常のサッポロのセパレサーバーが435ジョッキを満たすのに泡載せまでに10秒ほどかかるのですからから、そのスピードはかなりのもの。
函館「函館ビヤホール」
明治期に建てられた重厚な赤レンガ倉庫を改装したビヤホールで、銀座のビヤホールにも負けず劣らずわくわくさせられる雰囲気です。
ビールは、恵庭のビール工場からの直送。明治・開拓使時代の味を再現したピルスナータイプの函館開拓使ビール(695円~)や、エールタイプの函館赤レンガビール(680円~)が楽しめます。
川口「麦酒処ぬとり」
サッポロビール工場の閉鎖後も、川口はマイクロブルワリーが次々とオープンし、3軒のブルーイングパブがありました。「ぬとり」は、川口で4軒目となり、この街の「ビール熱」の高さを感じさせます。クラフトビールがめメインですが、スイングカランで黒ラベルも提供しています。
神保町「ランチョン」
靖国通り沿いで今年111年目になるビアホールです。神保町で最初の洋食屋だったことから、昔は「洋食屋」と呼ばれていたといいます。お昼から通しで営業するランチョンはたしかに洋食屋ではあるのですが、メインはやはりビアホール。
銀座「ニユートーキヨー数寄屋橋本店」
ニユートーキヨー本店は一度注ぎ。縦方向に操作するコック型ではなく、銀座ライオン7丁目店と同じく横ハンドル式(すぅィングカラン)の伝統のスタイルを貫いています。ハンドルを回し、”どーっ”と注がれてきゅっと閉じれば、ガス圧・泡の比率もばっちりの生ビールが注がれる。同じサッポロ生ビールでも、味が違うから不思議です。
有楽町「ニユートーキヨー電気ビル店」
有楽町の街とともに85年の歴史を歩んできた『ニユートーキヨー』。スイングカランから注ぐ伝統のニユートーキヨー注ぎのサッポロ生ビール黒ラベルは絶品です。
銀座「ビヤホールライオン銀座7丁目店」
昭和11年、大日本麦酒(現在のサッポロビール)本社の一階にオープンしたのがはじまり。スウィングカランは復刻版ではなく、創業の頃からのもの。
銀座「ビヤホールライオン銀座5丁目店」
銀座ライオンは日本各地にありますが、スイングカランで1000Lタンクの黒ラベルを提供する店は、銀座7丁目店と銀座5丁目店の2店舗だけ。銀座5丁目店のほうがキリッとした黒ラベルが飲める、なんて声もあります。
銀座「サッポロ生ビール黒ラベル THE BAR」
2019年7月5日、銀座五丁目にサッポロ生ビール黒ラベルのアンテナショップがオープン。ビールタップは2種類。昔ながらのスイングカランで注ぐ一度注ぎは、ここではファーストと呼ばれ、元気なビールの爽快な飲み心地が楽しめます。
新橋「ビアライゼ’98」
こちらのビールはアサヒです。ただし、一般的なスーパードライではなく、まるエフと呼ばれている特別なビール。使用している生ビールディスペンサーも60年前のドラム型氷冷サーバーで、これが見ていてカッコイイ。注ぎ方はスイングカランからの二度注ぎ。最近のサーバーのように泡をつくって載せるのではなく、一回目に注いだ勢いでできた泡を落ち着かせ、大きな気泡をナイフで落とし、最後に滑りこませるようにビルドして完成という方法。
浅草「神谷バー」
電気ブランで有名な浅草の神谷バーは昔からスイングカランが使用されています。すっきりした喉越しのスーパードライが人気です。
中野「麦酒大学」
中野にオープンした「麦酒大学」は、キリンラガービールを究極にこだわった注ぎ方で提供してくれるビアホールです。いえ、そのこだわりや知識量、情報の多さは店名の通りまさに大学というべきか。
「キリンラガービールを注ぎ分けるのはココだけ」の看板の通り、1種類のビールを4つの注ぎ方で提供してくれます。
東京「DEPOT 」
東京駅直結、グランスタ改札外にあるカフェバー。朝7時から飲めます。ビールはスイングカランから注ぐサッポロ黒ラベル(680円)。喫茶店であもりナポリタンやトーストセットが人気メニュー。
東京「酒場MORI」
ニユートーキヨーがはじめた路面店タイプの大衆酒場。コの字カウンターを配置した酒場スタイルながら、ニユートーキヨー伝統のバランス注ぎ黒ラベルが楽しめます。使い勝手のとても良い酒場です。
八丁畷「久保田酒店」
八丁畷の酒屋さんの一画に出来た立ち飲みコーナー。いわゆる角打ちです。ボクソンのスイングカランとホシザキの一般的なタップ(現代のサーバー)の2タップが設置されています。
大船「ビールスタンド ミナト」
復刻版のスイングカランをつかって様々に注ぎわける、スタンディングタイプのビアバー。大船駅すぐの場所で一杯590円と使いやすいのも嬉しいところ。ビールは、アサヒ樽生(マルエフ)、キリンラガー、サッポロ黒ラベル、サントリーザモルツの4社揃え。とくにモルツをスイングカランで提供するのはとっても貴重。
向ヶ丘遊園「カフェバーmasa2sets向ヶ丘遊園本店」
1種類のビールを9パターンにまで注ぎ分けるという、ビール注ぎに猛烈にこだわる店が向ヶ丘遊園にあります。店名は『カフェバーmasa2sets向ヶ丘遊園本店』。ライブができるミュージシャンの集まる店ですが、ビール好きとしても非常に興味深いお店です。
難波「ニューミュンヘン南大使館」
1971年(昭和46年)開店の『ニューミュンヘン南大使館』。お初天神の旗艦店ではスイングカランは使用されていませんが、南大使館では「横コック」と呼ばれ現在も使用されています。独自の二度注ぎで注いで完成です。
呉「オオムラ亜」
最先端の技術や文化が集結した呉には、ビール文化の到達も早く、明治時代後期には「日英館」という名のビアガーデンが誕生しています。東京・銀座に並ぶほど”ハイカラ”な飲み文化がありました。
この「日英館」をルーツにしたビヤハウスが現在も営業を続けており、ビール好きならば一度は飲みに行きたい憧れの店です。
広島「ビールスタンド重富」
10人も入ればいっぱいになる店内。中央には昭和初期のビールサーバーを再現したビールスタンドが鎮座。注ぎ手の重富さんやお弟子さんが立ち職人技を披露します。メニューはビールのみ!2杯まで。2時間だけの営業、はいれたらラッキー。
広島「ビールスタンド重富ekie」
ビールスタンド重富が、JR広島駅内商業施設「ekie」に出店。営業時間は11時から20時と長く、2杯までの制限もなくなりました。
しかも、新幹線を下車して改札から徒歩1分という、大変アクセスのよい場所です。これは、広島出張や旅行に行ったら立ち寄らずにはいられません。
宇部「YURIN’S BEER」
横浜のビヤホールで働いていた方が故郷にUターンし、小さなビール専門店を開業。山口県初の生ビール注ぎ分けをおこなっています。新店ですがこだわりのスイングカランが設置されました。銘柄はサッポロ黒ラベル。
松山「みゅんへん」
松山で1976年(昭和51年)創業の老舗ビアホール「みゅんへん」。松山市民には唐揚げの名店として知られ、ビールを飲まずとも唐揚げをテイクアウトする人がひっきりなしに訪れる人気店です。ここのビールはスイングカランから注ぐ一度注ぎの黒ラベル!
高知「ぐるまん亭」
半世紀以上前らに製造されたレトロなスイングカラン付きサーバーを使用し、マスターこだわりの生クリームのような泡の生ビールが楽しめる、ビールファンにオススメの一軒。
黒崎「ダイマル」
1989年創業の老舗レストラン。かなり昔のアサヒのロゴが書かれた昭和38年製ドラム型のビールサーバーが現役。北九州黒崎を訪れたら、一度は訪ねたいビアレストランです。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ 取材協力/サッポロビール株式会社)