呉「オオムラ亜」 海の街でグッと一杯!思わず二杯!!歴史あるビヤハウスで。

呉「オオムラ亜」 海の街でグッと一杯!思わず二杯!!歴史あるビヤハウスで。

2018年8月30日

海軍の街、呉。現在も海上自衛隊に海上保安庁が拠点を置き、愛媛を結ぶ瀬戸内海汽船が発着するフェリー港もある港湾都市です。

かつて、海軍の重要拠点として大いに栄えたこの街は、往時の面影をいまに残す場所が様々あります。もちろん、飲食店街は言うまでもなくそうです。

最先端の技術や文化が集結した呉には、ビール文化の到達も早く、明治時代後期には「日英館」という名のビアガーデンが誕生しています。その後、キリンビアホールなども誕生し、東京・銀座に並ぶほど”ハイカラ”な飲み文化がありました。

この「日英館」をルーツにしたビヤハウスが現在も営業を続けており、ビール好きならば一度は飲みに行きたい憧れの店です。

 

広島駅から呉駅までは、JR呉線※の快速列車でおよそ40分。宿が広島でも、呉へは軽い気持ちで夜に行って帰ってくることが可能です。

※西日本豪雨による土砂崩落被害により運休していましたが、広島から呉へは9月9日(日)より再開予定。詳しくは呉市ホームページをご確認ください。

 

人口約22万人の呉市は、広島のベッドタウンとしてマンションが立ち並ぶ一方、かつての反映を感じさせる立派な都市構造が現存しています。呉駅も駅ビルを併設した立派な駅舎です。

 

街の中心街に伸びる「れんが通り」。この左右に広がる路地がすべて飲食店街。ノスタルジーな町並みに、都会の飲み屋巡りにはない放恣(ほうし)な感じがします。

 

そうして歩くこと10分、見えてきました。グリーンのテントにぼんぼりが目印です。

 

ね、いい雰囲気でしょう。創業は戦後すぐ。取り扱うビールはファサードの通りサッポロひとつだけ。大日本麦酒からサッポロビールへ、社名はかわれど、ビールは変わりません。

 

まるで映画のセットのよう。ニスで鈍く光る木の内装に、淡緑のL時カウンターが映えます。ここでベテランの紳士がおしゃれしてきゅっとビールを吸い込む姿は、もう素晴らしいのひとこと。私もこの空間の風景の一部になりたい。

カウンターの内側に立つお姉さんが「いらっしゃいませ」と優しく迎えてくれました。

 

さて、ここにあるビールサーバーは、かなりの年代物です。日本に何台現存しているのかわかりませんが、現役で活躍しているものは「オオムラ」しか知りません。

樽冷用の冷蔵庫(右)にビール樽を置き、そこから回路を通じて氷冷サーバー本体(左)へ。ドアコックがついた銀色のビールサーバーは電動式ではありません。中にぐるぐる巻かれた長いビール回路があり、そこを氷で冷やすことでビールを冷たくして提供するというもの。

 

そうして流れてきたビールは、左のスイングカランから注がれます。現代のビールコックと違い泡だけを出すことができないので、注ぎ方にはテクニックが必要です。液とともに泡も多く出てしまうので、この注ぎ方に技があります。その技はぜひお店でご覧ください。

 

こうして注がれた生ビール。可愛いコースターにのって登場します。それでは乾杯!

全国の飲食店で提供されているサッポロ黒ラベルと同じものなのですが、これがまったく味が違うからおもしろい。

きめ細かくふかふかの泡と、ほどよくガスを抜いた味わい深い液。一度注ぎの銀座ライオンやニューミュンヘンとも違う、まさに「オオムラビール」なんです。

 

ビールは一杯500円。おつまみは300円均一。シンプルで明朗会計。きゅうりの浅づけに赤てん、枝豆とお腹にたまらない手軽なフードが揃っています。箸休めならぬ、ジョッキ休めに。

 

飲み干して、おかわりならばそっと差し出すとおかわりを用意してくれます。それにしてもぽくぽくな泡が素敵です。ガスが低いのでビール特有のお腹にはる感覚は皆無で、くいくいと飲んでしまいます。街、店、お客さんやお姉さんの雰囲気もあって、いつもより一層進みます。

 

スイングカランは年代物になるとビール漏れもありますし、維持することは大変だと思います。それでも、大切に呉の料飲文化の遺産を残されており本当に素敵です。店内はノンベエの心をくすぐるアンティークな調度品がたっぷり飾られていますよ。

気持ちよく飲んで、大満足のひとときでした。

 

歴史を肴に一献傾ける幸せ。呉の夜に繰り出してみませんか。

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

 

オオムラ
広島県呉市中通4-3-19
15:00~19:00頃(不定休)
予算1,600円