尾道「向酒店」 大正建築の酒屋で味わう広島のお酒。

尾道「向酒店」 大正建築の酒屋で味わう広島のお酒。

数々の物語の舞台となった尾道。山、海、島々がつくりだす美しい景色と、起伏の中にあるレトロな町並みが旅愁をかきたてます。

歴史と文化のある街に、よき飲み屋街あり。尾道は日中の散策だけでなく、夜の酒場めぐりも魅力たっぷり。ですがやっぱり日中から飲みたいもので、そんなときは角打ちを訪ねてみませんか。

1909年(明治42年)創業の老舗のお酒屋さん「向酒店」をご紹介します。建物は大正17年頃の建築で、2020年5月に国登録有形文化財に登録されました。2階を漆喰で塗籠めした重厚感ある建物で、尾道の景観に欠かせない存在です。

 

向酒店はJR尾道駅から約1キロメートル。尾道本通り商店街を抜ければ意外とあっという間。ノスタルジックな雰囲気に浸れるアーケードは、昨今リノベーションで新しい店舗も増加中です。

 

商店街の長さはなんと1.2キロメートルも。また並行して海岸線があり、海の際を歩ける海岸通りもまた楽しいです。漁船や小さなフェリーを眺めて散策すれば、気分はきっと物語の主人公。

 

向酒店は、レトロという言葉では言い表せない、酒販100年の歴史が詰め込まれた玉手箱のような空間です。

 

酒蔵やビール会社の年代物の品が店内を埋め尽くし、ガラスケースには往年のレアなウイスキーが所狭しと並べられています。

 

角樽に通い徳利に、マニア垂涎のアイテムの数々。

 

角打ち営業をされていますが、店内は小売をメインとしたつくりで、広島のお酒を中心にさまざまなお酒が売られています。

 

尾道のお酒「おのみち麦酒」「尾道招き猫美術館 招き猫ラベルのお酒」、中国地方のローカルな酒蔵のお酒もここにくれば購入できます。

 

丁寧な応対のご夫婦が迎えてくれて、角打ち利用も「ぜひ飲んでいってください」と歓迎してくれます。

飲み比べセットはこだわりの地酒3種類で500円ととってもお得。樽生ビール(樽冷のキリン一番搾り)も取り扱いがありますので、夏場の休憩に一杯の生ビールはいかがでしょう。

 

Aセットは、広島県三次市の酒蔵・山岡酒造の「瑞冠(ずいかん)」純米吟醸、広島県東広島の今田酒造本店が造る「富久長」純米吟醸、広島県三原の醉心山根本店がつくるご存知「酔心」純米吟醸の3点。広島の吟醸酒を並行飲み比べ。広島のお酒がもともと好きな筆者にとって、最高の顔ぶれです。

 

酒蔵の情報をまとめた説明書つきで、飲みながらお酒が作られた背景を想像します。

 

時計が刻む音、時折店の前を通る郵便配達のバイクの音、ほのかな潮の香りと視界いっぱいに広がるお酒の数々。尾道らしい時の流れを感じます。

 

100年以上、キリンビールの販売店だそうで、今もビールはキリン推し。生ビールだけでなく、なんとタップマルシェ(小型クラフトビールサーバー)までありました。

 

ふらっと立ち寄ったはずなのに、気分はタイムトラベラー?

尾道の歴史をお酒とともに味わえるおすすめのスポットです。

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

 

向酒店
http://www.mukai-saketen.com/
0848-37-1133
広島県尾道市久保1-10-4
9:00~21:00
予算1,000円