尾道『串かつ 一口』串かつは音が命と語る二代目。老舗の絶品魚介串かつ

尾道『串かつ 一口』串かつは音が命と語る二代目。老舗の絶品魚介串かつ

2022年11月18日

平日も満員御礼、尾道には一晩の営業で2回転もする串かつ店があります。店の名は『串かつ 一口』。創業は1964年と古く、歴史ある尾道の街らしさを感じる酒場です。瀬戸内で水揚げされる魚介類など地元の食材をつかった串かつは、一度食べたらきっと忘れられなくなります。

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3世代で守ってきた老舗串かつ店

串かつは、豚でなくても「串かつ」です。広島県の尾道には、それはもう絶品の魚介類の串かつを楽しませてくれる名店があります。

尾道といえば古くから海運で栄えた街で、街の中心地を尾道水道という瀬戸内海の一部が流れています。海だから流れているという表現は不思議に思うかもしれませんが、水の流れは以外と早いのです。

さて「歴史がある街には名店あり」ということで、尾道には数多の老舗や新進気鋭の酒場が立ち並び、広島や福山とはまた違った飲み歩きの楽しみがあります。尾道の魅力はなんといっても、「時が止まった街」というところ。安易に「レトロ」と表現したくない、奥深い味わいに満ちています。まるで、この街だけ時間の流れが違うような錯覚すら覚えます。

外観

そんな尾道で58年続いてきた『串かつ一口』が今回のテーマ。尾道の飲み屋街「新開」にあります。2018年まで別の店舗で営業をしてきましたが、移転して現在の姿になりました。

内観

いらっしゃい!明るく迎えてくれる二代目の大将を中心に、三代目らが手伝う家族経営の店です。L字型のカウンターが調理場を囲み、11席だけしかありません。どの席も調理風景が眺める特等席です。

品書き

お酒

樽生ビールはサッポロ生ビール黒ラベル:660円。瓶ビールはサッポロヱビス:750円。日本酒は西條鶴:420円。

串かつ

はも:250円、えび:310円、とり貝:310円、たこ:240円、いわし:220円、貝柱:220円、くじら:240円、にし:220円、きす:240円。あさり:880円、あなご一本:990円、串かつ:130円など。

港町の肴は刺身だけにあらず!魚の串かつという魅力

サッポロ生ビール黒ラベル(660円)

品書きの項目で紹介した通り、料理は串かつだけしかありません。旅行者としては、尾道に来たのだから刺身で一杯飲みたいと思いがちです。となると、「串かつだけかぁ」と思うかもしれません。でも、それは間違いです。筆者は串かつにして食べる魚介類の魅力を、この日、一口で知ることになりました。

なにはともあれ、ビールでしょう。長年サッポロビールを取り扱ってきた店で、移転後もこだわりの空冷サーバー(樽ごと冷蔵庫内で冷やす)を使用しています。ジョッキは昔ながらのサッポロ標準ジョッキで、凍る直前まで冷やしたものを使用するのがこだわり。

老舗のカウンターで格別な黒ラベル。好きな人にはたまらないでしょう。もちろん筆者も満面の笑みで撮影しています。

それでは乾杯!

キャベツ

ソース、バッド、そして食べ放題のキャベツがセットされます。塩とレモンもでてきて、大将は食材によってソースかレモンと塩にするか、オススメを教えてくれます。

きす(240円)

まずはキスから。きすは尾道の名産です。一口には「必ずこれを頼む」という料理が常連さんそれぞれにありますが、キスも大変人気の“種”。繊細な旨味を引き出す塩・レモンをかけていただきます。

薄い衣はパリッとしており、続けてふかふかの身が口の中で溶け広がります。思わず目を見開く美味しさです。

にし(220円)

にしは、アカニシ貝のこと。内湾でとれるおなじみの貝で、もちろん地物です。

「これはソースをしっかりかけて」と、優しく教えてくれる大将。大将の教えのとおり食べていれば間違いありません。ふわっと仕上がっており、タレと貝の絶妙なバランスが舌を包みます。

えび(310円)

串かつの魚介類といえばまずは海老という人は多いでしょうが、一口のえびは都市部の串かつ屋のそれとは明らかに違います。塩とレモンで食べれば、プリプリの食感とともにえび本来の甘味が感じられます。

ヱビスビール(750円)

海老にはヱビス。漁業の神様として知られるえびす様。港町の魚介系串かつ店のカウンターに置くとしっくりきます。

あなご1本(990円)

尾道の魚介類は、きす、シャコ、海老、たこ、ガザミ、アサリ、メバルなど、挙げればきりがありませんが、やはり「穴子」は主役級でしょう。秋から冬が一番美味しいと言われており、この界隈では延縄漁で釣り上げるそうです。

地物の穴子を1本まるごと揚げた贅沢な人品。大きすぎず、小さすぎず、なんとも丁度いいサイズです。食べ方は、塩・レモンで尾のほうから食べるのが大将のおすすめ。最初はパリパリとしており、繊細な味わいが楽しめます。ハラのほうへ行けば脂がのっており、穴子特有の甘い脂の旨さが満喫できるという理由です。

西條鶴(410円)

あわせるお酒は西條鶴。一口の看板にも書かれているお酒で、長い間、同店の定番酒として提供してきた銘柄だそう。東広島市の西条でつくられる米の旨味がふわっと広がるお酒。飲み方にも大将のおすすめがあるので、実際に店頭でお話を聞いてみてください。

れんこん(130円)

一通りコーススタイルで出していくのが現在の『一口』のスタイル。次はれんこんが揚がりました。

はも(250円)

瀬戸内のハモは上物です。淡白な味だなんて言わせない、揚げたことで引き締まった味のハモは絶品です。

あさり(880円)

油を変えるタイミングでしか作れないというあさり。串打ちしたものではなく、あさりのひとつひとつに衣をまとわせて油を泳がせます。

大将はお客さんと談笑していても常に油の音を聞き、耳でタイミングを図っているそうサクサクで食べあきないおつまみ。そういえば、これだけ終始、串揚げを食べているのに重たさは一切感じません。

地物を串かつとして満喫できる。これは旅行者としてもとても嬉しいです。お客さんは地元の人に混ざって出張できている人たちの姿もありました。

尾道は本当におもしろい街です。この街をはしご酒すると、いままで見えていなかった夜の街の魅力を発見するに違いありません。

ごちそうさま。

※ご訪問の際は予約されることをおすすめします。

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(取材・文・撮影/塩見 なゆ 取材協力/サッポロビール株式会社)

店名串かつ 一口
住所広島県尾道市久保2-10-10
営業時間17:30~23:00(水日定休)
開業年1964年