茗荷谷『和来路』文教地区で40余年。手頃な酒場料理を楽しむ名店

茗荷谷では貴重な個人経営の大衆酒場『和来路』。16時の開店とともに飲み慣れたベテランの常連さんが続々とやってきて席が埋まっていく、『和来路』はそんなお店です。手頃で味の良い、飲兵衛心をつかむ肴が人気の理由でしょう。親子で切り盛りする板場と、学生のお手伝いさんたちがつくる雰囲気も心地よく、文京区らしさを感じる一軒です。

創業からまもなく半世紀。パリッとした酒場

文京区茗荷谷。同じ小石川でも、後楽園周辺の喧騒とは無縁の文教地区です。東京メトロ丸ノ内線の茗荷谷駅の周辺には、お茶の水女子大学をはじめとしたキャンパスが立ち並び、湯立坂を下った先には小石川植物園があります。

住宅やオフィスも多く人通りも多いこの街ですが、なぜか居酒屋は多くはありません。由緒ある坂や名所が多く、東京の中でも屈指の散策スポットですから、歩いたあとは地元の店で一杯飲みたくなりますよね。

そんなときには春日通りから少しはいった場所にある『和来路（わらじ）』がおすすめ。1970年代に創業した老舗の酒場です。

飾りは最小限に、手入れが行き届いた店構え。店の雰囲気は大将の心を写すといいますが、こういう酒場は間違いありません。

開店は16時30分と少し早め。時間ぴったりに明かりが灯りました。それでは縄のれんをくぐって店内へ。

山手線の内側では貴重な個人で営む酒場です。40年以上包丁を握ってきた初代大将が中心となり、家族で切り盛りされています。

反射するほど磨き上げられたステンレス輝く厨房と、それに向いたカウンター席。テーブルはボックスシートになっており、最近飲んだどの酒場よりも落ち着く印象です。使い込まれていても清潔感がある店内は、飴色に染まった色合いもあって実に落ち着きます。

家族や付き合いの長い友人と、こういう席で時間をわすれて語らうのは実にいいものです。

品書き

お酒

ビールは樽詰めがサントリー ザ・プレミアム・モルツ：小460円、中570円、大800円。瓶ヒール大瓶はサッポロラガービール：700円など。

日本酒は、定番酒が栄の井（小西酒造・兵庫県伊丹）：380円、会津中将 純米（鶴乃江酒造・福島県会津若松）：700円、三千盛 純米大吟醸（三千盛・岐阜県多治見）：700円など。

焼酎はいいちこ：460円、黒霧島：460円、富乃宝山：590円など。

サワー・ハイボール類は、チューハイ：700円、バイスサワー：400円、宇治抹茶割：400円、生レモンサワー：560円、角ハイボール：450円、翠ジンソーダ：450円など。

日替わりのオススメ

インドまぐろ中トロ刺、しまあじ刺、あじ刺、つぶ貝刺、あじフライ、ぶりあら煮、牛すじ煮込、コロッケ（カレー味）、きゅうり辛子漬、青唐辛子味噌、ポテトサラダ、冬がん煮など。

定番メニュー

刺身は、まぐろ刺、たこ刺、いか刺、まぐろぶつ、たこぶつなど。揚げ物は川えび唐揚げ、若鶏唐揚げ、納豆天など。焼き物は、焼き鳥、さんま塩焼き、さば塩焼き、めざし焼き、いか丸焼きなど。

手頃な価格で確かな美味しさ

サッポロラガービール大瓶（700円）

まずはビールから。よく冷えたサッポロラガービールをもらいました。琥珀色の瓶に張られたレッテルの赤星が酒場の景色にすっと馴染みます。それでは乾杯！

ホタテ刺（550円）としまあじ刺（700円）

通い慣れた雰囲気のお客さんたちがこぞって注文する、日替わりの刺身。今日はホタテとしまあじを選びました。丁寧な仕事で角がたっています。

ぶりあら煮（550円）

ぶりあらと言いつつも、身は多く、そして見るからに美味しそうな染みた大根がしっかりと盛られてきます。大きな目玉も美味しそうです。味付けは上品で、味の濃さで魚のクセを消すようなものとは違います。

なす焼き（330円）

箸休めに注文したなす焼きが実に美味しい。薬味がしっかり盛られているのは嬉しいものです。みずみずしいナスに、こだわりを感じる厚めの削り節がよくあいます。

ホッピー（460円）

落ち着いた雰囲気には、黒ホッピーも似合います。少し甘いので、揚げものが欲しくなります。

チーズ揚げ（300円）

もう少し飲もうとチーズ揚げ。春巻きの皮でつつむ大衆酒場でおなじみの料理。自宅で揚げる手間を考えると、手頃な価格で食べられる酒場がありがたいです。伊丹の清酒・栄の井（酒販店オリジナル）をあわせて。

宇治抹茶割（400円）

宝酒造が企画している宇治抹茶割もあります。濃いめの濁りが口をリセットしてくれます。

家庭料理とも割烹料理とも違う、腕のいい酒場料理が楽しめる店『和楽路』。茗荷谷で間違いない飲み屋です。

ごちそうさま。

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（取材・文・撮影／塩見 なゆ）

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