田端『動坂食堂』アナゴ天と苦味の麒麟ラガーで過ごす、70年食堂

田端『動坂食堂』アナゴ天と苦味の麒麟ラガーで過ごす、70年食堂

2021年4月28日

創業70年。不忍通りの道坂下交差点の角にある「動坂食堂」は、清潔、明朗、親しみやすさを兼ね備え、食堂のお手本のようなお店。もちろんビールやお酒の用意があり、日中から飲む人の姿も多く見かけます。

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家族経営、むかしの東京を思い出す

外食のあり方が昭和、平成、令和と時代ごとに大きく変化し、ますますチェーン店一択になってきた昨今ですが、探してみれば素晴らしき大衆食堂はまだまだ力強く営業されています。どのお店も地元に愛され、商店街や近隣住民に愛され、日常の食事処として街の胃袋を支えています。

動坂食堂は筆者が大好きな一軒。田端駅から徒歩10分ほどと離れているものの、それでも道坂の揚げ物でビールを楽しみたく足を延ばします。ちなみに、道坂下は都営バスの路線が複数集まる場所で、東京駅、北千住駅、上野松坂屋前など、主要なターミナルから1本でアクセスできます。

食堂を楽しむポイント・その1。店先のショーケースを眺める。

20年ほど前に現在の店舗になったと聞きます。それでも、食堂の店先における伝統スタイルのショーケースが設置されていることが嬉しいです。

丼ぶり、カレー、刺身に中華となんでもござれのスタイル。お酒飲みにとって、食堂のバラエティ豊かな献立はどれもおつまみにみえてきます。定食の主菜だけを単品で注文することも可能です。

家族経営でご夫婦二世代で切り盛りされています。お店を訪れる買い物帰りの女性と世間話をされたり、仕事帰りのスーツ姿の男性にそっと優しく声をかけていたり、けして近すぎる距離感ではないものの、ふるきよき東京の人情が感じられる空間です。

落ち着いた店内にコントラストを添える黄色い短冊。そこに並ぶ文字をみているだけで、お酒が飲みたくなるものです。

お店は大きく、4人がけテーブルが10卓ほど並んでいます。背もたれが低くてやや重たい、食堂らしい椅子も現役。

一杯目はキリンラガー

さあ、はじめましょう。樽生ビールはアサヒスーパードライ、瓶ビールはキリンのレギュラーラガー(大びん)が用意されています。キリンロゴいりのレトロなビアタンを満たして、軽く持ち上げ静かに乾杯。

60品ある料理、悩むことも楽しみの一つ

アルコール類は、生ビール(中630円)、瓶ビール(大びん730円)、お燗酒(480円)、冷酒(530円)の4種類。酎ハイはありませんが、それでも夕方以降は飲み客の姿が増えてきます。ジャンパー姿の常連さんは、お刺身とお燗酒を揃えて幸せそうです。

60品ほどある献立。ずらりと並ぶ献立札は圧巻。天ぷらやフライなどの揚げ物が人気で、食堂好きの間ではミックスフライが注目されているようです。

揚げ物が人気

アナゴ天ぷら(1,100円)

私のおすすめは、アナゴ天ぷら(1,100円)。

大きくても身はホクホクとし、上品な白身の脂を感じるアナゴが一尾まるごと盛り付けられています。箸休めのししとうを合わせた豪華な一品。

天ぷら専門店やそば店など、天ぷらも業態ごとの違いとそれぞれの魅力があるものですが、食堂の天ぷらというものも、ひとつのカテゴリーとしてとても魅力が感じられます。

ホップの苦味の飲みごたえに、きゅっと抜けていく後味、これぞ麒麟味。キリンラガーには、天つゆを吸った衣が実によく合います。

自家製塩辛(500円)

お燗酒の銘柄は、灘の白鶴。おつまみは、常連さんの注文にならって塩辛(500円)をいただきました。女将さんの手造りで、浸かり具合は浅めで、イカは半分刺身のような食感です。フレッシュなゆずの風味とコクが、日本酒をすいすいと進ませます。

休みの日の午後、明るい時間から瓶ビールをたてた食堂のテーブルでのんびりと過ごすひととき、いいものです。

ごちそうさま。

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

店名動坂食堂
住所東京都文京区千駄木4-13-6 アドリーム文京動坂1F
営業時間営業時間
10:30~20:30(L.O.20:00)
定休日
日曜・祝日
開業年1950年