塩尻『山賊』山賊焼だけじゃない!60余年続く山間部の老舗酒場で飲む

塩尻『山賊』山賊焼だけじゃない!60余年続く山間部の老舗酒場で飲む

2021年4月29日

信州の郷土料理「山賊焼」発祥の店(諸説あり)は、店名もずばり「山賊」。創業から60余年、3代目が守る老舗暖簾です。看板料理の山賊焼は、まる一日ニンニクたっぷりの液に漬け込んだ、ジューシーかつガッツリとした味わい。ビールや地元ワインを片手に頬張ります。

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塩尻の中心街は駅から徒歩5分

長野県南部、松本周辺の居酒屋でご当地料理として見かけることが多い「山賊焼」。松本の酒場へ飲みに行った人ならば、一度は食べているのではないでしょうか。発祥は諸説ありますが、塩尻駅近くの「山賊」がはじまりと言われています。

山賊」につながる食堂は第二次大戦前に創業し、その後中断。終戦後、復興で人が集まる国鉄塩尻駅周辺は多数の居酒屋や屋台が立ち並び、「山賊」といずれ店名を変える酒場も1958年頃ここで再開しました。

山賊」の初代が、鶏肉をニンニクなどのタレに浸け置きする「山賊焼」の調理法を考案。その後、名物料理にあわせて店名も「山賊」に変更し、いまに至ります。現在は3代目が、昨今の状況下でも老舗ののれんを守り続けています。

塩尻は、特急列車ならば松本から1駅。精密機器製造などの産業が集まる工業地域や、お酒好きでは「アルプスワイン」などの国産ワインメーカーで有名な場所。駅も大きく、中央本線山間部の沿線において比較的大きい街です。

駅前のロータリーに降り立つと目立った飲食店街もなく、「ここは夜、お酒が飲める街なのだろうか…」と不安になるかもしれません。実は塩尻は駅の位置がずれたことで、もともとの繁華街とやや距離ができてしまっています。塩尻駅から5分ほど歩けば、昔ながらの飲み屋街もありますからご安心を。

「山賊」は、そうした塩尻の中心市街地の中にある一軒。

外観

大きな平屋の戸建てです。

17時の暖簾がかかるタイミングから、近隣で働く人々がスーツや作業着姿で店を訪れるほか、駐車場に車をとめてテイクアウトを買っていく人の姿も多い。ご当地名物というと観光客向けのイメージがありますが、山賊はその歴史もあって、地元に密着していることがよくわかります。

内観

やや入り組んだ店内。小上がりの畳敷きと奥にテーブル席。6席ほどですがカウンターもあります。厨房は客間からは見えませんか、店内は口開けからすでに山賊焼の香ばしい匂いで充満しています。

一人飲みならカウンター席が落ち着きます。ドリンク担当のお姉さんの前に座り、まずはビールをお願いしました。

品書き

地元ワインや日本酒と名物山賊をチョイス

樽生のほかに、アサヒスーパードライキリン一番搾り、地元サッカーチームにちなんだ緑色のキリン系ビアカクテル「山雅ビール」が選べます。日本酒は大雪渓など地元の銘柄。その他、ハイボールや地元のそば焼酎などを揃えています。

塩尻といえば、アルプスワインをはじめ、五一サンサンといった地元ワイナリーの存在が大きいですね。

名物の山賊焼。「山賊焼”き”」のように送り仮名はふらず、「山賊焼」と表記することで各方面が統一されています。もちろん、「山賊」でもそのように。さて、価格は一人飲みでいろいろ摘む中の一品としてちょうどいい「ミニ」(440円)から、特大(1,200円)まで4種類。ミニは骨なしの場合もある(ドリンク担当のお姉さんによる)そうなので、せっかくならば中サイズ以上を選びたいです。

信州といえば馬刺し文化。そして鶏もつも名物。山賊では、山賊の横で長く愛されている「鶏もつ煮」(小360円)をぜひ頼みたい。山賊焼がもしなかったら、鶏もつ煮だけでも十分に名物にできるくらいだと思います。

そのほか、サイドメニューいろいろ。

焼鳥やサラダもあります。初代が畜産関係の仕事をしていたそうで「山賊」は肉料理が強いですが、お刺身も注文できます。

鶏料理のオンパレード

サッポロ黒ラベル(650円)

サッポロ生ビール黒ラベル(ジョッキは他社)。樽生はキリンとサッポロを置いています。塩尻はキリンビールが地元サッカーチームのタイアップをおこなっているなど、キリンが強い。ですのでここはあえて、サッポロにしてみました。それでは乾杯。

鶏もつ煮(小360円)

首都圏で一般的な煮込みは豚もつ煮込み。鶏はあまりありません。ところかわって信州は鶏もつが一般的。

山賊の鶏もつは、クタクタに煮込まれたハツセセリ砂ずりレバなど、いろんな部位が一緒くたになっています。

トロトロで旨味が強く、これにバランス良く調和する甘い醤油と味醂、砂糖の味付けもクセになります。鶏皮を飴色にあまく煮たものなんて、子供の頃からみんな大好きな味ですよね。

山賊焼(中1,000円)

鶏もつを食べてつつ待っていると出来上がり。

中なのにとっても大きい!でも意外と食べられる味の良さ。塩尻からはじまり、松本まで広まった(※諸説あり)「山賊焼」がこちら。新書サイズをややはみ出すほどの大きさ。

松本の有名店では生姜味で爽やかな味付けにしている印象がありましたが、山賊は、がっつりとニンニクの風味がついた濃厚タイプ。一日かけてタレに漬け込むそうです。

片栗粉をまぶした巨大な竜田揚げ。わかりやすく説明するならばそうなりますが、味やインパクトは全然ことなります。他にない美味しさの「山賊焼」です。

高温で表面の片栗粉はパリっとしていて、身は柔らかくとてもジューシー。色が染みていなくても、タレの味はしっかり感じます。

五一ワイン(グラス410円)

夜でも山賊焼の定食を食べてお酒を飲まない人の姿がみられますが、これを飲まずに食べてしまうのはあまりにももったいないです。ビールがあうのは当たり前、ここはぜひ、塩尻のワインをあわせたいです。選んだのは、五一ワインの赤。冷蔵庫でしっかり冷やした一升瓶詰めのもの。

「冷やした赤ワインは…」なんてことは言わずに、飲んで食べてみれば、とっても相性がいいことに驚き、大きくうなずきました。

添えられたキャベツと赤ワインが、濃厚な山賊焼の味をリフレッシュしてくれて、ますます箸がのびます。

揚げ物なのに、「焼」と表記する名物・山賊焼。素朴だけど、結構大胆、しっかり美味しい一品です。近隣に滞在の際は、塩尻まで足を延ばしてみてはいかがでしょう。

ごちそうさま。

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

店名山賊
住所長野県塩尻市大門七番町10-1
営業時間営業時間
17:00〜23:00 LO22:30
定休日
水曜日
開業年1958年頃