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出張や旅行で松本に訪れたなら、なにはともあれ「風林火山」がおすすめ。松本の郷土料理を揃えつつも、日常使いの酒場らしい利用心的な価格設定が魅力のお店です。なおかつ、JR松本駅から徒歩僅かな距離にあり、アクセスの良さも理由です。
建物は改修しているものの、もうすぐ40年を迎えるこのお店は松本駅周辺においては老舗の一軒。幅広い年齢層で賑わい、連日連夜、カウンターまで満席になるほどファンが飲みに集まります。
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JR松本駅は、新宿から特急あずさで2時間30分の距離。名古屋や長野市からも特急で一本と実は結構便利。それでいて北アルプスの玄関であり、駅の周辺に温泉やスキー場があることから、年間を通じて休暇で訪れたい街です。もちろん、風林火山をはじめとした駅前酒場めぐりも楽しいです。
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グループで飲みに来るならば予約必須。一人でも確実に時間を決めて入りたいならば予約することをおすすめします。安くてボリュームがあり接客もよしときたならば、こうなるのは当たり前。
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もともと駅前食堂として創業した風林火山。箱はさほど大きくないですが、個人店としてはちょうどいいサイズ。店員さんが多く、混んでいてもストレスなく頼めて料理・お酒も早い。近隣に系列店がありますので、混雑時はそちらへ案内されることもあります。
筆者も時間をずらして平日遅めの訪問。それでもカウンターまでほぼ満席の賑わい。出張族のお父さんは、『夕方に新宿発の中央線特急あずさに乗ってさっき着いて、その足で風林火山』なんていう方や、いつも飲みはここ!と決めている感じの常連さんなど、サラリーマン風の人でいっぱいです。
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飲み物メニューから。生ビールはキリンハートランドで500円、瓶ビールでサッポロラガー大びんが600円、地元信州の地ビールも揃います。酎ハイは400円で、ホッピーもセットで400円。東京発のビールテイスト飲料の走りであるホッピーも、いまや全国に広がりつつありますね。
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状態抜群の生ビールも飲みたく思いつつも、カウンターでしっぽり飲むからと今宵はサッポロラガー(赤星)。トトトと注いで、では乾杯!
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料理の種類は多く長野の名産や郷土料理から海産物まで幅広い。日替わりのオススメは特にハズレなしと評判が高いです。刺身は厚切り、盛り合わせも950円で一人前には多すぎるくらい盛りが良い。
信州は古くから馬、鳥、牛を食べる地域で、馬刺しは熊本にも負けないくらい、どんな居酒屋にもある定番おつまみ。いわな焼き(550円)がこそっと混ざっているなど、このメニューだけでもだいぶ楽しめそう。
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風林火山名物のホル天や、松本に来たら一度は食べておきたい山賊焼き、地場の山菜や葉物の小鉢も魅力的です。
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一人で飲みに来ると、この膨大なメニューに残念な気分になるのです。だって、みんな食べてみたいけれど一人だとすぐお腹いっぱいになっちゃうから。
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お通しは日替わり。この日は卵豆腐海苔あんかけです。真冬には豚汁がでてくることも。お通しから楽しみになれる酒場なら、むしろ突き出し歓迎です。
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長野が誇る優良納豆「川中島納豆」は、篠ノ井の名物。びっくりするほど大きく、それでいてしつこさはなく独特な甘みが効いた美味しい一品。漬物と合わせて枝豆間隔でつまめば、単なる箸休めをこえる相性の良さ。
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松本といえば山賊焼き。600円でなんとこのボリューム。大きい鶏もも肉は、店ごとに個性のあるタレにつけられていて、注文を受けたら衣をまとわせ一気にカリっと揚げるスタイル。風林火山は甘辛くどこか焼鳥のタレ風の下味。
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ニンニクが効いていて、めちゃくちゃビールが進む逸品です。このボリュームで600円というリーズナブルな値段設定も嬉しい。ジューシーな肉汁を閉じ込めたかりっとした衣。一度食べると、ダイエットの気持ちはどこへやら、ぺろりと完食です。
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風林火山のもうひとつの人気といえば、豊富な地酒の品揃えがあります。一杯250円からといっぱい飲める普通酒から吟醸、季節酒、お燗向けの大雪渓など幅広い品揃えです。
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亀乃世の純米。お酒は注文するとテーブルまで一升瓶をもってきてくれて、その場で注がれます。松本市生まれの地酒、すっきりしていてイワナと合わせたい。
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クラフトビールブームは松本にもきています。ナショナルビールと比べると割高感はありますが、それでも人気のようで売り切れ御免で飲まれていきます。
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山菜にきのこ、川魚といった松本の定番食材だけでなく、場所柄海の幸の変りのように充実した肉料理も豊かな地域。アルプスの伏流水と安曇野の大地で採れる米でつくる美味しい地酒とともに、美味しい信州を楽しみませんか?
上品にしっかり飲む郷土料理店はもちろん素敵なお店がありますが、酒場巡り好きにはこちらもぜひ。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見なゆ)
風林火山
0263-35-7872
長野県松本市中央1丁目3-1
17:00~23:30(土日祝は16:30~・不定休)
予算2,000円