木曽福島『くるまや本店』老舗で食べる鳥ぬきに、中乗りさんと七笑を

木曽福島『くるまや本店』老舗で食べる鳥ぬきに、中乗りさんと七笑を

2021年6月7日

木曽の福島で300年以上の歴史を持つ蕎麦の店『くるまや本店』。名物の蕎麦もよいですが、酒の肴も充実しており、お昼から地酒で軽く一杯という用途にも最適です。

天下の四大関所 (箱根、碓氷、新居、福島)に数えられる中山道福島関所は、山深き木曽の渓谷沿いにあります。関所を囲むように広がる福島宿は、いまの木曽町 福島。町にはかつての中山道の賑わいを感じさせる風景が残されています。

関所を司る代官の屋敷に仕えそば粉職人だった一族が、300年以上の歴史をこえて、いまも福島宿近くで蕎麦店を営んでいます。それが今回ご紹介する「くるまや本店」です。

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江戸時代の旅に思いを馳せる

写真は列車から眺める景勝地「寝覚の床」(中央アルプス国定公園)。

五街道のひとつでありながら、険しい峠道で難所が多かった中山道も、いまはJR中央本線の特急で快適、列車の旅。木曽川を縫うように走り、車体を傾けながらぐんぐんと加速する様子は、まるでラフティングです。

木曽福島はいまも木曽地域の文化・経済の中心地。駅舎も立派で、駅前には多くの土産物店が立ち並んでいます。

山際の高台に駅舎があり、町の中心へは木曽川に向けてひたすら下っていくことになります。古い町並みを残しつつ観光地としてよく整備されており、町並み散策も楽しめます。

福島宿の一部は江戸時代の景観が残されています。山と木曽川、傾斜のある宿場の、立体的でダイナミックな眺めは、お酒を飲む前の準備運動には贅沢すぎるほど。

ふたつの造り酒屋

木曽福島には、ふたつの酒蔵があります。ともに近年、日本酒にこだわる飲食店や地酒を得意とする酒販店で見かけることが多い銘柄。寒暖差が激しい土地で御嶽山の伏流水を使用した酒造りで評判です。

中山道沿いにある七笑酒造。旨口のお酒造りを追求する酒蔵。銘柄も「七笑」です。

中善酒造店の銘柄は「中乗さん」。民謡「木曽節」の歌い出しにある「木曽のなかのりさん」から来ています。

明治築の建物も、店内は現代的

さてさて、そろそろいい頃合いでしょうか。お酒が目的なので昼食時の混雑を外します。

木曽川の支流・八沢川にかかる橋の袂にある、いかにも老舗という店構えが「くるまや本店」です。建物そのものは、1910年に建てられたもの。昭和のはじめにここへ移転しています。(公式ホームページより抜粋)

高いところには歯車の飾りが取り付けられており、水車小屋での製粉業時代からの屋号を物語っています。

近年、建物の老朽化もあり店内は大きく改装したとご主人。現代的な雰囲気になりました。

酒蔵では飲めなかった日本酒をここで飲むことが目的のひとつ。さっそく日本酒からはじめたいと思います。中乗りさん上撰(1合・490円)の冷(常温)をもらって、それでは乾杯。

品書き

営業時間は日中だけですがお酒の品揃えしっかりあって、飲み客歓迎なところが嬉しい。樽生ビールはアサヒスーパードライ、瓶ビールはアサヒスーパードライキリン一番搾り(ともに中びん660円)。

日本酒は今飲んでいる中乗さんのほか、もうひとつの酒蔵「七笑」ももちろん複数の種類を置いています。

おつまみは、板わさ、わさび味噌、鳥ぬき、天ぬきなど。400円ほどで、老舗蕎麦店の抜きとしては非常に良心的な値段です。

こちらがお蕎麦のメニュー。地域柄、地鶏のそばが看板料理になっているようです。

抜きからはじめて蕎麦で〆る

なすの塩もみをつまみに、つづいて七笑紅梅(1合470円)を。渓流の脇、午後の日差し差し込む店内で、のんびりと地酒を味わう。老後の楽しみを先取りしている気分です。

鳥ぬき(450円)

天ぬきは一般的ですが、鳥ぬきはめずらしい。ぬきとは、蕎麦のあたま(具)の部分で飲む習慣で、蕎麦前の楽しみ方のひとつ。

鶏に肉厚の椎茸、長ネギ、お麩などがはいった具だくさんの逸品。おかめ抜きといったところでしょうか。甘めの出汁と鶏の旨味が日本酒を誘う逸品です。

ざるそば(ミニ・1枚610円)

蕎麦の名産地の老舗で、抜きと地酒だけは終えきれません。ざるそばを食事の人は何枚か食べるようですが、お酒の〆ならば1枚が丁度いいです。

こちらでは並盛が2枚でてくるようで、ミニを頼むと1枚になります。

1枚でも普通の蕎麦店の並くらいあります。

麺は太くプリプリで、中はもっちりとした歯ごたえがあります。蕎麦の香りがしっかりあり、濃く甘いつゆとの相性もなかなか。東京の蕎麦とは異なる食感、のどごしですが、これもまた旅情があっていいですね。

木曽の酒蔵の味を楽しむひとときでした。木曽福島のお昼酒は蕎麦前にしてみませんか。

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

店名くるまや本店
住所長野県木曽郡木曽町福島5367-2
営業時間営業時間
11:00~16:00(無くなり次第閉店)
日曜営業
定休日
水曜日
開業年1716年