上諏訪『いずみ屋』駅前で60余年。諏訪の幸を肴に地酒を楽しむ

上諏訪駅前で60年以上続く老舗の食堂「レストラン割烹いずみ屋」。諏訪湖のわかさぎや山菜を肴に地酒が楽しめます。100品ほどある信州料理は昼食時から注文可能。旅先のお昼酒にぴったりの一軒です。

いずみ屋は上諏訪駅周辺でもひときわ歴史ある老舗飲食店。入りやすい観光地食堂の店構えですが、アットホームな接客と豊富な郷土料理の数々、そして手頃な値段もあって、酒場ファンもきっと楽しめる一軒です。

お酒を飲まずに、信州そばなどをさっと食べていく人の姿も多いですが、飲まなきゃもったいないないです。

上諏訪の街を代表する老舗食堂のひとつ

まずは上諏訪について。

新宿と松本を結ぶJR中央本線の特急あずさの多くが停車する、長野県諏訪地域の拠点のひとつ。駅から諏訪湖は徒歩5分ほど。夏の諏訪湖祭湖上花火大会では全国から人々が集まります。

湖畔に広がる上諏訪温泉は中央本線沿線でも指折りの温泉地として知られています。

また、中心街には5つの造り酒屋が集中していて「諏訪五蔵」として、普段は多くのお酒好きで賑わいます。信州を代表する銘柄のひとつ「真澄」も、この街の酒蔵です。

そんな諏訪で、お昼からお酒を飲むというニーズに応えてくれるお店が「レストラン割烹いずみ屋」です。昭和30年代初頭から「泉屋」として営業しており、以前は駅前の別の場所で営業していたこともあるそうです。

駅弁ファンの間では、JR上諏訪駅の駅弁「諏訪弁ほいじゃねぇ」の製造元として知られています。なんとJR東日本「駅弁味の陣2020」で第9代 駅弁大将軍 総合1位を獲得しています。

蕎麦あり、天ぷらあり、刺身あり。観光地のオールマイティ型の食堂なのですが、Syupoでおすすめする理由は、店内にあります。

二代目、三代目が切り盛りされる個人店です。手頃な値段の料理もあり、地元の人の姿も多い様子。

なにはともあれ、ビールから始めましょう。樽生を取り扱っていて、銘柄はサッポロ生ビール黒ラベル。大きめのウイングジョッキでドンとでてくる、昔の中生サイズです。それでは乾杯！

地元の食材や郷土料理が豊富

飲み物メニュー

サッポロの生ビール（690円）のほかに、瓶ビールでアサヒとキリンもあります。地元のビール「りんどう」と「しらかば」も気になります。

地酒1合420円。

水と文化があるところに銘酒あり、諏訪の地酒は5蔵すべて揃っています。蔵めぐりができなかった人でも、ここならば全蔵を飲み比べることができるセット（700円）もあります。利き酒チャレンジをしてすべて正解するとお食事券がもらえます。

つづいて料理のメニュー。季節ものは差し込みで。

日常的なランチから、しっかり酔いたい飲兵衛さんまで、幅広いニーズに応えてくれる料理の数々。100品はあり悩んでしまいます。諏訪湖名物のわかさぎをはじめ、川魚料理はもちろんあります。

昼食ついでならば、定食でごはん少なめにするのも良さそう。食堂ですが蕎麦や豆腐も自家製です。

入り口に幟もたっている「信州みそ天丼」。町おこし的な料理で、味噌の名産地である諏訪をアピールする料理とのこと。

珍しい取り組みが、近隣の他店の名物料理がここで食べられるというもの。

郷土料理をおつまみにお昼酒

塩いかの和え物（420円）

山に囲まれた信州の名物料理に塩イカがあります。これは、糸魚川からはじまる「塩の道」で運ばれてきた日本海産のイカの塩漬けで、古くから食べられてきた貴重な海の幸です。

いまも一般的に食べられているそうで、こちらでは塩抜きしたものをサラダ風に軽くポン酢と和えて食べさせてくれます。日本酒を誘う味です。

にじ鱒塩焼き（620円）

もう1品は、にじ鱒。諏訪湖周辺の釣り人にはおなじみの魚。皮はパリパリ、身はほくほく。

チリチリとした細かい身から川魚らしい上品な甘さが溶け出してきます。

地酒をきゅっと（横笛・420円）

その土地の味に、その土地のお酒が合わないはずがありません。作り手が育った地域の料理とあわせる、旅先で地酒を楽しむ醍醐味です。

ひとくち丼ぶり・みそ天丼（500円）

ワンコインで食べられるなら、どうしても気になるのでと「みそ天丼」を頼んでみました。

予め味噌がかけられているほか、別に味噌ダレがついてきます。こがした信州味噌を甘辛に味付けしたような味で、なんとなく蕎麦味噌をイメージして頂けると味は近いかもしれません。

中部地方寄りの料理かと思いましたが、八丁味噌を使ったいわゆる名古屋味噌料理のそれとは異なります。

500円にもかかわらず、諏訪湖の川エビやワカサギもはいった、地域色が豊かな内容です。ごはんを少なくしてもらい、これをおつまみの一品にして楽しむのが良さそうです。

上諏訪の老舗食堂・いずみ屋は、気をはらず諏訪の味が楽しめる良いお店です。

ごちそうさま。

（取材・文・撮影／塩見 なゆ）