北千住『酒屋の酒場』海鮮の店。昭和30年代、酒屋から独立して創業。

北千住『酒屋の酒場』海鮮の店。昭和30年代、酒屋から独立して創業。

2021年6月2日

昭和30年代前半に酒販店から独立する形で開業したから、「酒屋の酒場」。二代目が切り盛りするアットホームな個人店です。千住市場などから仕入れた魚介類お財布に優しい価格で楽しませてくれます。

北千住という街が、昔から好きでたまりません。

駅周辺には巨大な飲食店街が広がり、細い路地に居酒屋が所狭しと軒を連ねています。夕方早い時間から数多の店に明かりが灯り、大勢の人々が気持ちよさそうに飲んでいる姿は、まだお酒を一滴も口にしていないこちらまで、ほろ酔い気分にさせてくれるものです。

最近では新進気鋭の個性派店舗が街歩き・グルメ系雑誌で取り上げられ注目を浴びていますが、老舗だって負けていません。半世紀以上続く酒場がパワフルな街、それが筆者の思う北千住の魅力です。

スポンサーリンク

駅から10分離れていても常連さんで賑わう店

西口を出て南側に広がる飲み屋通りへ吸い込まれがちですが、今日は少し駅から歩きます。

北千住駅前通りを西へまっすぐ進みます。旧日光街道との交差点では煮込みで有名な老舗酒場を右に見て、さらにその先の日光街道(国道4号)も渡ります。

駅から歩くこと徒歩10分。やってきました、本日の目的地「酒屋の酒場」。駅からこんなに離れていると「お客さんが来るのか」と疑問に思うかもしれません。それが、長年通うファンの方がたくさんいらっしゃいます。

ぱりっとした店

昭和30年代に創業し、60年以上続く店ですが、11年前に改築され、いまも年季を感じさせません。こういうのを「ぱりっとした店」と表現したい。

テーブル席が列車の食堂車のように一列に並び、対面がカウンター席というつくり。二代目大将やお姉さんたち、何十年と通うカウンターの主の皆さんが迎えてくれます。

「酒屋の酒場」は赤星が似合う店。建て替える前はもっと風景のひとつに染まっていたようにも思いますが、いまもバシっときまっています。創業時からサッポロと聞きます。当時はまだ黒ラベルもない時代…いえいえ、むしろ赤星の書かれたビールの商品名も「サッポロビール」ではなく「ニッポンビール」だったはず。

酒屋の酒場で脈々と続いてきた、毎夜の星印。そしていま手元に赤星がある。なんだかそれだけでも嬉しくなりませんか。乾杯。

品書き

サッポロいっぱいのドリンクメニュー

ビールはなんとピルスナー系を3種類置いています。それも他メーカーを置くのではなく、サッポロだけ。

サッポロ黒ラベル(大びん600円)、サッポロラガー(大びん600円)、サッポロヱビス(中びん530円)。さらに生ビールもサッポロ生ビール黒ラベルで、小生(480円)、中生(600円)、大生(1,100円)と、サイズ違いもいろいろ。

黒ビールはアサヒスタウト、ノンアルコールビールテイスト飲料はキリンフリー

値段の指標として見やすい酎ハイは400円。びん詰めのカナダドライ炭酸が甲類焼酎とは別にでてきます。このほか、地酒がいろいろとあります。

通っても飽きないほど、品数豊富で魅力的

特上マグロ刺し身(850円)からはじまる、黒い札の短冊メニュー。さしみ2点盛(1,100円)、まぐろの中落ち(410円)、アジさしみ(550円)、イカゲソさしみ(270円)、いわし新子(320円)など。価格も200円台から800円までぴんきりで、そのときのお財布事情にあわせて楽しめます。

揚げ物や多くの小鉢が300円前後なのは、今どき珍しく本当にありがたい!イカフライ(220円)、アジフライ(450円)など、海鮮系揚げ物はとくにおすすめ。

ホワイトボードには今日のおすすめが紹介されます。

安くて早くて美味しい老舗の魚介料理

まぐろ刺し

これはマグロの特上ですか?いいえ、中落ち(410円)です。中落ちもすごくいいものです。

尖って安くなくて良いんです。でもやっぱり、「この価格でこんなに!」という感動は味わいたい。酒屋の酒場は丁度いいくらいに得した気分にさせてくれるのです。

ひらめブリなどの刺身は千住市場などから仕入れた尾頭付きを店でさばいたもの。

ホッキ貝サラダ

ちびりと摘む小鉢に、ホッキ貝サラダ(270円)。

少しずつ掬ってはビヤタンを口へ運び、常連さんとお店の人の会話にそれとなく耳を向ける…。と思ったら、常連さんから突然話を振られて、びっくりしたりもします。

サッポロ率の高さはビールに限ったことではありません。これは老舗酒場でよく見かける緑色が濃いサッポロ飲料(現在のポッカサッポロ)業務用玉露茶をつかった緑茶ハイ(400円)。この緑色をみると、「あー、昔からの酒場だなー」ってちょっぴりテンションがあがります。

玉子焼(360円)

具だくさんで分厚い玉子焼き。ふかふかでジューシー。甘く出汁が効いたもので、お店の人気料理のひとつです。

酎ハイは焼酎濃いめ

カナダドライの炭酸をすーっと注ぎ入れた酎ハイ。レモンスライスが一枚浮かぶだけで嬉しいのが酒場好きの性でしょうか。自宅飲みが増えた筆者ですが、家だとポッカレモンで妥協(ポッカレモンも美味しい)しがちです。

イワシフライ(220円)

一尾から揚げたてをだしてくれます。「イワシだから安いのは当然…」なんて野暮なことは言わずに、いまどきフライをこれくらいの価格で出してくれる酒場は少なくなりました。とっても良心価格。しかもお刺身に出せるような肉厚でぷりっとしたものです。

半分は醤油で、半分はウスターソースをかけていただきます。薄めの衣はパリパリとしていて、身はとてもジューシー。

一時間くらい過ごして大満足。テキパキとしていて軽快な接客も心地よく、あっという間にひとときでした。元気な老舗酒場は、他にない価値があります。

ごちそうさま。

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

店名酒屋の酒場
住所東京都足立区千住中居町27-17
営業時間営業時間
16:30~22:30(L.O.21:30)
定休日
水曜日、日曜日、祝日
開業年1955年頃