ショッピングモールの中に、突如現れる老舗酒場。普段は大手飲食企業のレストランや世界展開をするカフェ、ファーストフードなどが軒を並べるショッピング施設ですが、極稀にすごいお店が紛れていたりするものです。
今回は広島から、そごう広島店と一体化した広島バスセンター(アクア広島センター街)にある黒帯ノンベエ御用達の店「源蔵バスセンター店」をご紹介します。
ベテラン紳士淑女が揃って頼む、お子様ランチのようなプレート料理が人気のお店。もちろん瀬戸内海の海の幸、酒処広島の銘酒も揃うので、旅行・出張で訪れた方にもおすすめの一軒です。
広島の中心街、紙屋町・八丁堀。広島駅からは路面電車に乗って約10分。県庁や広島城にも近い、まさに広島市のまん真ん中。
紙屋町交差点に接する広島バスセンターからは、JRバスなどが東京駅、高松駅、博多駅などへ高速バスを走らせている他、広島空港や呉などの近郊の施設や街を結ぶ多くの路線バスも集まる交通の拠点です。飛行機や高速バスで広島に来たときは、JR広島駅よりバスセンターが街の玄関口となります。
目指す源蔵は、そんなバスの利用者に長年親しまれてきただけでなく、源蔵で飲むことを目指してわざわざ路面電車で通ってくる常連さんも多いと聞きます。
100席以上ある源蔵は、バスセンターで一番大きな飲食店。ですが、若い人向け、家族向けの雰囲気は皆無で、完璧なまでに王道の大衆酒場の雰囲気を漂わせています。
店先は冷蔵ショーケースがあり、今日のおつまみがずらりと並んでいます。瀬戸内海の名物・しゃこをはじめ、〆鯖や小鰯、鯛刺し、そしておばいけのような郷土料理も充実しています。
なんと朝10時開店。ブランチから土地の肴で一献楽しめてしまいます。通しで営業し、夜はちょっと早く21時の閉店です。バスのりばまですぐ。例えば20時45分発のドリーム広島号東京行きの乗車前、ぎりぎりまで広島の味が楽しめるのです。(平時の情報。)
夕方17時前。まだ早いのに、すでに常連さんたちはしっかり出来上がっているご様子。お一人様の姿は多く、またご夫婦や、長い付き合いで飲んでいるような年配の方の姿もみかけます。
さてさて、まずはビールから。瓶ビール(キリンラガー・大ビン680円・以下税込)をもらい、ビアタン満たして乾杯です。
ビールは、樽生(中ジョッキ620円)と一部のビンが四国産のアサヒスーパードライ。日本酒、酎ハイ、ひれ酒といった品揃え。お酒の種類が絞られているのは、さすが老舗といったところ。
お酒の品数とはうってかわって、壁を埋め尽くすほどの豊富な料理たち。瀬戸内海でとれた魚介類は刺身、煮魚、酒蒸し、天ぷら、揚げ物といろいろ用意。さらに、今日の食材が先程のショーケースの中に揃えられています。
常連さんが揃って食べている不思議なお子様ランチ。その名も「源ちゃんセット」(1,100円)。これが大人気なのです。
もとは定食ですが、ごはんを冷奴に交換することで、一気に素敵な一人飲みセットの完成です。上から時計回りで、枝豆、煮魚、つぶ煮、はまち、まぐろ、サーモン刺し、冷奴、鯛などの白身フライ、子持ちちいちいイカ(ベイカ)煮付け、中央がひじき。日によって異なります。
備え付けの調味料も中国地方らしく、マルキン醤油とオタフクウスターソースです。
好物の鯛の子がついています。なにげないプレートですが、こういうのが嬉しいです。
あわせるお酒は三原が誇る銘酒「酔心」(醉心山根本店)。冷酒1合ビン(520円)の「ぶなのしずく」は、ぶなの原生林が広がる鷹ノ巣山の伏流水で仕込むことからついた名前。マイルドな味のなかに繊細な米の美味しさがつまっています。
小一時間のよき酒場時間。17時ぴったりに駆け込んでくるようなスーツ姿の常連さんたちが次々と訪れて、店内は適度な距離を開けつつ丁度いい入り具合になりました。
フロアを回すお姉さんたちは、皆さん常連さんと顔なじみ。今夜のカープの試合に皆さん注目されているご様子でした。
終戦から3年後に広島駅前で店を開いた源蔵。支店のバスセンター店も、古き良き大衆酒場の趣を感じるいい場所です。ずっとこの優しい空間が続きますように。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
源蔵 バスセンター店
082-225-3255
広島県広島市中区基町6-27 アクア広島センター街 7F
10:00~21:00(基本無休・施設の休館日に準ずる)
予算2,500円