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新子安の諸星は、酒場好きならば一度は訪ねてほしい名店です。
昭和初期に酒販店として創業し、その後、市民酒場となり現在に至る老舗です。平日のみの営業と、横浜が生活圏の方でないと訪ねる機会は多くはないかも知れませんが、ぜひ目的地として飲みに行って頂きたいお店です。(※時節柄、状況が許される方に。)
まだ行ったことがない方はもちろん、最近行けていないなという方にも読んで頂きたい、2020年6月の諸星の様子をご紹介します。
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赤い電車に乗って、京急新子安へ。普通列車だけが停車する小さな駅で、乗降客数は8千人台と都市部としては少なめ。そんな新子安の駅前は、諸星をはじめ市民酒場が2軒、そして立ち飲み屋や老舗焼き鳥店などの飲み処は充実しています。JR新子安駅からもすぐ。
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現在のご主人は3代目。ぴしっとした接客で、集まるお酒好きを程よい距離感で接してくれます。
そして、ご主人を先頭にして、左右にずらりと並ぶ短冊。そして名物の7mある対面カウンター。一人から二人客はこのカウンターに通され、相席同士仲良くなったものです。現在は感染症対策で対面は休止、7席を置いた片面使いとなっています。
短冊の対面には、1980年、山下公園の高架線(現在は構造物のみ残る)を走った蒸気機関車の写真が多数飾られています。
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店先の沢の鶴、そして店内の菊正宗や日本盛。灘の大手酒造の名前が随所にあるのは酒屋由来の老舗酒場ならでは。
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鶴見区生麦のキリンビール横浜工場まではわずか500mの距離。もともと市民酒場でだされるビールは配給制の時代から横浜のビール・キリンだったこともあり、いまもキリンビールが主役です。
それでは、キリンレギュラーラガー(大ビン630円)で乾杯!
樽生ビールも同じくキリンラガー。老舗に赤いラガーが似合います。
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日本酒の品揃えが充実しています。神奈川のお酒、海老名のいづみ橋(純米吟醸650円)や新潟・村上の〆張鶴(純米吟醸700円)、高知の司牡丹船中八策(純米600円)など、特定名称酒が20種類近く。よく見れば短冊の裏はずらりと一升瓶が並んでいることに気づきます。熊本は阿蘇の銘酒「れいざん」をトニックウォーターで割った「れいざんトニック」(400円)のような変わり種もあります。
甲類はキンミヤベースで380円の手頃な価格でバイスや梅割りロック、クエン酸サワーなどを置いています。
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定番料理は奥の黒地に白文字の短冊で、横浜らしい表記のシウマイ(400円)、ボリューム満点のもつにこみ(500円)、人気のとんみの(400円)などが掲げられています。
刺身は仕入れ次第でかわりますが、この日は北海道産の殻シャコが入っています。後ほどいただきましょう。他には、いわし、あじ、〆鯖、こはだ、たこなど。
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東京東村山の地酒「屋守 純米」(600円)をもらって、おつまみは爽やかに冷やっこ(600円)。
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傾いた西日差し込む店内で、冷奴と冷酒。あぁ、夏ですね。
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殻しゃこ(300円)。かなり立派なしゃこにテンションが上がります。ハサミを貸してもらって、上手に刃をいれて…
ジューシーでぷりっとしています。
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ふぐのからあげ(400円)。さばふぐでしょうか。外はぱりっと、中はしっとり。上品な旨味が楽しめます。
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大変美しい黄金色の玉子焼(400円)。オムレツのような洋食風の見た目。味はほんのり甘く、懐かしい味。醤油やソースをかるくつけて食べれば、ビールに戻りたくなるかもしれません。
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実は以前からキリンビールの横に、そっと赤星ことサッポロラガー(520円)の中ビンも置いてあります。〆のビールをきゅっと。
老舗酒場にはどんな時代でも癒やしの時間が流れています。居心地の良さはありますが、長っ尻はせずにささっと、ごちそうさま。
市民酒場について
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(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
2016年の記事はこちら
https://syupo.com/archives/14932
市民酒蔵諸星
https://twitter.com/sakabamorohoshi
045-441-0840
神奈川県横浜市神奈川区子安通3-289
17:00~22:00(土日祝定休)
予算2,500円