今日は横須賀中央から「鳥好」をご紹介します。
横須賀は神奈川県のどの街にも似ていない、独自の酒場文化が花開いた街です。明るい時間からやっている大箱の老舗大衆酒場が何軒もありますし、角打ちも賑わいがあります。また、洋辛子を塗る湯豆腐や、濃いめのホッピーもこの街の酒場文化の特色といえます。スナック街に行けば、そこはそれで「横須賀ブラジャー」などのオリジナルカクテルも存在し、何度飲み歩いても飽きることがありません。
今回訪ねる「鳥好」もまた、横須賀らしい酒場です。京急線の横須賀中央駅北側、若松町界隈が飲み屋街の中心ですが、鳥好は駅の南側。横須賀共済病院の周辺、米が浜通り沿いに広がる小さなスナック街の中に構える赤ちょうちんです。
営業時間は16時からと少し早め。横須賀の人の飲み始めはどこの酒場も早いのです。
創業から半世紀になる老舗。店構えも内装も、いぶし銀のかっこよさがあり、少しだけ背筋を伸ばして静かにお酒を楽しみたくなる、そんな酒場です。
ビールは長年サッポロビールを取り扱っていると聞きます。樽生はサッポロヱビス(中570円)、瓶ビールはサッポロ黒ラベル(570円)というラインナップです。
それでは乾杯!
ヱビスが標準的な星マークの500ジョッキに注がれているのは珍しいのですが、状態は完璧。ディスペンサーもジョッキもよく洗浄されていますし、温度もガス圧もばっちり。一口目のビールが美味しいと、料理もお酒もつい一品多く頼んでしまいます。
横須賀の老舗ではおなじみのホッピーも取り扱い。酎ハイ類は390円と手頃な価格が嬉しいですね。定番酒は菊正宗。
看板料理が鶏皮串のみそ煮(100円・串は3本以上で注文)、焼鳥は鮮度がいいと評判の砂肝や鶏レバーが魅力的です。カリカリに揚げた「鶏もも素揚げ」(500円)は若松町の角打ちで出会った地元の飲兵衛さんご推薦ですが、ボリューム満点なので、また今度。
鶏かわ串みそ煮と、同じ鍋で煮込まれエキスを吸ったこんにゃく、玉子を盛り合わせた「セット」(500円)でスタート。注文から1分もかからず出てきますので、焼鳥がやける合間にいただきましょう。
濃いめの味噌味はコク深く、鶏皮の旨味がより引き立てられ、余韻が猛烈にビールを誘います。
この鶏皮串煮込みは、実は呉の名物料理です。大将は元海上自衛官。呉に寄港した際に、呉の人気酒場「本家鳥好[Syupoの記事]」で鶏皮串みそ煮に出会い、その味に惚れ「鳥好」の名で横須賀に暖簾分けの店を開業したという背景があります。海上自衛隊基地がある港町繋がりは興味深いものです。
鶏肉、ナンコツ、辛口つくねが焼き上がりました。塩の場合は、自家製ブレンドの深み感じる味噌が添えられてきます。相撲中継のテレビをBGMに、静かな店内で大将が焼く焼鳥のシューっとした音が引きます。焼鳥の美味しさは空間全体から感じられます。
あわせるお酒は飲み始めるとクセになる色付き酎ハイ・バリキング。
大根おろしと一緒に食べると余韻爽やかで一層焼鳥とお酒が進みます。
昔懐かしいオムレツ(400円)は、鶏肉が入った鳥好オリジナル。素朴な味で、ケチャップなどもつけずにいただきます。焼めし、野菜炒めなどのフライパン料理は常連さんにファンが多い料理です。呉の本家由来のスープ豆腐(450円)は寒い冬につまみたい。
ジョッキの1/3は甲類焼酎というしっかり濃い目のホッピー(黒)。横須賀で飲み歩くとかなり酔が進むのですが、きっとホッピーの濃さが効いているのでしょう。
次第に常連さんでいっぱいになるカウンター。10席程度しかなく、埋まるとテーブル席に通されるのですが、やっぱり大将の前が酒場の醍醐味でしょう。
女将さんの優しい接客もあって、ほっこりした気分で心もお腹も満たされました。
さて、もう一軒いきましょうか。横須賀も呉も、梯子が楽しい巨大な飲み屋街がある町ですから。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
鳥好
046-825-3209
神奈川県横須賀市米が浜通1-17
16:00~21:30(月定休)
予算2,000円