八丁畷『久保田酒店』川崎に新たな角打ち誕生。スイングカランの黒ラベル注ぎ分け

八丁畷『久保田酒店』川崎に新たな角打ち誕生。スイングカランの黒ラベル注ぎ分け

2021年10月28日

川崎・八丁畷で80余年続く酒販店「久保田酒店」が角打ち営業を開始。特長は界隈初となるスイングカランで注ぐ、注ぎ方の違いを楽しむ生ビール。家族で立ち寄り一杯飲めるようなスタイリッシュなスペースは、これまでの八丁畷のイメージを覆します。

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特色ある店作りで老舗酒屋が勝負をかける

京急電鉄とJR南武支線が乗り入れる八丁畷駅。京急川崎駅から1駅となりで京急線は普通列車しか停車しないローカルな街です。工業地帯・倉庫街だった八丁畷ですが、昨今はマンションの建設ラッシュにより市内で一躍注目のベッドタウンに急成長しました。

駅前には工業地帯らしい濃厚な飲み屋街があり、ディープな酒場が好きな人にはたまらないエリアです。この街にお酒を卸している酒販店が今回ご紹介する「久保田酒店」。業務用をメインとした川崎に根付いた会社です。

黒く引き締まったオシャレな店構え。2021年4月に大幅なリニューアルをして現在の姿になりました。

以前はコンパクトな酒屋兼ご当地スーパーとして営業していました。周辺には大型チェーンスーパーが進出する中で、同社は街のローカルスーパーとしてではなく、酒屋ならではの新しい接点をつくることに方針を転換しました。

そうして角打ちを併設するオシャレな酒販店に変身。これがかなり魅力的なのです。

専門店だからできる提案と品揃え

全国区の酒販店や小売店とは異なる本業酒屋ならでは品揃えをテーマに、レアなものやハイクラスのお酒、目利きが選ぶ安旨系のお酒を揃えているとのこと。

元スーパーだけあって店内は広く、空間を贅沢に使った角打ちコーナーは立ち飲みながらオシャレ。

昔ならば、こういう個性と品揃えに特色がある酒店が誕生すると雑誌やテレビで紹介されていたでしょう。近年はとくに差別化を進める酒販店が増えています。

デパートや有名な酒店まで足を運ばずしてこだわりの洋酒や地酒が手に入る、お酒好きにとってはいい時代になりました。

和酒は在庫のみで、品切れとともに新しい銘柄と入れ替わる売り切りも多いそうです。ひやおろし、秋あがり、そしてこれからくる新酒と季節銘柄を積極的に楽しみたいところ。

ブームから定着へ。すっかりおなじみになったクラフトビールもこの通り、なかなかの品揃え。

酒屋さんで定番の乾き物や国分の缶詰にとどまらず、ビールやワイン、日本酒にあうチルド食品も多数。「スーパーから本格的な酒販店に業態変更、私達はもっか猛勉強中です」と話す店員さん。尋ねればきっとマリアージュなども提案してくれるはずです。

和酒もウイスキーも、そして極上の樽生ビールも。

酒販店で小売しているお酒やおつまみは持ち込みできません。角打ちスペースは飲食店として独立していまます。(お会計は共通)

一種のアンテナショップ的な雰囲気すらある角打ちスペース。さてさて、まずはビールから始めましょうか。

ビールは一銘柄、注ぎ方は9種類。生ビールにこだわる角打ち。

復刻版、昭和のサーバー・スイングカランで注ぐ一度つぎの生ビール(600円)

ボクソンのスイングカランとホシザキの一般的なタップ(現代のサーバー)の2タップが設置されています。

ここから注ぐお店のイチオシは「畷つぎ(なわてつぎ600円)」という地名を冠した一杯。9mm回路のスイングカランから注ぐ一度注ぎのビールです。

グラスの底で渦を巻くように、ぐーっと注いで持ち上げ、さっと泡を切る。同店の店長・藤岡さんの師匠にあたる、ビールサーバーメーカー出身でご自身もスイングカランでビールを注ぐ専門店「ビールスタンドミナト」のマスターである木村さん直伝の注ぎ方です。

流速が早い一度注ぎならではのほどよくガスが抜けた一杯。昔ながらのビヤやホールのような、喉を優しく抜ける一杯の完成です。

メニュー

注ぎ方は9通り

久保田酒店では、9種類の注ぎ方が用意されています。ビールの銘柄はすべてサッポロ生ビール黒ラベルで、平日は10L樽、週末は20L樽と変わるものの液種は同じです。なお、樽は樽冷サーバーに入れる前から冷蔵庫で冷やして振動を寝かす徹底ぶり。そんな黒ラベルを9つの注ぎ方にするのが、藤岡さんの技というわけです。

スイングカランの魅力を味わえる一度注ぎの「畷注ぎ」をいただきましたが、さらに3度注ぎなど様々な注ぎ方が用意されています。

ウイスキーなどの洋酒メニュー

角打ちのお酒はビールだけに限りません。日本酒の飲み比べやウイスキーも用意されています。店長はスイングカランのビール専属ですが、洋酒は詳しいスタッフがいるのでこちらも期待できます。

クロスオーバー(500円)

現代のサーバー(ホシザキ)は、一般的な居酒屋で使われているビール。クロスオーバーは、このサーバーのビールでグラスの7割近くを満たします。

その上にスイングカランの口を極限までしぼりクリーミーな泡をつくり、ここに載せ換えていきます。

完成。現代のサーバーならではのガス圧の高さとそれによるフロスティミストの立ち上がりに、スイングカランのきめ細かな泡が蓋をした技の光る生ビールです。

畷注ぎ泡変え(600円)

せっかく復刻版のスイングカランがあるのですから、その性能を満喫したい。そんな希望を伝えたところ、オススメされたのがこちら。

一度注ぎである畷注ぎでマイルドな味のビールでグラスを満たし、そこにスイングカランを絞り込んでつくるきめ細かなクリーミーな泡を注ぎ入れていくというもの。

スイングカランを設置した酒のプロ・酒屋ならではといっても過言でない、これも一種のパーフェクトなサッポロ生ビール黒ラベルの完成です。

おつまみ盛り合わせ(600円)

すべて店内で販売されているもの。なお、柿の種は角打ちを利用した際のサービスとしてでてきます。ほかにもソーセージ(500円)などビールにあうおつまみが用意されています。

ビールだけではもったいない、日本酒も

ビール、ウイスキーに加え、日本酒はメインで飲み比べ3種を提供しているほか、週末などタイミングが良ければグラスワインも手頃な角打ち価格で提供されるようです。

八丁畷のイメージを最新にアップグレードさせるような奇抜な店ですが、美味しいお酒をお酒好きな人に届けたいという強い思いが感じられる一軒でした。

角打ちの雰囲気や、スイングカランで注ぐ生ビールが好きでしたらふらっと立ち寄られてみてはいかがでしょう。

ごちそうさま。

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(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

店名久保田酒店
住所神奈川県川崎市川崎区池田1-13-9
営業時間11:00~19:45ラストオーダー(火定休)
開業年1940年頃(角打ちは2021年4月24日)