向ヶ丘遊園『カフェバーmasa2sets向ヶ丘遊園本店』熱意がスゴイ!黒ラベルを9パターン注ぎ分け

向ヶ丘遊園『カフェバーmasa2sets向ヶ丘遊園本店』熱意がスゴイ!黒ラベルを9パターン注ぎ分け

1種類のビールを9パターンにまで注ぎ分けるという、ビール注ぎに猛烈にこだわる店が向ヶ丘遊園にあります。店名は『カフェバーmasa2sets向ヶ丘遊園本店』。ライブができるミュージシャンの集まる店ですが、ビール好きとしても非常に興味深いお店です。

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再開発が進む向ヶ丘遊園にある個性派のビア&カフェバー

向ヶ丘遊園駅は、新宿から小田急線で20分程度。駅名の由来となった小田急系の遊園地「向ヶ丘遊園」はなくなりましたがメルヘンチックな駅舎はいまも現役です。向ヶ丘遊園は今、大変身の真最中。大規模な再開発により商店街もなくなり、駅前には更地が広がっています。

駅から2分ほど歩くと、真新しいビルの間に構える一軒家の店『カフェバーmasa2sets向ヶ丘遊園本店』が見えてきます。舗装したての道に、すべて新しい建物が立ち並ぶ、ピカピカの街に建つお店です。

外観

2015年、まだこの界隈がレトロな商店街だった頃に開業し、その後一旦再開発で閉店。建て替えて2022年9月に再オープンしました。

シンプルな店構えに、サッポロビールとスイングカランの文字がかかれた張り紙があることを見逃せません。

内観

外観のソリッドさとは異なり、店内は暖かい雰囲気。

2フロアあり、二階は演奏会などができるレンタルスペース。一階はカウンター数席程度のシンプルな小箱です。

バックバーに並ぶお酒は、すべて店長さんが好きな銘柄だそうです。珍しい洋酒などに混ざってキンミヤのグラスがあるところも注目。

一番左がスイングカラン

スイングカランは昭和初期からビヤホールで使われてきた二昔前のビールタップのこと。その後、誰でも簡単に注げるタップが誕生しました。多くの居酒屋で使用されているおなじみのものです。

ですが今、あえてスイングカランにこだわるマニアックな店が増えています。スイングカランは注ぎ方が難しく、狙いどおりに注ぐためには訓練が必要です。洗浄時のロスも多く、相当なこだわりがないと導入しません。

それをあえて導入した店長さんにお話を伺いました。

品書き

ビールの液種(銘柄)はサッポロ生ビール黒ラベル1種類のみ。樽は20Lです。

これを一度注ぎ(700円)、二度注ぎ、三度注ぎ、シャープ注ぎ、マイルド注ぎ、一度注ぎ泡変え、二度注ぎ泡変え、現代サーバー(一般的な飲食店にあるタップ)、そして泡だけのミルコと、合計9パターンの注ぎ方で提供しています。

ほかには、

  • デュワーズハイボール:600円
  • キンミヤレモンサワー:600円
  • 日本酒:700円~

と用意されています。

料理は

  • ソーセージ盛り合わせ:1,000円
  • ニシンの切り込み:400円
  • ホヤこのわたとイカの塩辛:600円
  • 焼き餃子:600円

など。

確かな美味しさ!すっきり喉を潤す一度注ぎ

黒ラベル一度注ぎ(700円)

スイングカランを使ったビールは店長さんしか注ぐことができないとのこと。不在時は飲めないので、狙って飲みに行く際は念のためお問い合わせされることをオススメします。(とくに広島で広島東洋カープの試合開催日)

さあ、では注いでいただきましょう。

ちょうど樽変えのタイミングです。丁寧に水通しできれいにして…。樽ごと冷やしている「空冷式」(一般的なサーバーは常温のビールを回路[ビールが流れる管]内で一気に冷やす瞬冷式)を採用しているものの回路は非常に長く、洗浄にはたくさんの水を使います。

ちなみに回路は内径9mmとのことです。

準備ができたら、カランを思いっきり手前に回し、斜めにしたグラスに流速高めに注いでいきます。

あっという間に半分を越え、最初にできた荒い泡が上がってきました。

荒い泡の下にカランの先端を差し込んだままにし、そのままいっぱいまで満たしていきます。

ビール内から自然に発生する細かな泡が粗い泡を持ち上げてきますので、これをビールナイフでさっと切って完成です。

完璧な一杯です。

星の肩の位置に液面と泡の境目が来る。一般的なサーバーでは簡単ですが、スイングカランでここに持っていくのはまさしくプロの技です。

ビールからは適度にガスが抜け、泡には苦味が移ります。フカフカ・トロトロの泡はほろ苦く、泡まで美味しいとはこれのこと。

ビールはどこにでも売られているサッポロ黒ラベルですが、飲んでみたらいつもの味とははっきり違うことがわかります。スイングカランのビールは、奥が深いのです。

現代のサーバーから注ぐ黒ラベル(700円)

こちらは、現代のサーバー(コックを手前に倒すと液、奥へ押すと泡)から注いだ黒ラベル。スイングカランと標準的なタップにつながる樽は共有しており、途中で分岐しているのだそうです。

現代のサーバー注ぎでももちろん美味しいです。丁寧に注ぐ店で飲むいつもの黒ラベルの味。十分に納得できる一杯です。

現代のサーバーも「パーフェクト黒ラベル」の認定が予定されているとのことで、まもなく泡を後のせのヘッドに取り替えられます。

この規模のお店で20L樽は大きいのでは?と思いましたが、1日10Lでは足りなくなる理由がわかりました。

にしんの切り込み(400円)

北海道うまれのビールに合わせるので、おつまみも北海道つながりにしてみました。関東で鰊の切り込みが食べられるのは珍しいですね。店長さんの行きつけのお店で提供されていたものを、仕入先を聞いて導入したそう。本当に好きなものしか仕入れないという「思い入れ」、飲食店では大事ですね!

デュワーズハイボール(600円)

ハイボールもちょっぴり特別です。というのも、このお店は瓶やペットボトルの炭酸水を仕入れていませんし、炭酸サーバーやマルチサーバー(炭酸水とアルコールを混ぜて提供できる特殊サーバー)も導入されていません。

既存のビール等をつなぐサーバー(中古で仕入れたもの)を改造し、通常のディスペンサーから炭酸水を注ぎだす方法を生み出しているのです。こうしてガス圧高めの炭酸水を提供することに成功しています。

パリパリとした炭酸でスコッチウイスキー「デュワーズ」はさわやかな飲み心地です。

キンミヤレモンサワー(600円)

こちらは、三重・四日市の甲類焼酎「キンミヤ焼酎」をベースに、イタリア・シチリア島産の有機レモン100%(加工は和歌山)果汁と強炭酸とあわせたもの。すっきりとした後味が印象的でした。

ごちそうさま

店長さんは熱心な野球(主に広島東洋カープ)ファンです。シーズン中、月1回は広島へ観戦に行くほど。お酒もお好きで広島でもよく飲むそうですが、そんなときに広島で有名なビール専門店『ビールスタンド重富』に出会い、スイングカランの魅力を知ったそうです。

重富さんにどうすれば扱えるか相談したところ、大船の『BEER STAND MINATO(ビールスタンドミナト)』を紹介され、ミナトの店主さんの協力で実現したそうです。

同店は、2022年9月の新店舗再オープン時にスイングカランを導入しましたが、以前は普通のサーバーで、ビールの銘柄も違いました。注ぎ分けで味の違いがでやすい銘柄を…と検討し、サッポロ生ビール黒ラベルを選んだと教えてくれました。

ビール好きならば店長さんとの会話もきっと楽しめます。ちょっぴりマニアックですが、気になる方はぜひ!

スイングカラン設置店

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(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

店名カフェバーmasa2sets向ヶ丘遊園本店
住所神奈川県川崎市多摩区登戸2085-5,8
営業時間15:00~24:00(不定休)
開業時期2015年