武蔵小山からはじまった晩杯屋。しばらくの間は品川区大井町と板橋区大山にしかなかったですが、店舗数が少なかった時代は遠方からも飲みに来る人がいるほどの人気ぶり、さらにはせんべろブームも追い風となってあっという間に30店舗。いまや、安く飲むなら晩杯屋という会話は、東京でだいぶ浸透しているようです。
「みんなが知るようになったら、特別な感じがしなくなった」
なんて話も耳にしますが、晩杯屋などの激安酒場が広まることはせんべろの間口が広がる意味もあって、外飲みに興味を持ってくれるきっかけになればよいなと筆者は思います。
さて、そんな晩杯屋は大井町、大森、蒲田と京浜東北線で各駅の出店し、ついに多摩川を渡り川崎も店を開きました。
立ち飲みオンリーで40人ほど飲める大きさ。路面の1フロアで雰囲気は大山店に近い印象。最近はフロアが別れていたり、椅子席の比率が高い、もしくは完全着席が多かったので、なんだか久しぶりという感じがします。
メニューは基本的にどのお店もいっしょ。注文はタブレット端末経由ではなく、飲み物は口頭で、料理は手書きのオーダー用紙を手渡す方式。このA4メニューの見慣れた感とは逆に、ドリンクも料理も昔のものと見比べるとだいぶ変わっています。
取材時のおすすめは馬刺しや小ハマグリの酒蒸しなど高級品が並びます。豚しょうが焼きなる新料理も登場。その影でエビフライがひっそりと消えたのは、海老好きの筆者としては寂しい。
まずは生ビール。昔ながらの嬉しい500mlジョッキ。生ビール410円は決して高くない。状態もよく、泡の比率もばっちり。生の品質のよさは昔からの売りのひとつなので、大切にしてほしいです。では乾杯!
オクラ納豆(150円)みたいな健康的なヘルシー小鉢が嬉しい。晩杯屋の納豆は、家庭でも使っている発泡スチロールパック入りの小分け納豆で、冷蔵庫に大量に白い四角い納豆が入っています。なんか、もっとごっつい業務用を想像していただけに可愛い。
合わせる飲み物はお茶割りで。寿司屋のお茶割り風。魚メインの立ち飲みということもあって、一番人気だそう。
晩杯屋の焼魚は安定していて美味しい。とくに鯖や秋にでてくるサンマなどはおすすめ。注文を受けてからこぶりなグリルで焼き場・揚げ場担当の人が焼け具合を気にしつつ仕上げてくれます。揚げ物以上に手間がかかるので、あんまり推しにはされていないようですが。
飲み物は宝酒造のゴールデン。風味付きの甲類焼酎で、どことなく下町の焼酎ハイボールに近い味。日本一の甲類メーカー宝酒造は焼酎ハイボール缶をはじめ、この手の酎ハイが得意です。
揚げたてのイカフライに、オリバーソースのだしソースを。揚げたてでまだ熱いフライにソースをかけると、油も乾いていないので馴染みがよく、一層美味しいのです。
コーヒー牛乳ハイとピンクグレープフルーツサワー。ミルク割りやコーヒー酎が好きな人におすすめのコーヒー牛乳ハイ。ピンクグレープフルーツサワーは、ポッカサッポロの果実系コンク技術が光るしぼりたて感を感じるみずみずしさが特長。
「晩杯屋ってなんだろう?」という川崎の地元ノンベエさんが多くて、どこか店数があまり多くなかったころの空気感が感じられました。川崎は既存で立ち飲み屋も安くて美味しいお店が多いですが、個性もそれぞれことなりますので、切磋琢磨で川崎の外飲み文化の底上げになるとよいですね。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
晩杯屋川崎店
044-200-4122
神奈川県川崎市川崎区砂子1-10-1
15:00〜23:30(土日祝は13:00~・無休)
予算1,500円