神保町には老舗の飲食店が多く、また出版社が多い街ということもあって作家や編集者など、活字を扱う人達によってそれら老舗の味は日本中に広まっていきました。そんな神保町・駿河台界隈でお昼酒といえば、やはり「ランチョン」をまず最初に紹介するべきではないでしょうか。
靖国通り沿いで今年111年目になるビアホールです。神保町で最初の洋食屋だったことから、昔は「洋食屋」と呼ばれていたといいます。お昼から通しで営業するランチョンはたしかに洋食屋ではあるのですが、メインはやはりビアホール。ランチタイムもアイドルタイムも、当然夜になってもコーヒーは一切取り扱いがなく、飲み物はビールやワインだけという姿はまさにビアホール。
ビールはアサヒビールを長年扱っていて、いまもメインはアサヒの昔からの生ビール(アサヒマルエフ)で、選べるもうひとつの銘柄もアサヒビールが日本国内でライセンス生産するレーベンブロイです。
お店は広く大きなテーブル席も用意されています。お客さんにはやはり出版関係者が多く、明るい時間からグラスビールを片手に打ち合わせをしている姿がみかけられます。
窓側のテーブル席ではだいたい作家と担当編集者がゲラを広げて話し込んでいます。もちろん、片手にはビールをもって。
品書きにもありますが、コーヒーはございません。お茶したいのであれば近所に老舗喫茶店はたくさんあるわけですし、ここは生を飲むべき。いえ、ビールを飲むのだから話も進むというものです。
伝統的なスイングカランのディスペンサーを使って注がれるきれいな生ビール。
泡は優しくきめ細かい。ビールはキリっと冷えていつつガス圧は穏やかで喉を流れるときに痛くない。ランチョンの生アサヒマルエフはさすが極上です。乾杯!
この時期にぜひ摘みたいのが酸味が効いたニシンのマリネ。マスタードのソースとニシンの酸味と旨味のバランスが絶妙で、中央にある赤キャベツのアグロドルチェもまたビールと絶妙な相性。
ビールはアサヒ黒生もあり、コーヒー代わりにちびちび飲むならこれがいいですね。靖国通りを通る車を眺めながらぼーっと飲んでいると癒やされます。
白アスパラガスが好物です。
生野菜サラダも昔からの洋食屋らしい洒落た盛りで楽しいです。テーブルに置かれた自家製ドレッシングをたっぷりかけていただきます。
エスカルゴやアイスバイン、食事はオムライスやかつサンドなど種類豊富ですが、毎回食べるのはサーモンのソテー。バターたっぷりで濃い目の味付けがビールをぐんぐんと誘ってきます。
ビアホールですがランチョンの営業時間は9時半までと早く、やはり早い時間に飲みに行くのに向いているお店。5時を過ぎると周囲の会社から続々と仕事上がりの一杯を求めて多くの人が飲みに来ます。
回転の良い新鮮な生ビールを歴史あるお店で飲んでみませんか?
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
ランチョン
03-3233-0866
東京都千代田区神田神保町1-6 神保町サンビルディング 2F
11:30~21:30(土は~20:30・日祝定休)
予算2,800円
(お詫び:掲載当初はスーパードライと記載しておりましたが、正しくはアサヒマルエフでした。お詫びして訂正いたします。)