暑くなったら恋しくなるのがビヤホール。銀座数寄屋橋で昭和12年に創業した『ニユートーキヨー』は、二度の建て替えを経て今年85周年を迎えました。これを記念して、新しいビヤホールの楽しみ方を提案する『創業85周年記念セット』が、7月1日より発売されます。Syupoでは、こだわりのつまったセットを一足先にご紹介します。
目次
独立系ビヤホールとしては最古の歴史を持つ
(初代の店舗から使用されてきたNTBのロゴ。今の時代でも見劣りしない。)
1937年(昭和12年)6月、函館で海産物問屋「森卯商店」を営んでいた森新太郎氏が、銀座数寄屋橋(有楽町)に5階建てのビヤホールを開業させたことが、ニユートーキヨーのはじまり。終戦後、GHQに接収され、解除後は銀座に集う食通や文化人が当時珍しかった「生ビール」を楽しむ場所として話題になりました。1957年(昭和32年)には、日本初の飲食複合ビルとなった地上9階建てのニユートーキヨービルに建てかわり、平成の終わりごろまで数寄屋橋の顔として鎮座していました。最盛期はニユートーキヨー全体で年間約100万リットルものビールが注がれていたそうです。
2015年に再開発のため一度は閉店するも、2017年、かつてのニユートーキヨービルがあった場所の近くにニユートーキヨー数寄屋橋本店は復活しました。長い歴史の中で、ビヤホールに対するニーズは変わり続けてきましたが、ニユートーキヨーは今も銀座数寄屋橋で、伝統のビールをブラッシュアップさせながら提供し続けています。
数寄屋橋本店の一階は、カウンターマンの伝統技能を気軽に楽しめる場所
2017年に新しい建物で営業を再開したニユートーキヨー数寄屋橋本店は、一階と二階で雰囲気や提供メニューが異なります。二階は従来からのビヤホールスタイルを継承し、大人数での乾杯に対応しています。
一階は少人数向けのブラウハウス(Brauhaus)となっており、より気軽にビヤホールを利用できる雰囲気です。昨今の飲食ニーズの多様化から、ビヤホールに求める役割が大人数の宴会場所としての用途だけでなく、「ビール専門店としてのこだわりを味わう場所」という見方が高まっています。ブラウハウスは、そうした「専門性」をラフに楽しめる場所です。
取材に際し、ニユートーキヨーの創業家三代目社長である森一憲さんは、今後ブラウハウスのような小箱のビヤホールを店舗展開していきたいと話します。
数寄屋橋本店には昭和12年の創業当時のテーブルとイスも残されており、店の歴史や伝統を感じられる場所でもあります。
昭和40年代に使用されていたビールタンクもモニュメント的に飾られています。サッポロビール恵比寿工場で製造されたサッポロ生ビールが、専用のタンク自動車で運ばれていたそうです。
現在、ブラウハウスではタンクではなく、標準的な20Lのビール樽が使用されていますが、カランと呼ばれるビール注ぎ口は、ニユートーキヨーこだわりの創業時から使用されている「スイングカラン」が引き続き使用されています。(設備自体は更新されています)
ビール樽は店に届いてから最低でも1日冷温で寝かし、ビールを落ち着かせているそう。瞬冷サーバーは使用せず、空冷方式で4~7度にビールを冷やし、それを5mm径で1.5mの回路でカランまで繋ぐという構成です。
ニユートーキヨーバランス
外食の混乱期を乗り越え、創業85年を迎えるにあたって、「ニユートーキヨーの強みとは?」ということを社員や協力会社であるサッポロビール社も交えてディスカッションを重ねてきたと、カウンターマンで現在ニユートーキヨービヤホール 有楽町電気ビル店に勤務する野々村さんは話します。
そうして、改めて整理して明文化したものが「ニユートーキヨーバランス」。ビールを注ぐ前の段階から守ってきた品質維持の方法に、創業時から受け継いできたニユートーキヨー式の注ぎ方を含めたものです。
ニユートーキヨーでは、カウンターマン(ビール専門スタッフ)が気候に合わせて注ぎ方を変えるだけでなく、お客さんのビールを飲むペースや杯数まで考慮して、グラス内のビールの炭酸ガスを注ぎわけているのだといいます。
さて、主力で提供されるビールはサッポロ生ビール黒ラベルです。銀座にはサッポロ系列直営の老舗ビヤホールも存在し、そちらでもスイングカランを使用したサッポロ生ビール黒ラベルが提供されていますが、同じ液種でも飲み比べてみると明らかに味が違うのです。
優劣をつけるものではありません。「メーカーの想う美味しさの追求」と、「飲食店の想う美味しさの追求」の違いが現れていることが興味深いです。
7月1日販売開始!創業85周年記念セット(1,650円)
ニユートーキヨーバランスや、ニユートーキヨーが持つ強みを表したものが、この創業85周年記念セットです。ビール2杯に、こだわりのおつまみが3品つきます。これで1,650円。有楽町駅・銀座駅徒歩2分、数寄屋橋交差点に近いこの場所としては、破格の安さではないでしょうか。
もちろんこのセットだけの利用も大歓迎とのこと。※記念セットは「ニユートーキヨー数寄屋橋本店1階 Brauhaus」のみで提供
1杯目:サッポロ生ビール黒ラベル
一杯目はニユートーキヨー式の注ぎをしたサッポロ生ビール黒ラベル。ニユートーキヨーの注ぎ方ならではの、喉を心地よく流れる軽さと麦の旨味が感じられます。
2杯目:プレミアム ヴァイツェン
二杯目はプレミアムヴァイツェン。果物のような香りの小麦を原料にした無濾過ビールです。ニユートーキヨーは以前から、ニユートーキヨーオリジナルビールを毎年用意していましたが、今年はヴァイツェンです。製造は協力関係にあるサッポロビール株式会社の那須工場。同工場ではサッポロの首都圏・愛知県限定ビール「白穂乃香」の製造も手掛けています。
さて、気になるのは白穂乃香との味の違いですが、ニユートーキヨー プレミアムヴァイツェンのほうが味が濃く、厚みを感じます。一杯目のスイングカランで注いだ黒ラベルとの対比としてもおもしろく、実に美味しいビールです。
ニユートーキヨーの社員の皆さんで実際に那須工場まで行き、ビールの製造試作などもおこなってきたのだそう。
ほぐし干鱈、ラムのスペアリブ、ラムのカルパッチョ風
セットのフード3品も、伝統や強みを活かしています。ほぐし干鱈は、昭和12年の創業当初に提供されていたおつまみを再現したもの。函館の海産物問屋が原点というニユートーキヨーを表しています。
そして、スペアリブとカルパッチョという2つのラムには、ニユートーキヨーの強みが活かされています。
北海道・札幌にあるサッポロビール博物館に併設された巨大ビヤホール「サッポロビール園」は有名ですが、実は同店はニユートーキヨーとサッポロビールが共同で運営していた施設です。そこの名物料理がジンギスカン。ラムの仕入れや調理のノウハウを蓄積してきたニユートーキヨーらしい、記念セットの内容ではないでしょうか。
ビールとの相性はぴったり。食べごたえもあります。
ニユートーキヨー数寄屋橋本店ブラウハウスの単品料理
サッポロ生ビール黒ラベル シュタインジョッキ:748円と、サッポロエーデルピルスグラス:660円
陶製のシュタインジョッキも用意されています。口当たりがかわって、また違った美味しさになります。チェコ産ホップを効かせたエーデルピルスなど、黒ラベル以外にもビールは充実しています。
枝豆のペペロンチーノ(580円)
十勝産の枝豆やビール風味ピクルスなど、セットで足りなければ簡単なつまみも追加してみては。
ほかにもいろいろ、ラム料理
ラムといえばジンギスカンがメジャーですが、ニユートーキヨーではより幅広く様々な料理で提供されています。ラム好きは必見です。
いつの時代もビヤホールはハレの場所です。どんなにデジタル化が進んでも、顔をあわせたコミュニケーションの場が必要だとわかった2020年代。こからもビヤホールが担う役割は大きいでしょう。新しい時代にどう進化していくか、筆者もビヤホール好きとして楽しみです。
この夏は、ニユートーキヨーで飲んだことがある方も、まだ未体験の方も、記念セットでそのこだわりを味わってみてはいかがでしょう。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ 取材協力/株式会社ニユートーキヨー Special Thanks/サッポロビール株式会社)
店名 | ニユートーキヨー数寄屋橋本店1階 Brauhaus |
住所 | 東京都千代田区有楽町2 2-1 |
営業時間 | 16:00〜22:00(土祝:15:00~・金は23:00まで) |
開業年 | 1937年 |
WEBで予約 | ホットペッパー |
2階ビヤホールのWEB予約 https://www.hotpepper.jp/strJ001176767/