1962年頃の創業、御茶ノ水で飲んでいた人には馴染み深い『徳兵衛』が神田駅前へ移転。良心価格のもつ焼き、煮込みは御茶ノ水時代と同じ。飴色の空間はなくなっても、徳兵衛の気軽さは健在です。
目次
徳兵衛は御茶ノ水のオアシスでした
御茶ノ水界隈に勤めていたり、大学に通っていた人には馴染み深い店ではないでしょうか。御茶ノ水は個人経営の老舗が数えるほどしかなく、「酒場」という場所を求めるにはやや厳しい街でした。
『徳兵衛』は貴重な存在だったものの、ビルの老朽化や、再開発の波により惜しまれながらも閉店することになりました。緊急事態宣言下で休業していたなかでの閉店発表に、多くのファンが落胆しました。ですが、徳兵衛は店じまい(閉業)ではなく、移転再開するための準備に入ったのです。
そうして2021年12月6日、神田に移転、再オープンを果たしました。
1階・地階の徳兵衛と3階の徳兵衛
(御茶ノ水時代の『徳兵衛』。半地下と中二階という独特な構造でした。建物は現存せず。)
なお、御茶ノ水の『徳兵衛』は地階と1階が同じオーナーで、今回神田に移転したお店です。3階にも同じ店名で別のオーナーが営業する『徳兵衛』がありました。同店は、残念ながら2021年夏に閉店しています。なお、両店は初代『徳兵衛』時代は同じ経営でした。
徳兵衛が移転再開!噂を聞きつけた常連さんが集う
新店はJR神田駅から徒歩2分のビル地階にあります。
階段を降りた先は、奥へと伸びるテーブル席と、突き当りに入れ込み座敷という構造。約30席あります。2人から6人がけのテーブルが並ぶものの、昔と変わらす一人飲み歓迎の雰囲気なのは嬉しいところ。”いまのところ”カウンターはありません。
次々訪れるお客さんは、移転を聞きつけた常連さんが中心です。
座敷はなんだか民宿の食事場所のような雰囲気です。
焼台をはじめ、厨房機器は新しくなりました。かつての飴色の調理場と黄色い壁の昭和な店の雰囲気はありません。
飲食店が移転してもかつての雰囲気を感じられるかどうかは、やはり「大将」の存在が大きいでしょう。店の雰囲気は大将の人柄を写す鏡と言われるくらいですから。1階のマスターに、変わらぬ笑顔で迎えてくれました。
地階で働いていた石田さんも、もちろん最前線で活躍中。仕事をされている様子がとても楽しそうなのが印象的でした。聞けば、もともと『徳兵衛』のファンで、それがきっかけで働くことになったそう。
乾杯は生ビール「アサヒマルエフ」で
酒類は以前からアサヒ系を主に揃えていた同店。新店では、樽生ビールをアサヒ生ビール(愛称:マルエフ)に変更。老舗に似合う銘柄です。それでは乾杯。
品書き
飲み物
生ビールはアサヒ生ビール(500円)、瓶ビールはサッポロラガー(愛称:赤星・大びん650円)。ホッピーはナカと外が別のセット(白黒各450円)のほかにキンミヤ三冷ホッピー(500円)もあります。酎ハイはマルチサーバーから注ぐタイプで、酎ハイプレーン(390円)、レモンハイ(420円)、ポン酢サワー(420円)など。ほかには、バイス(セット450円)やガリガリ君チューハイ(500円)。
名物として筆頭にあるのは梅割り(380円)。
料理
名物は徳兵衛セット(内訳:煮込み・もつ焼き3本 680円)、もつ焼きおまかせ5本盛り(580円)、煮込み(380円)、焼き鳥ねぎま3本(480円)など。
旧店舗時代で人気のポテトサラダ(350円)や海鮮チヂミ(600円)をはじめ、とろろ磯辺揚げ(450円)やカットステーキ(850円)など、和洋折衷の酒場らしい品書きです。
神田でもセットからはじめる
徳兵衛セット(680円)
まずは、名物料理の煮込みともつ焼きをつまみたい。セットならばもつ焼き3本(通常は5本)と、一人飲みでも頼みやすい内容なのもポイントです。
クセをかなり抑えた煮込みは、マスター自慢の逸品。会話に夢中で多少冷えてしまったとしても脂が浮くことはありません。まさに、旨味のカタマリといった一品です。
もつ焼きの部位はおまかせのみで、タン、レバ、シロがでてきました。小ぶりながらタレとのバランスが良く、お酒を猛烈に誘うもつ焼き。タレは以前の店舗から継続しているようで、一般的なタレの何倍もコク深いです。
枝豆(280円)
お通しはありませんので、すぐでる一皿を頼んでおきました。
サッポロラガー大瓶(650円)
マルエフ以外の選択肢、サッホロラガー。爽快さを楽しむアサヒと、お互いに注ぎあう瓶ビールの赤星、どちらも素敵です。
ホルモン炒め(580円)
シロモツともやし、ニラなどを炒めたホルモン炒め。ちびりとつまみつつ、ビールが進みます。
梅割り(380円)
こちらも旧店時代からの名物、梅割り。ベースの甲類焼酎は宝焼酎を使用。
そこへ、梅シロップを垂らして完成です。シロップは天羽ではなく、甘さの主張が強い「福梅」風の味です。
揚げたてポテチ(480円)
懐かしいレトロな味の梅割りには、お店で揚げたてのポテトチップス、その名も「揚げたてポテチ」。しっとりとしたフライドポテト的な部分とパリパリな表面のコントラストがクセになります。
このペアはお酒が進みすぎてキケン!※お酒は適量で。
キンミヤ三冷ホッピー(500円)
ホッピーの公式ジョッキで提供される三冷ホッピー。
酎ハイ(390円)
飲み飽きないプレーンの酎ハイ。コンクの入らないキレのある味。
バイスセット(450円)
ナカは氷を含めてジョッキの半分以上入る、バイスサワー。一般的なチェーン居酒屋のそれより濃いめなのは、老舗酒場のこだわりです。
鳥のスパイス焼き(680円)
カットステーキ(850円)に次ぐ値段の鳥のスパイス焼きは、アルミホイルの包み焼きです。
あけると鶏肉にたっぷりの胡椒、そしてニラやもやしが登場。チーズがアクセントになっています。
新店になっても、『徳兵衛』の人気メニューは健在です。60年続いてきた酒場の第二幕、世界がこの2年で大きく変わりましたが、荒波の中でも前に進む酒場はたくさんあります。
ごちそうさま。
旧店舗時代の記事はこちら
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
店名 | 徳兵衛 |
住所 | 東京都千代田区内神田3丁目17−8 アルプスビル B1 |
営業時間 | 営業時間 11:00~14:00 17:00~23:00 |
開業年 | 1962年 |