神保町『かんだ串亭』名物・塩味の肉どうふは日本酒のための肴。

神保町『かんだ串亭』名物・塩味の肉どうふは日本酒のための肴。

2021年3月5日

神保町で40年以上続く、二代目が暖簾を守る酒場「かんだ串亭(ていは旧漢字)」。串亭の名の通り焼鳥を出すお店ですが、他にも気になる料理多数。蔵元直送の鮎正宗ほか、新潟の日本酒が充実しています。最寄り駅は神保町、小川町ですが、JR御茶ノ水駅、地下鉄淡路町駅からも徒歩圏です。

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吸い寄せられる雰囲気

靖国通り沿いに広がる神保町のスポーツ店街の角を入ったところに、気になる黄色い看板の店があります。周囲はオフィスや病院、スポーツウェアなどを扱うショップが立ち並ぶ中、ここだけは地方都市の酒場街にあるような佇まいです。

神田小川町で42年になるかんだ串亭。ときは第一次地酒ブームです。初代が新潟に縁があることから上越のお酒を取り寄せていました。

新酒の時期を迎え、真新しい杉玉が掲げられています。藍色の暖簾と、古くても清潔にしている店構えに誘われます。よく見れば、扉の造作は「串」のかたちです。

接客上手で物腰のやわらかな女将さんが「いらっしゃい」と迎えてくれます。「コートはかけますか?荷物は隣の椅子に置いてくださいね」と続き、お酒のおすすめを紹介されます。

どこか日本海側の酒場にあるような雰囲気です。暖色照明が照らすL字のカウンターの先に、小上がりが広がっています。家族経営で二人で切り盛りされていますが、ちょっとした宴会の利用もされていた様子。

カウンターはえびす様に囲まれて

えびす様の置物がにっこり微笑む店内。樽生ビールは創業時からヱビスビールひとすじとのこと。

えびす様の歴代商売繁盛祈願が、店内各所にあります。えびす様を祀る神田明神も近いですし、今日はなにかいいことがあるかも。

樽生がヱビス」。たったこれだけのことですが、お店の食材に対するこだわりをよく表しているように思います。状態抜群のヱビスビール(680円)で乾杯。

通常の金ヱビスのほかに、琥珀ヱビス(580円)の取り扱いもあります。

約30種類の新潟の地酒

一杯目はヱビス。二杯目は初代からのこだわり、新潟の銘酒を味わいませんか。

越乃寒梅、雪中梅、久保田、八海山、北雪、越後桜、吉乃川、長者盛〆張鶴…。非常に種類があり、店内の冷蔵庫にはぎっちりと酒瓶が詰まっています。(すべて税別表記)

酎ハイ類、ホッピー、ハイボールなどは380円。

初代店主がとくにこだわった銘柄が、上越は妙高市の山間部にある造り酒屋のお酒「鮎正宗」。

蔵元から直送で仕入れ、創業時は東京都内で唯一、鮎正宗が飲める居酒屋だったようです。現在も季節限定銘柄も含め、常時6種類以上が揃えられています。

日本酒に悩んだら、3種類選べるお猪口3つの利き酒セット(780円)か、特価品の越の誉(380円 ※サービス価格が終了している場合があります)が良さそうです。

日本酒との相性を考えた料理

カラフルな今日のおすすめメニューが女将さんから渡されました。

名物は店名を冠した「串亭の肉どうふ」(480円)。手造りさつま揚げ(400円)も人気です。常連さんは、季節もののカキフライ(500円)や、数量限定の鴨串焼(2本450円)などを頼まれています。

仕入れてきたばかりを感じさせる、保冷バックや鮮魚卸のマークが列ぶ厨房。刺身もこだわりのひとつのようです。今日のおすすめは自家製〆鯖刺(700円)とのこと。

通常の献立がこちら。串亭の焼鳥は2本単位。価格は500円前後が中心です。

お通しからお酒に合うちょっとしたもの。日替わりで、取材時は胡麻和え、厚揚げ煮、しめじと里芋の白和え。

〆鯖には越の誉

女将さんにおすすめに二つ返事で答えた「自家製〆鯖」(700円)。半分は炙りで出していただきました。滲み出た脂の光沢が実に美味しそう。厚切りですね。

じっとりと旨い、ほどよく〆られたとろっとした逸品です。

合わせるお酒は、越の誉。すっきりとした淡麗な味は、飲み飽きない美味しさ。

浅いマスをはいたグラスに溢れるほどたっぷり注いでくれます。定番酒といっても、一杯ずつ女将さんに目の前で注いでくれるのが嬉しいです。

名物・日本酒専用?肉どうふ

名物料理の肉どうふ。初代考案、日本酒のために作られた塩味の肉豆腐です。出汁に日本酒を使っているようで米の旨味が効いたつゆ。そこに固めの絹ごし豆腐と豚バラ、玉ねぎ、短く整えられたしらたきがたっぷり入ります。

甘いすき焼き風の肉豆腐とは大違い。例えるならば、豆腐と豚の酒蒸しです

たくさんの日本酒がラベルを正面に向けて整列しています。大切に扱われているお酒はどれも実に美味しそうです。

春を感じる地酒で旅気分

悩んだら、女将さんに相談です。鮎正宗の中でもとくに珍しい季節のお酒があるそう。出てきたのは、淡いピンク色のお酒。

新聞紙に包まれた「さくらいろ純米にごり酒」(日本酒度-20 アルコール度数10度)は、毎年春を前に2月中旬に出荷される限定酒。赤い色素をつくる酵母で色がついた、見た目も春らしい一杯です。甘めでも飲み心地はさわやか。

カウンターに集まる常連さんご主人、女将さんの距離感が、都心の居酒屋とは思えない、ローカルな懐かしい雰囲気です。地域密着の店はやっぱりいいものです。

ごちそうさま。

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

店名かんだ串亭
住所東京都千代田区神田小川町3丁目2−9 伊勢屋ビル
営業時間営業時間
[月~金] 17:00~24:00 [土・日] 17:00~23:00
定休日
年中無休