秋葉原『とり庄』昭和55年創業。裏路地に残る昭和の焼鳥酒場でタイムトラベル。

秋葉原『とり庄』昭和55年創業。裏路地に残る昭和の焼鳥酒場でタイムトラベル。

千代田区秋葉原、中央通りと秋葉原UDXに挟まれた路地裏にある『とり庄』は1980年創業のやきとり店。再開発からわずかに逸れたことで残されてきた昭和の酒場です。特色はロケーションだけでなく、なにより串が大きくて美味しく、続いてきた理由がよくわかります。

スポンサーリンク

青果市場の横で1980年創業

秋葉原の賑わいは、戦後直後に電気部品の闇市が生まれたことが始まりで、やがて問屋街、電気街、サブカルの街へと変化してきました。そんなマニアが集まる駅周辺を横目に、駅の真横で淡々と東京都心部の食を支えてきた施設があったことをご存知でしょうか。

現在、秋葉原UDXが建つ場所は、1990年まで東京都の中央卸売市場青果市場がありました。この市場は歴史ある魚河岸として知られる築地市場よりも古く、その歴史は第3代将軍徳川家光が治めていた江戸時代・明暦まで遡ります。

神田川を使った水運や、明治以降は鉄道(東北線)を使い青果の搬入が行われてきましたが、国鉄民営化、物流改革、取扱量に対し施設が小さいことなどから移転が決まり、1990年に大田市場へ機能が移されました。その後、10年以上広大な都有の空き地となり、2006年、秋葉原UDXが建てられました。

闇市や市場がある場所には酒場あり。そうした秋葉原の変化を見続けてきた焼鳥屋さんが今も営業を続けています。店名は『とり庄』。

中央通り沿いのサブカル系の店舗が入る雑居ビル群と秋葉原UDXに挟まれた、ビルの谷間にある二階建ての木造店舗は、まるでここだけ昭和にタイムスリップしたような雰囲気です。

店の入口に焼台があり、大将が黙々と串と火に向き合っています。その奥へと細長いカウンターが続いて奥で折れています。カウンターは9席ほど。角度が急な階段を登ると座布団を並べた部屋があり、この座敷で18人くらいが利用できます。掘りごたつではありません。それにしても非常にコンパクトで、今時珍しいくらいの渋さです。

品書き

お酒

  • アサヒ樽生ビール:680円
  • アサヒスーパードライ中瓶:680円
  • サッポロヱビスビール中瓶:670円
  • ヱビスプレミアムブラック小瓶:550円
  • 田酒:980円
  • 黒龍:980円
  • 浦霞:900円
  • 酔鯨:950円
  • 真澄:950円
  • 澤乃井:850円
  • 手取川山廃:800円

料理

  • 5本コース:1,800円
  • 7本コース:2,500円
  • 10本コース:3,800円
  • 串:ねぎま・なんこつ・手羽先・ささみ・かしわ・皮焼・血肝・砂肝・はつ・つくね・ぼんじり・しそ巻・銀杏・アスパラ・ししとう
  • 煮込み:750円
  • 厚焼玉子:650円
  • チャーシュー串:480円
  • うずら串:350円
  • ツナサラダ:700円
  • お通し・スープ:400円

串が大きく、一人ならおまかせ5本、二人なら10本がちょうどいい。

ヱビスビール中瓶

樽生ビールもありますが、今日の一杯目はどっしりとしたビールが飲みたかったため、ヱビスビールの中瓶をもらいました。それでは乾杯。

お通し(400円)

まずはお通しがでてきます。お新香か厚焼玉子が選べますが、今日は玉子がもうないようでお新香でした。これと〆の鶏スープがつくので嬉しいお通しです。

10本コース

今回はいろいろ食べるべく2名で訪ねましたので10本セットをお願いしました。串の一本一本が通常の焼鳥の1.5倍ほどあるため、一人5本くらいがちょうどよいと思います。

さて、最初にでてきたのは名物であるチャーシュー串。焼鳥店で最初から豚肉ということに違和感があるかもしれませんが、これがトロっとしており、甘さとコクが強く実に美味しいです。

ねぎま、かしわ、つくねと焼き上がりました。味付けは基本的におまかせです。食べるペースに合わせるほどの余裕はないものの、一度に焼かず少しずつ出してくれるのが嬉しいです。

こちらは血肝(レバー)。かなり大きく、食欲をそそる見た目ですね。焼き具合が絶妙で、しっかり火は通っているもののぱさつきはなく、濃厚な旨味が舌をつつみます。

地酒

地酒のラインナップが多いと、一杯飲みたくなるというもの。私は久しぶりに田酒の特別純米をお願いしました。

一緒瓶から一合サイズの蛇の目猪口に豪快に注ぐのが『とり庄』の提供方法です。元祖プレミアム地酒なんて言われる田酒ですが、やはり問答無用の美味しさがあります。

ねぎに巻いてでてくる皮焼。鶏皮の脂をすった葱の風味が鼻へ抜け、それがお酒を進ませます。

砂肝と手羽先。どちらも塩ででてきます。手羽先といえば柔らかく脂がのっているか、よく焼いたことでパリパリになっていることが多いですが、こちらはハリがあり、噛むほどに肉汁が滲み出てくる肉でした。

表面を燻すように焼き上げたハツ。炭火ならではの風味がたまりません。

銀杏がでてきて10本目。もうお腹いっぱい、大満足です。

アサヒスーパードライ中瓶

お会計を前に鶏ガラのスープを飲みつつ、〆のビールを一本。

ごちそうさま

昔からお客さんが集まる活気ある店舗ですが、最近は外国人旅行者の姿も多いようです。この日もカウンターの半分は外国人でした。それでも、秋葉原の街並みとの温度差は昔のまま。やっちゃ場横にあった焼鳥店はいまも健在です。

近くの酒場

秋葉原『駒忠』アキバで働く人御用達の居酒屋は、人情たっぷりアナログな大衆酒場!
サブカルの発信地"アキバ"にも働く人が愛用する老舗居酒屋はあります。昭和通りから1本入った小路を照らす黄色い看板『駒忠 和泉町店』もそのひとつです。ここは近隣で…
syupo.com
秋葉原「赤津加」 変わりゆく街並で、変わらない価値がある
東京の景色は目まぐるしく変化します。それこそが、東京という街のアイデンティティのように。そして、そこで働き、そこに暮らす私たちも、時代に取り残されないように常に…
syupo.com

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

店名とり庄
住所東京都千代田区外神田4-3-12
営業時間営業時間
[月〜金]
17:00〜22:30
[土]
17:00〜22:00
定休日
日曜日
創業1980年