難波のビヤホール『ニューミュンヘン南大使館』の樽生ビール。銘柄こそいつものサッポロ黒ラベルですが、改めて飲んでみると、極上の一杯に感激します。今回はその美味しさの理由を探ります。
目次
難波の一等地にある巨大ビヤホールの「特別」なこだわり
大阪と神戸に9店舗のレストランを展開するニューミュンヘンは、関西を代表するビヤホールのひとつです。
1958年(昭和33年)に創業し、梅田・お初天神に長年本店を構えていました。現在は建物の老朽化により、本店の役割はほど近い場所に2018年にできたニューミュンヘン 曽根崎店に移りましたが、「キタ」で美味しいビールを飲むならニューミュンヘンと指名する長年のファンが多いことで知られています。
さて、東京で老舗のビヤホールといえば、サッポロHD傘下のサッポロライオン社が運営する『銀座ライオン』が有名です。銀座ライオンは歴史的、組織的にみてサッポロ直営店と言える存在ですが、関西のニューミュンヘンは実はビール会社の系列店ではありません。
ニューミュンヘン南大使館 外観
独立系のビヤホールとして長年大阪の大衆ビール文化を牽引してきたニューミュンヘン。そのこだわりを、同社の中でも比較的歴史がある、1971年(昭和46年)開店の『ニューミュンヘン南大使館』からご紹介します。
南海電鉄・大阪メトロ難波(なんば)駅から徒歩1分。アクセス抜群の場所にあるビヤホールです。
内観
駅前の一等地にあって、なんと420席を有する巨大なビヤホール。本場ドイツのビヤホールに並ぶ規模です。大変大きな店ですが、一人客の姿も多いのが特徴。事実、一人、二人で飲んでいても大箱特有の身の置き所がない感じは皆無です。
こだわり1,サッポロビール静岡工場直送、200Lタンク
ビール会社の系列店ではありませんが、ニューミュンヘンの樽生ビールもまた、銀座ライオン同様、創業時からサッポロビールを中心に取り扱っています。
震災で被災したニューミュンヘン神戸大使館を再建するにあたっては、サッポロビール社と共同出資で株式会社サッポロ神戸大使館醸造所を設立しサッポロの技術協力によって地ビール醸造に乗り出すなど、深い関係があります。
そうした”特別”な関係が私たちビールを飲む側でも実感できるものが、ニューミュンヘン南大使館にはあります。
サッポロビールのロゴ・北極星(同社のCIではサッポロ シャイニングスター)が大きく貼られた巨大なビールタンクが、ロビーのすぐ脇に鎮座しています。これは銀座7丁目のビヤホールライオンの地階で現在も使用中の1,000Lタンクと同形状のものです。
実はこちら、かつては巨大なビール輸送タンクローリーで搬入していた頃の名残です。いまは使用されていません。
大型のタンクにかわって、現在稼働中のタンクがこちら。200Lと比較的小型になったとはいえ、ビール専用の特殊なタンクが使われています。一般的な飲食店が取り扱うことができるサッポロビール社のビール樽は10L、または20Lですから、このタンクそのものが特別な存在です。
こだわり2,流通経路が特別。工場からつくりたてを直送!
全国6箇所にあるサッポロビールのビール工場から、最も大阪に近い静岡・焼津にあるサッポロビール静岡工場で製造されたビールをニューミュンヘン専用で直送しているそうです。
2008年まで大阪にもサッポロビールの工場がありましたが、製造が静岡へ統合後も物流の力でできたての美味しさを維持しています。
こだわり3,横コック
いまはなきニューミュンヘン本店でも使用されていた、珍しいハンドルタイプのビール注ぎ口が使用されています。
ニューミュンヘンでは「横コック」と呼ばれています。サッポロビール社では「スウィングカラン」、一般的にはスイングカランや昭和のサーバーと呼ばれているものです。
これは、ビールサーバーでおなじみの手前にレバーを傾けるとビールが注がれるタイプが登場する以前に主流だったもの。銀座7丁目のビヤホールライオンや、サッポロビール園など、老舗のビヤホールなどを中心に数えるほどの店でしか使用されていません。
この横コックを使用し、ニューミュンヘン独自の二度注ぎで注いで完成です。
完璧な一杯
2度注ぎの1度目。全開近くコックをあけ、ジョッキのへりにそって勢いよく渦を作るように注ぎ、ビールの苦味を発生する泡に適度に移し、泡の下にはほとんど空気に触れていない、工場から大型タンクで運ばれてきたできたてのビールが満たされていきます。2度目で上面の荒く苦い泡を注ぎこぼすようにして、ビールと合わせの比率を整え完成。
同じサッポロ黒ラベルでも、銀座ライオンともサッポロビール園とも異なる、ニューミュンヘンならではの味の完成です。
では乾杯!
苦味控えめ、ガスはほどほど。飲み心地抜群の麦を感じる一杯です。
品書き
定番のビールはサッポロ生ビール黒ラベル。サイズは4種類で、レディースグラス:572円、中ジョッキ:583円、大ジョッキ:1,034円、デラックスジョッキ:1,254円。同様にサイズ違いで、サッポロヱビス プレミアムブラックと、それらをあわせたハーフ&ハーフが用意されています。
料理は、阿波乙女鶏のから揚げ:レギュラー:1,100円、同スモール:770円、あらびきソーセージとポテト盛合せ:847円、タコの竜田揚げ:715円、コンビネーションサラダ:935円、上海焼きそば:990円など。
いつもより飲めちゃう!楽しいビヤホール時間
中ジョッキ(583円)
突き出し、席料などなく、こだわりを考えれば中ジョッキが600円未満はとてもリーズナブルです。会話の中で、グイグイと飲んで美味しさを共有するさらにお楽しくなります。
レトロなデザインのグラス。コースターとおそろいです。
阿波乙女鶏のから揚げスモール(770円)
徳島の地鶏を、胸から上、脂が程よくのっている部位を専用のタレに漬け込み揚げたもの。骨ごと揚げられており、頬張るには注意が必要です。でも、やっばの骨の周りが一番美味しいです。創業時からの名物料理。
ガーリックトースト(550円)
なかはフカフカ、そとはカリカリのガーリックトーストはビールと相性抜群の一品。から揚げのつぎに頼みたいいつもの料理です。
ヱビス プレミアムブラック レディースグラス(616円)
黒ラベルと違い、こちらは通常のビール樽から注がれているものです。ですが、注ぎ方はもちろんニューミュンヘン流。黒ヱビス特有のコクがさらに引き出されています。
大使館ビール(620円)
大使館ビールは神戸でつくる地ビールです。
日本国内産ですが、ドイツのビールに関する法律「ビール純粋令」に準じた作り方をしています。麦芽100%、ニューミュンヘン系列の店舗でしか飲めない下面発酵中等色ビールです。液色から連想の通り、香ばしくコク深い味が特徴。
いつもの一杯が、ここでは特別な一杯
こだわりぬいた極上の黒ラベルからはじまり、最後は関西の地ビールで〆る。ビールが主役になる飲み方を楽しみませんか。人数が多くても安心ですし、ビール好きならば間違いなく喜ぶ美味しさです。
同社のホームページによると、提携企業に株式会社サッポロライオンとあります。全国展開する銀座ライオンが大阪に出店していない(ヱビスバー等はあります)のは、ニューミュンヘンとの兼ね合いがあるのかもしれませんね。
ごちそうさま。
系列店
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
店名 | ニューミュンヘン 南大使館 |
住所 | 大阪府大阪市中央区難波千日前12-35 SWINGヨシモトビル 2F |
営業時間 | 11:30~22:00(不定休) |
開業年 | 1971年(現在の場所は2009年から・創業は1958年) |
公式サイト | ホームページ |