川崎『元祖立ち飲み屋』昭和45年創業。元祖の由来は?肉豆腐が絶品!

川崎『元祖立ち飲み屋』昭和45年創業。元祖の由来は?肉豆腐が絶品!

2022年1月11日

川崎を代表する立ち飲み、その名も『元祖立ち飲み屋』。低価格な酒場チェーンが増えた昨今ですが、一周まわってここのお得感が素晴らしい!しっかりと手間をかけ、半世紀店を守ってきた大将の料理は値段以上の価値を感じます。

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元祖立ち飲み屋という不思議な店名に歴史あり

外観

立ち飲みの元祖というものは、網羅的な資料として記録がないものの、江戸時代には、酒屋の店先でお酒を飲む「立ち飲み」がすでに存在していました。

といっても、川崎の『元祖立ち飲み屋』は、そういった意味での立ち飲みの元祖というわけではありません。90年代築の再開発ビルにはいる同店は、まだまだ新しく見えます。

店名や歴史について、2代になる大将に伺いました。

半世紀以上前の川崎の話です。いまでこそ再開発されて大きなビルが立ち並ぶ川崎駅北口周辺ですが、当時は細い路地に小さな店が建ち並んでいたそう。とくに、国鉄川崎駅(現在のJR川崎駅)と京浜川崎駅(現在の京急川崎駅)の間は、両駅の乗り換え客も多く賑わっていたといいます。

両駅を結ぶ「望郷横丁」という50メートルほどの細長い飲み屋街にあった「立ち飲み屋」という店が、現在の『元祖立ち飲み屋』の原点です。創業は1970年(昭和45年)。その後、「立ち飲み屋」は近くに支店を開店します。このときから、創業時からの店を『元祖』と呼ぶようになったそう。

2000年代に入り再開発が行われ、『立ち飲み屋』は移転。望郷横丁跡地近くの十五番館ビルの1階に移り、いまの姿になります。

内観

立ち飲みというと小箱のイメージがありますが、元祖立ち飲み屋は比較的広いほうです。それでも人気店なので入れないこともしばしば。開店前に行列ができ、皆さんが店内に入ると、一巡目はあっという間に満員となります。(人数制限あり)

厨房に向いたL字のカウンターには、毎週のように通う常連さんが集います。みなさん、長年通っている常連さんだそう。

テーブルも用意されており、2~4人位までならばグループでの利用も可能です。ですが、店の醍醐味という点では、雰囲気にひたり一体感が楽しめる一人飲みのカウンター利用が一番でしょう。

乾杯は黒ホッピーで

大将によれば、川崎で一番ホッピーを売っている!?なんて話もある、元祖立ち飲み屋。カウンターに揃った黒帯のお客さんたちのほとんどが、一杯目からホッピーではじめています。

皆さんにならって、私もホッピー(黒)セットでスタートしました。

黒ホッピーで乾杯!

品書き

飲み物

ホッピーセットは、ベースの焼酎甲類の違いで2パターンあります。大手メーカー系の甲類ベースで、白・黒:440円。金宮のホッピーセットは白・黒:490円。

樽生ビールはサントリー ザ・モルツ:420円。ホッピーの次に人気はハイボールのようです。角ハイボール:320円、川崎ハイボール(角濃いめ):450円、バーハイジムビーム):320円、酸ハイボール(クエン酸入り):350円。

日本酒は沢の鶴大鳳:300円、チューハイ:310円など。

日替わりメニュー

お刺身の多くは日替わりです。市場で仕入れる刺身を、駅前立地の個人店とは思えない低価格で食べさせてくれます。

取材時は、立ち飲みでまさかの金目鯛刺身:320円、活〆平目刺身:280円、天然スマガツオ刺身:280円、天然イサキ刺身:270円。

写真付きのおすすめメニュー

料理は手元のメニュー以外にもありますが、まずはコレ!というように紹介されているおすすめ料理の数々。名物のきつね煮:180円を筆頭に、小エビと小柱とあさりの玉子煮:320円、アジフライ:250円、スタミナ豆腐:230円、まぐろ納豆:250円、生イカ松前漬け:230円など。このメニューも季節で差し替わります。

定番メニュー

きつね煮と並ぶ名物は肉どうふ:350円、冬季限定では湯豆腐(トロロ昆布のせ):180円も人気の様子。

安くて美味しい、賑やかなのに心地いい!

酒場は値段はもちろん大事ですが、それ以上に店の雰囲気というのが大切だと思います。騒がしすぎたり、飲む雰囲気ではなかったりすると、飲食店で飲む楽しみも半減です。

それが、元祖立ち飲み屋は、雰囲気よし、料理よし、値段もよしと、全ベクトルでとても良いのです。長年通うお父さんたちの気持ちがよくわかります。

天然スマガツオ刺身(280円)

お刺身は厚切り。これで200円台は素晴らしい!鮮度がよく、盛り付けも丁寧。しかも〆ヒラメや、首都圏では珍しいスマガツオなど、刺身のセンスがとても良いではありませんか。

肉豆腐(350円)

売り切れ御免の人気料理、肉豆腐。牛スジと豆腐を甘いすき焼き風の味で煮込んだもの。見た目からくる期待を裏切らない、クセになる美味しさです。

きつね煮(180円)

肉豆腐と並ぶ、2大煮込みメニュー。どちらも煮込み系だからと片方だけを選びがち。ですが、もし売り切れていなければ両方注文することをおすすめします。

ただ油揚げを煮込んだものではありません。大きな巾着の中はたっぷりの牛スジと、玉子、玉ねぎが詰まっています。肉どうふと味付けが違うのもこだわりでしょう。

ナカおかわり(160円)

追加のナカが多いお店です。ホッピー1本におかわり焼酎1杯で、楽しく、心地よくほろ酔いになります。

バーハイ(320円)

サントリーの強炭酸サーバーが注がれる、パンチの効いたジムビームハイボール。肉どうふなどの酒場メニューにバーボンウイスキーはなぜだかとても良くあいます。

緑茶ハイ(330円)

ここの緑茶ハイはほどよく濁ったタイプ。爽快な味で、口の中をリセット。

ポテトサラダ(220円)

酒場のポテトサラダを食べ比べている方ならば、この盛り付けにきっと惹かれるはず。刻んだたくわんがごろごろと入っていて、歯ごたえと味覚にメリハリをつけています。追加のマヨネーズや黒胡椒に引っ張られるようにお酒も進みます。

元祖立ち飲み屋は、入れたらラッキーと覗いてみる価値ある一軒

飲み慣れたベテランのお客さんを引きつける理由がよくわかりました。ホッピーやハイボール片手に、名物の煮込み系や旬の刺身で一寸一杯、きっと楽しい時間になるはずです。

混んでいて入れなかったら、隣の立ち呑み酒場「フルミチ」で時間調整はいかがでしょう。2011年にオープンした元祖立ち飲み屋の系列店です。大将の話では、元祖立ち飲み屋が常連さん率が高いのに対し、こちらは「若い人がグループでも利用しやすい店かな」とのこと。

川崎駅周辺の繁華街・飲み屋街は、地方の県庁所在地都市ひとつ分くらいの規模があります。多摩川や鶴見川を隔てただけなのに、隣の東京・蒲田や横浜・鶴見とも違った雰囲気なのがまたいいですね!

酒場を目的にした、電車でいく小さな旅はいかがですか。

ごちそうさま。

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

店名元祖立ち飲み屋
住所神奈川県川崎市川崎区駅前本町15-5 十五番館1F
営業時間営業時間
[月~土]
15:00~20:30(L.O.20:00)
定休日
日曜日
開業年1970年