【特集】東京居酒屋年表 老舗20軒 1850年~1950年

【特集】東京居酒屋年表 老舗20軒 1850年~1950年

2020年11月21日

東京は歴史ある居酒屋が多く残っています。老舗の飲食店の数は世界でもトップクラス。今回は、東京都内にある老舗の居酒屋から、1850年代から1950年代までに登場し、現存する名店20軒をご紹介します。

銅壺のお燗酒、江戸の味付けを今に伝える煮魚、戦後の名残をいまに伝える店など、どれもこれから先、ずっと続いてほしい居酒屋揃いです。

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目次

1850年

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鶯谷「鍵屋」 1856年創業、名実ともに東京の銘店

根岸の鍵屋の創業は1856年(安政3年)。創業時は酒屋の角で飲ませる、今で言う「角打ち」として始まった歴史ある一軒。江戸時代からつかっていた店舗は現在、江戸東京たてもの園で保存されており、今の店舗は昭和49年以降からのもの。とはいえ、大正元年築の日本家屋であり、こちらも建物だけでも十分に訪ねる価値があります。

女性おひりと様は入れませんので、男性とご一緒にどうぞ。

おすすめは櫻正宗のぬる燗、そして煮奴です。

1880年

町田「柿島屋」 桜肉の銘店は、歴史とこだわりが味の秘訣

町田で最も古くから続く飲食店「柿島屋」は、1884年(明治17年)の創業です。柿島屋は、浜街道・神奈川往還(現在の町田街道に近い)で活躍した荷馬車の馬を扱い、料理として提供したのが原点です。

創業時から続く変わらないメニューの肉皿(550円)や肉そば(550円)、馬肉屋の定番、馬刺しなど、料理の8割以上が馬肉を使った料理です。

1900年

神田「みますや」 今年で115歳、時代変われど酒場変わらず

1905年創業、東京の居酒屋の老舗として有名な「みますや」。関東大震災後に建てられた銅張り建築の建物です。

お店は時代とともに拡張をしてきたので、外観とくらべて店内は奥行きも幅も広い。新たに増えたところは違った作りになっているので、座る場所によっても雰囲気が異なります。

看板料理はどじょうですが、私のイチオシは煮穴子。東京らしい味付けです。

茅場町「鳥徳」 明治創業、ベテラン証券マンのオアシスで鳥ナベを。

1900年頃(明治30年代)創業、茅場町鈴らん通りでいつも賑やかな鶏と鰻の店といえば「鳥徳」。明治期創業、100年以上続く老舗です。現在の建物も半世紀以上使われているもの。

先代の3代目が考案したという鳥ナベ(950円)は、店を代表する料理のひとつ。茅場町を代表する一軒です。

1910年

浅草「赤垣」 酒夏酒冬、季節の肴で高清水の樽酒を飲む

1917年創業、浅草の赤垣。老舗酒場が多く残る下町でも、百年続く店はそう多くはありません。現在は3代目が暖簾を守ります。旬の魚介類を中心に大衆酒場のスタンダードな料理が揃っています。お刺身はカンパチ、くじら、しめ鯖、まぐろなど。最近は少なくなりました「樽酒」が飲めるお店です。

1920年

浅草「ナカジマ」 観音裏の酒場に歴史あり。大正創業の名店は気軽な一軒。

歴史ある街には名酒場あり。千束通りに店を構える「お酒とお食事処ナカジマ」は1921年創業にのれんを掲げた由緒ある飲み屋です。現在のれんを守るのは三代目。上モノ・鮮度自慢の海鮮をメインに、酒場や食堂メニューでもてなしてくれます。

名物は上まぐろ中落ち。貝さし盛り合わせなど、お刺身がどれも絶品です。

東日本橋「江戸政」 1924年創業、継ぎ足し続けたタレと絶品タタキ

「江戸政」は1924年の創業。初代が屋台からはじめたお店は、いまも立ち飲みの屋台形式で続いています。名物の「生タタキ」。これを目的に通うファンは多い。平日の17時から2時間程度しか入るチャンスがない「江戸政」。タイミングが難しいですが一度は訪ねてほしい一軒です。

森下「山利喜」 東京の老舗はこういう進化もまた魅力です

創業は1925年で、一世紀近く続く暖簾「山利喜」。現在の店舗は2009年に建てられたもので、地上5階建ての建物です。名物はやっぱり煮込み。ガーリックトーストを合わせて食べるのが山利喜流です。

典型的な老舗酒場とは趣が異なりますが、こういう変化、いえ、進化したお店も東京で長く続く店らしさのひとつだと考えます。

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南千住「遠州屋本店 高尾」 大正15年創業、山谷最古の名酒場

1926年(大正15年)創業、山谷で現存する最古の酒場、遠州屋本店高尾。どっしりとした風格ある店構え。老舗の大衆割烹らしい素晴らしい歴史を感じるカウンター・小上がりが広がります。厨房は広く、調理の様子がみえるいわゆる割烹スタイル。若旦那さんが老舗ののれんを守ります。

お刺身の種類も多く、そして仕事がとても丁寧です。

十条「斎藤酒場」 それはまるで銭湯のよう。一度浸ると忘れられない良さ

1928年(昭和3年)創業の斎藤酒場。高い天井に開けた空間が銭湯のよう。切り株からつくった原木のテーブルが特長的。90年以上ビールはずっと赤星。

家族経営で女将さんの優しい接客もお店の魅力。お通しはかならず落花生。おつまみは300円前後と大変良心価格。お刺身、ポテトサラダなどが定番で、イチオシは串カツです。

1930年

入谷「三富」1930年創業、桜肉を楽しむ大衆割烹。世代を超えて人気の一軒。

入谷の「三富」という馬肉料理を看板に掲げる大衆割烹がおすすめです。創業は1930年(昭和5年)。かなり厚切りにしたフレッシュな馬肉と、しっかり固く味の濃い豆腐や春菊、白菜、ネギなど具だくさんの桜鍋(1,700円~)などが名物。

築地「はなふさ」 これぞ路地裏の名酒場。市場より歴史ある築地の老舗

創業は1931年(昭和6年)。築地市場がこの地に解説されたのは、それから4年後の1935年(昭和10年)なのですから、その歴史は市場より長いです。きっと、創業当初は築地市場の建設に携わる人達で賑わったのでしょう。

仲買さんや魚を扱う人たちの息抜きの場として、今日も変わらず暖簾を掲げます。名物はもちろん豊洲にはいる魚介類の刺身や焼魚、煮魚です。

自由が丘「金田」 そこに80年の歴史がある。名門酒学校の景色に染まる。

1936年(昭和11年)創業、東京を代表する酒場のひとつ、自由が丘「金田」。そこはお酒飲みの先輩たちに「金田酒学校」と呼ばれ親しまれてきた場所。単なる居酒屋の域を越え、80年の歴史と今を結ぶ名勝です。

毎日書き変わる品書き。お造り、蒸し物、煮物に焼き物と並ぶ顔ぶれは割烹や料理屋です。料理長は京都の懐石料理で修行した人といえば納得でしょう。

神楽坂「伊勢藤」 江戸を想像して白鷹に酔う

昭和11(1936)年に創業。初代の建物は戦火の被害を受け、1948年に現在の建物になりました。お酒は白鷹のみ、ビールもありません。

囲炉裏でつけた白鷹の燗酒は絶品です。冬の季節、昔ながらの日本家屋で静かなひとときを過ごしながらちびりと飲むお酒がたまらなく心地よいものです。空調がないのも、また良いものです。

1940年

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大塚「江戸一」 大人が本当の大人になる飲み屋

1946年(昭和21年)創業、大塚で日本酒のお燗を飲むならば「江戸一」。コの字のカウンターで、じっくりと日本酒と向き合いましょう。

樽酒の白鷹、そして大変貴重な褒紋正宗を飲むことができます。その他にも銀嶺立山など全国の地酒もありまして、お燗番の女将に湯煎でお燗をつけてもらって味わいます。

おつまみは焼き魚のメニューから「鮭」がおすすめ。

人形町「カミヤ本店」 5本縛りもなんのその。鮮度抜群の豚モツは絶品です

カミヤは1940年代(昭和21年頃)に創業し、本店は人形町にあります。

創業70年の老舗でも、気取らず変わらず、毎日を刻むカミヤ本店。鮮度自慢のもつ焼きと、美味しいビールや下町の甲類系ドリンクで、今日の疲れを癒やします。明日への活力をカミヤでチャージするのは、戦後も現代もかわりません。

渋谷「森本」 1948年(昭和23年)創業、渋谷の焼鳥を語る上で外せない存在

道玄坂に看板を掲げる焼鳥「森本」も、そんな屋台から始まった一軒です。渋谷の焼鳥屋には鰻をだすところが多いです。童謡「春の小川」で知られる渋谷川では、かつて鰻がとれたから、など聞きます。※諸説あります。

その歴史を今に伝え、70年前の渋谷に思いを馳せながら「くりから」のカタチをした、鰻太巻き(1,333円)をつまみにするのも森本の楽しみ方です。

1950年

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十条「田や」 演劇場通りで昭和28年から創業している名酒場

十条には昭和26年に開館した大衆演劇専門の「篠原演芸場」があります。「田や」は演劇場のオープンから2年後の昭和28年創業したお店。

冬場はきりたんぽ鍋が人気で、テレビ番組などでも取り上げられていますが、鯖の燻製などちょっとしたお酒のつまみをとって、夏の夕暮れにゆーっくりと空間に浸るというのもよいものです。

秋葉原「赤津加」 変わりゆく街並で、変わらない価値がある

東京・秋葉原にある1954年(昭和29年)創業の大衆割烹「赤津加」。秋葉原の真ん中で飲んでいるとは想像もつかない、昭和の風情がそのまま閉じ込められています。

赤津加で何を食べるかというときに、やはりもつ煮込み(820円)は外せません。長年愛される名物料理で、主に鶏皮で、所々に背肝が入っています。

東京の名酒場のひとつ。久しぶりに一献どうですか。

浅草「志婦や」 魚屋から始まった居酒屋。軽く一杯、刺身と焼き魚。

1958年(昭和33年)創業の志婦や。もともと魚屋として始まった歴史は、今も魚中心の品書きやなにより魚のレベルの高さに残されています。

家族経営のほっとする雰囲気。燗酒を片手に焼き魚やお刺身をつまむ楽しいひととき。いいものです。

(文/塩見 なゆ 初回掲載2020-11-21)

今後も追加していきます。