毎日毎日、ほんとうに多くの飲み屋をまわっています。趣味ですし、おかげさまで仕事にもなっているのですから、それはもう新規オープンのお店なども巡っているわけですが、どこかで心を落ち着かせい。
キラキラなお酒や珍しいビールもよいのだけれど、もっとずっしり、もっと穏やかに、とにかく大人の飲み方がしたい。そう思うとここへやってきます。
大塚の「江戸一」は、根岸の鍵屋、神楽坂の伊勢藤と同じく、本当の大人になれる飲み屋です。
風格ある佇まい、入ると20席ほどコの字カウンターがあり、これがまた実に雰囲気がいい。大衆酒場のそれとは違い、洗練されているのだけれど風格や歴史の厚みなんて言葉がしっくりきます。
いつもの常連さんが数人、すでに徳利を並べています。
その奥にはお燗器があり、若女将がお燗番をしながら注文をとっています。カウンターの内側から厨房まではきれいな板間で、中で働く方は皆さん靴下です。その足元には、キレイに整理された一升瓶の数々。
高清水、真澄、白鷹、浦霞、菊姫など、長く続く老舗の地酒がずらり。これらの中からお気に入りを飲んでも良いのですが、ここにはもっと特別な銘柄もあります。
いらっしゃいませ。と丁寧にお辞儀をされるエプロン姿の似合う若女将にこちらもペコリ。まずはビールから。
ヱビス黒の小びん、キリンラガーの大びんがあり、まずは黒ビールから。冬場は乾燥しているから、夏ほどではないけれど最初のビールが嬉しい。
さて、今日は何を摘もう。お燗器の上に本日の品書きが並びます。鯛の昆布締め、厚揚げ、あとは今日の焼き魚を聞いてみましょう。
焼き魚のメニューは別にあり、聞くと出してくれます。お、今日は鮭があるのですね。それをもらいましょう。
ここの鮭は絶品なのです。
そしてお酒は、褒紋正宗を。
日本酒好きでも聞いたことがないという方のほうが多そうなこの褒紋正宗。白鷹酒造がつくるお酒ですが、購入することは一般人はもちろん、大手の酒販店、料飲店でも困難。八咫鏡(ヤタノカガミ)をラベルに描き、それの使用には伊勢神宮からの特別な許可を得ているといいます。とにかく選びぬかれた料亭などでしか現れない、幻のお酒です。これを味わえるお店は少なく、ここ江戸一がそのなかの貴重な一軒なのです。ここでぜひ味わって欲しいお酒。
日本盛の超特選「惣花」もこちらにあります。皇室御用酒、生産量が極わずかで販売店も絞られている特別なお酒。昭和初期までは一般には流通せずに天皇家専用だったそうで、いまも宮中晩餐会では惣花が使われているとのこと。
この2つの特別なお酒を、飲み屋価格で楽しめる。お燗がピシャッときまった若女将のお燗酒を一口味わうと、深く頷いて「美味しい」と心の奥でつぶやいてしまいます。
お燗酒がお好きならば、ぜひ。混んでいる時間もありますが、早め・遅めならば良いと思います。
ごちそうさま。
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(取材・文・撮影/なゆ)
江戸一
03-3945-3032(予約不可)
東京都豊島区南大塚2-45-4 三栄ビル 1F
17:00~22:00(日月祝定休)
予算3,000円