[列車で飲みたい] ミュンヘン~プラハ ビール2大産地を結ぶ国際急行

[列車で飲みたい] ミュンヘン~プラハ ビール2大産地を結ぶ国際急行

2020年6月10日

お酒を飲みに海外へ行きたい気持ちが日に日に高まるなか、少しでも旅情気分を味わおうと筆(キーボード)を執りました。今日の旅は、世界有数のビールの名産地、ドイツの「ミュンヘン」から、一人あたり世界で最もビールを飲むチェコの首都「プラハ」を目指します。

近年は環境負荷が少ないことで見直されてきている鉄道。ヨーロッパは国境を越えて走る数多の国際列車が走り、列車の旅も楽しみのひとつ。とくにドイツは日本同様に鉄道大国。網の目のように敷設された線路の上を多種多様な列車が行き交います。

ミュンヘンからプラハは、所要時間50分の航空機、約5時間で結ぶ高速バス、そして鉄道の3つの手段がありますが、ここはやっぱり「お酒を飲む」という観点から鉄道一択です。

 

ミュンヘン中央駅に併設されたドイツ鉄道系列のホテル「インターシティホテル」で朝食をとりながら、時間を待ちます。ドイツの主要なターミナル駅にあるインターシティホテルは滞在期間中、市内の鉄道やバスの一日乗車券を無料でサービスしてくれることもあり、おすすめです。

 

果物を食べながら、前夜の飲みすぎを癒やしています。実は取材は、ミュンヘンで開催される世界最大のアルコール飲料の祭典「オクトーバーフェスト」にあわせたもの。

ヨーロッパ中、いえ、世界中から集まった600万人が、なんと700万Lものビールをたいらげるイベント。勢いにまかせて、取材もそっちのけでたくさん飲みました。

 

ビールのおまつりなのに、メリーゴーランドやフリーフォール、観覧車まで登場しています。数日間のイベントなのに、巨大ビアホールたちも含め、まるで巨大テーマパークのような規模です。

 

ミュンヘンの中心。市庁舎前のマリエン広場。広場中央にある金色のマリア像は、都市が戦争、天災、疫病に克服してきた象徴とされています。また、ミュンヘンに行ける日がどうか来ますように。

 

さて、ミュンヘン中央駅に戻ってきました。実はこの駅、東京や大宮にも負けないほど、駅ナカが充実しています。

 

駅舎内に広がるマーケットでは、本格的なグリル料理や鉄板料理、スープなどを販売する軽食店がずらりと並んでいます。有名なチェーン店もありますが、プロイセン料理も多く、いずれもレストランよりもだいぶリーズナブルなこともあり魅力的です。

 

ドイツといえば、やっぱりソーセージとビールでしょう。ドイツらしい白いパンに挟んだ簡単なウインナーサンドですが、焼き立て熱々、”パリっ、じゅわっ”とした食感と香辛料が心地よい肉汁がビールを誘います。ドラフトビールから、缶ビール、瓶ビール、ビールならばなんでもあり。お水よりビールのほうが安いです。

 

1日約35万人が利用するという巨大ターミナル。

 

櫛形ホームに、次々と赤と白のツートンカラーをまとった列車がやってきます。DBことドイツ鉄道のコーポレートカラーは赤。みんな丸っこくてどこか可愛らしい外見です。

 

列車の発着を知らせる巨大案内板。ヨーロッパの鉄道は列車が発着するホームが、発車時刻直前まで決まらないことが多く、長距離列車に乗車するみんなが見上げています。

 

近隣の地方都市やフランクフルトなどドイツ中部の都市へ向かう列車を案内する表示。乗車する8時43分発のプラハ行きの表示もでました。国境を越えた先の街の名前が表示されるのはいかにもヨーロッパという印象を受けます。

 

入ってきた水色の列車がプラハ行き。ドイツ鉄道系列の別会社「ALEX」が運行しているので車体の色が違うそうですが、ドイツ鉄道のきっぷやユーレイルパスでも利用可能。

 

赤、白の列車ばかりのなかだと目立ちますね。

 

ミュンヘン-プラハ。売店でおつまみとビールを買い集め、さぁ、準備は整いました。

 

軽い衝撃とともに7分遅れで動き出した列車。順調に速度を上げていき、車窓は市街から郊外へと移り変わっていきます。

 

映画「ハリーポッター」のホグワーツ魔法魔術学校行きの汽車のシーンでもお馴染み、ヨーロッパの鉄道ならではのコンパートメント。最初は知らない人と個室にいるのは気まずいかも…と思っていましたが、5時間も乗っていると次第に”道中の仲”のような安心感が芽生えてくるから不思議。

 

ビットブルガー プレミアム ピルスナー(Bitburger Premium Pilsner Beer)。ドイツで最もポピュラーなピルスナービールのひとつです。度数4.6%、軽い飲み心地と、お水より安い値段もあって、いいピッチで空になります。車内にはワゴン販売があり、ビールの追加購入が可能。安心です。

 

1等車はコンパートメント。そしてこちら、2等車は一般的なつくりでした。こうして見比べると、コンパートメントの静寂感も良く思えてきます。

 

列車はドイツ鉄道の幹線の駅をいくつか停車し、機関車を付け替えたら、ぐんぐんと峠を登りはじめました。1本だけの線路がひたすら続く森の中、このあたりがドイツとチェコの国境線でしょうか。

 

シェンゲン協定でパスポートのチェックはありませんし、国境らしい国境はいまはほとんど見られないというヨーロッパ。

 

列車で国を跨ぐという日本では体感できない瞬間ですがよくわからず…、ビール片手にほろ酔いで乗っていれば、気づけばもう、ピルスナーの故郷、ピルゼン。国の違いを感じることと言えば、機関車がドイツ鉄道からチェコ鉄道に変わったくらいでしょうか。車内販売はチェコの通貨「コルナ」も「ユーロ」も使えますから。

 

ピルゼンを出発すると、時速140キロほどの俊足で平原や林を駆け抜け、中央ボヘミアへ。速度を落とすと車窓には石造りの建物が見え始めます。ヤードを抜けた先、1901年、ヴルタヴァ川(モルダウ川)に架橋された古いヴィシェフラド鉄道橋をそろそろと渡り、急カーブを抜けるとプラハ本駅です。

伝統的なヨーロッパの駅らしいアーチの巨大屋根が美しい…。見上げたらビールが飲みたくなってきます。

 

ドヴォルザーク、スメタナなど著名な作曲家を生んだプラハ。いくつもの駅に置かれたピアノは誰でも利用でき、プロのような演奏が聞こえてきます。即興演奏で、通りがかりのバイオリニストが加わるような光景が異国情緒を掻き立てます。そして、駅前の至るところにある、パラソルを張っただけの簡易キオスクで売られるドラフトビールも、プラハらしさ。

 

ヴルタヴァ川にかかるカレル橋は1402年に完成したもの。欄干にはカトリック教の守護聖人の彫像が並びます。

 

バロック建築、ゴシック建築が入り交じるプラハ旧市街。中世にタイムスリップした気分です。

 

ピルスナー・ウルケル。1842年につくられた世界初のピルスナービール。タイムスリップしすぎると、ウルケル誕生以前になってしまいますので、現実に戻って美味しい一杯を。

ビールの二大産地を結ぶ国際急行列車の旅。最後は、プラハの小さなビアホールで乾杯です。

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

 

DB | ドイツ鉄道
https://www.deutschebahn.com/

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