「今年も素敵なホップがみのりました!」ビールの里・遠野でホップ収穫祭

「今年も素敵なホップがみのりました!」ビールの里・遠野でホップ収穫祭

2019年9月6日

皆さんご存知の通り、ビールの主原料はホップと麦。このうち、ホップは日本国内でも収穫されていることをご存知でしょうか。主に北日本を中心に栽培されているホップは、国内の大手ビールメーカーだけでなく地元のクラフトビールメーカーでも使用されています。

収穫の季節は、9月前後。建物の二階ほどの高さまでつるを伸ばしたホップを、農家の皆さんが次々と収穫していきます。

 

国内にはいくつかホップの名産地がありまして、そのひとつが岩手県・遠野市です。

遠野のホップの歴史は55年以上と長く、Syupoをご覧の皆さんもきっと一度は遠野産ホップを使用したビールを飲んでいるはずです。昨今はクラフトビール人気もあり、ますます国内産ホップのニーズは増していますが、残念ながら国産ホップの生産量は、過去10年で半分にまで減少しています。

今後も美味しいビールを楽しむために、国産ホップの魅力をますますお伝えしたい!そんな想いから、今年もキリンビールさんのご協力の下、岩手・遠野へホップ収穫の様子や遠野市の魅力を取材してまいりました。

 

遠野市では、毎年8月末に遠野ホップの実りを祝う「遠野ホップ収穫祭」を開催。2019年は年8月24日(土)・25日(日)に開かれました。今年で5回目となる同イベントは、来場者数が去年の1.6倍、12,000人になるほどの大盛況。地元の方やボランティアの皆さん、そして遠野ホップを主に使用しているキリンビール及びキリンループ各社の皆さんによって、今年も東北最大級のビールの祭典は大いに盛り上がりました。

 

昨年にもまして増床されたテントも、初日の午前中から満席になるほどの賑わい。最寄り駅・遠野へ直通するJR釜石線の臨時快速列車も走るなど、この日は岩手県全体が遠野のビールに注目しました。

 

開幕に際し、地元の皆さんによる太鼓の演奏や、かけつけた遠野市長や生産者の皆さんで、盛大なスタートとなりました。

 

イベントにあわせ、地元の岩手県立遠野緑峰高等学校の皆さんが、同日早朝、カゴいっぱいにホップを収穫。

 

このホップを生徒さんから醸造家の皆さんに手渡すホップリレーが行われ、地元メディアやイベントに参加されている多くのビールファンのファインダーが向けられました。

 

遠野ホップのそのほとんどを買い付けるキリンビールからは、キリンビール仙台工場の醸造担当者が出席。10月末に全国で発売される「とれたてホップ一番搾り」(通称:とれいち / TI)の担当者が挨拶をされました。いま、この記事を書いている瞬間、きっと仙台では”とれいち”の仕込みの真っ最中でしょう。

 

原料であるホップ生産者と、醸造家、そして駆けつけた大勢のビールファンは、波長が同調したような一体感に。さぁ、乾杯です!

 

その後もステージでは様々な催しが開かれ、”サンプラザ中野くん&パッパラー河合”のステージは、ものすごい熱量に!

 

メインのテント周辺には、地元の飲食店ブースや、ビール会社の販売コーナーが儲けられ、こちらも大変な賑わいになりました。キリンビールでは、トラックの荷台そのものがビールサーバーになった「ドラフトカー」が出動し、全国から参加した同社社員の皆さんがビールを販売されました。

 

おつのみは、主に地元の飲食店がお店がイベントに合わせて軽食を持ち寄り販売されました。地元の食材を使用したものを中心に、ビールのおつまみとして日本でも定番化しつつあるパドロン(写真左)などが並びました。

 

遠野には遠野麦酒と遠野醸造、ふたつのブルワリーがあります。こちらは遠野醸造のブースです。会場近くのレストランブルワリーで製造されたできたてのビールが並びます。

 

会場限定の山椒ホワイトや、フレッシュホップIPA、ペールエール、ESB、スタウトの合計5種類。テントの前は、地元のビールやここでしか飲めない味を求めて多くのビールファンが列を作りました。

 

遠野麦酒からは6種類。地元遠野産ホップ「IBUKI」を使用した収穫祭限定の「IBUKI IPA」は特に人気だったようです。

 

使用しているビールカップは、二杯目以降もリユースをして、使い捨てをせずに環境配慮。毎年カップのデザインが変わるので、イベント後は持ち帰っていい記念になりそうです。

 

こちらは、珍しいホップをベースにした「ホップシロップ」です。イギリスの伝統的なハーブドリンク「ハーブコーディアル」のようなアロマドリンクとして楽しむもよし、樽詰サワーに合わせたり、甲類焼酎と炭酸水、そして風味づけに数滴垂らすのも美味しそうです。会場では、ホップシロップの酎ハイが販売されていました。遠野道の駅「遠野風の丘」や全国のキリンビール工場ショップで販売中とのこと。

 

こちらは、ビール注ぎ達人ビールが飲めるお店として知られる中野レンガ坂通りにある「麦酒大学」ブース。

 

注ぎ方によって変化するビールの味わいを体験できます。専用のヘッドを装着したディスペンサーを用いて、様々注ぎ分けを実演されました。

 

麦酒大学の学長こと、店主の山本さんが注いだ抜群に美味しい樽生一番搾り。さすがビールのイベント。個性豊かな銘柄や注ぎ方が揃っていて、ビール好きならばきっと大満足に違いありません。野球観戦でお馴染みのビールサーバーを背負ったスタッフの方の姿もありました。

 

適正飲酒でしっかり楽しませていただきました。今年も取材そっちのけで飲んでいただけ…なんてね(笑)

 

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遠野の魅力はビールだけじゃない。どぶろくに、カッパに、ふる里の景色に

ホップの里、ビールの町として盛り上がる遠野ですが、他にも歴史文化に食事やお酒、様々な個性的な見どころ・飲みどころがたくさんあります。

まずは、ノンベエとしてはやっぱり注目は「遠野どぶろく特区」です。自家醸造どぶろくで宿泊者を楽しませてくれる民宿や、様々などぶろくを揃えた酒販店があります。

 

遠野駅からほど近い場所にある「アサクラ酒店」は、品数を豊富に揃えた立派な酒販店です。どぶろくを始め、地元の日本酒が並びます。

 

店内に飲酒コーナーはありませんが、自然いっぱいの遠野。お酒を購入したら市内を流れる早瀬川の川岸で飲むもよし、JR釜石線の車内の「飲み鉄」を楽しむもよし。

 

遠野産ホップを使用したホップ焼酎毬子(まりこ)。テイスティングをさせていただきましたが、クラフトビールで感じるあの爽やかなホップの風味と同じ印象のすっきりとした焼酎です。

 

遠野中心街から路線バスで15分ほど。遠野遺産「カッパ淵」は、遠野の町を代表する観光スポットのひとつ。

 

日中でも薄暗い林の中、小川が流れていて、奥には小さな祠があります。

 

民話・昔話の伝承が残る遠野は、昔からカッパが住み、人々を驚かせいたずらをしてきたと言われています。お供えはもちろんカッパの好物・きゅうり。カッパ釣りの竿の先にもきゅうりがぶら下げられています。

 

日本の山里の風景は、生まれ育った場所でなくともどこか懐かしさを感じます。遠野には、そんな昔の日本の風景が変わらずに存在しています。

 

遠野ふるさと館では、そんな遠野の昔からの暮らしを体験することができます。詳しくは公式サイトをご覧ください。

 

ビジターセンターに併設されたレストランでは、ビールはもちろん、遠野のどぶろくに、バケツの中で火をおこしてつくる野外ジンギスカン(冬季おやすみ)や、寒い季節は郷土料理ひっつみ汁などが楽しめます。

少し足を伸ばせば、めがね橋こと、JR釜石線宮守川橋梁をみることも可能です。宮沢賢治の童話「銀河鉄道の夜」のモチーフとなったと言われる場所で、天高く敷かれた鉄道橋の上を列車が走る様子が、宮沢賢治には銀河を旅する列車のように見えたのでしょうね。観光シーズンには夜間ライトアップもされます。

 

遠野は明治創業の割烹(大衆酒場)やじんぎすかん、山間部でも三陸の美味しい魚介類が楽しめる寿司店など、食の魅力も多き場所。ぜひ遠野の町を訪ねてみてはいかがでしょう。8月から9月は町中でホップの収穫が行われ、爽やかな香りに包まれています。

産地を知ると、お酒はもっともっと美味しくなります。

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ 取材協力/キリンビール株式会社)

 

参考リンク
キリンビール 遠野産ホップとまちづくり
https://www.kirin.co.jp/csv/connection/hop/japanhop/tono/

遠野ビアツーリズム
https://www.beerexperience.jp

遠野観光協会 遠野時間
https://tonojikan.jp/