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おなじみ東京発のビールメーカー系ビヤホール「サッポロライオン」。銀座百点にも加わる銀座ライオンビヤホール(銀座7丁目)は、ビールがまだハイカラな飲み物だった時代に、西洋文化を取り入れた銀座らしい一軒として、街の歴史に名を刻んでいます。
ほかにも銀座コリドー街が1号店となる「ヱビスバー」や、全国のサッポロビールの工場に併設させた「サッポロビール園」などを展開しています。
同社のカジュアル業態として2014年に立ち上がった新ブランドが「ビヤケラー」。当時、比較的ベテランの方にファンが多かったライオンブランドを前面に出さず、30代前後をターゲットにした(当時のニュースリリースより)カジュアルなビヤホールとして誕生しました。
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ディキシーランドジャズなどが流れる店内、ときにはスポーツ観戦のパブリックビューイング的な利用もされてきました。また、近年ではビール「SORACHI1984」のコンセプトショップとして、ここでしか飲めない「ソラチ飲み比べ」なども楽しめました。
そんなビヤケラー東京ですが、昨今の状況のなか、2020年10月23日(金)に閉店します。
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2019年、まだ翌年がこのような状況になることを誰一人予想していなかったときに、同店では、サッポロライオン120周年記念イベントが開催されました。今回の記事は、2019年8月3日に開催されたイベントの様子をお届けしながら、ビヤケラー東京の雰囲気をここに残したいと思います。
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ライオンはチェーン店の元祖であり、日本初の常設型ビヤホールです。外食・外飲みの歴史を語る上では外せない企業です。
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イベントではサッポロライオンの歴史や、豆知識などを「ココだけの話」を含め、トークショー形式で披露されました。7丁目ライオンはスライドの写真のように工場からタンクで直送しています。
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ライオンのビールはちょっぴり割高。それでも、やっぱり飲みに通いたくなる美味しさです。ビールは特別なものではなく、家庭や街の飲食店で飲むものと同じビール。味の違いは、伝統のライオン式の注ぎ方にあります。
通常のタップは手前が液、奥に押すと泡がでますが、ライオンは手前にしかでません。しかも流速はかなり早いのです。
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これを上手く注ぐのはプロの技。イベントの目玉は、そんなライオンの一度注ぎ体験でした。
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今日だけは、普段は本社や新人教育などをしているライオンのベテランさんが勢揃い。金口グラスでもジョッキでも、まずは軽く斜めに持って縁と底の境界に斜めにビールが当たるように注ぎはじめ、次第に渦を巻くようにグラスの角度を操り、泡を仕上げていきます。
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お話をイメージトレーニングするなかでは出来そうなのですが、やってみるとこれが非常に難しいです。普段、注がれたビールをみて「美しい!」や「バランスがいい!」と言っているばかりですが、改めてプロの技に感動します。
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自分で注いだ(本当に注ぎました)ビールは、格別。それでは乾杯!(うぉー)
※ライオン公式の乾杯の音頭は「うぉー」
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黒ラベル、琥珀ヱビス、ヱビスプレミアムブラック、飲み比べやそれぞれに会う料理のマリアージュを体験。講師役はライオンの総料理長です。
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色をあわせる(重い色のビールには重い色の肉系など)のが一般的。ワインと同じですね。
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ジャテツ(ザーツ)地方(チェコのプラハから北西150キロメートル)でつくられたホップを通常のサッポロ系ビールの3倍使用した、ぴしっとした苦味と奥行きある旨さが心地いい「エーデルピルス」。スフレ泡と呼んでいるモコモコの泡がメーカー推奨の注ぎ方です。これを実際に作る体験もありました。上手に注げた泡からは、苦味だけでなく甘さを感じます。
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天井が高く開放感がある店舗だったビヤケラー東京。今日が最終営業日です。
ビヤケラーはもう1店舗あり、北海道・札幌にあるビヤケラー札幌開拓使 サッポロファクトリー店。楽しい店舗がなくなることは寂しいですが、きっと世界が落ち着いたときには次なる個性的なビヤホールを登場させてくれるものと願っております。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
ビアホール ビヤケラー東京 新橋銀座口店
17:00~21:00
東京都港区新橋2-19-10 新橋マリンビル B1F
84坪・席数128席