横浜繋がりで実現したキリン✕京急「ビール電車」の裏側[前編]

横浜繋がりで実現したキリン✕京急「ビール電車」の裏側[前編]

2016年10月15日

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日本に初めてビール醸造所がつくられた地はどこでしょうか。

正解は横浜です。明治3年に、アメリカ人のウィリアム コープランドが横浜・山手にスプリングバレー・ブルワリーを開き、日本の地で初めてのビール醸造と販売が開始されました。これがジャパンブルワーを経てのちのキリンビールとなります。関東大震災で山手の工場は閉鎖されてしまいましたが、横浜のビール醸造は消えることなく、今から90年前に横浜・生麦で再開されました。

90年間で歴史は大きく動きましたが、麒麟のマークは戦時中を除いて、大きな変化をすることなく、今の今でも、皆さんのご家庭の冷蔵庫で、街の居酒屋や割烹で、この瞬間も途絶えることなく飲まれています。

首都圏で消費される多くは横浜工場で醸造されていますし、キリンビールを含むキリングループ全体のR&D部門も多くが生麦にある、まさに中枢的な存在です。

 

そんな横浜工場の前を走る京急電鉄は、以前工場の前に「キリン」という駅がありました。京急の車窓からも工場がみえますし、沿線にはキリンビールが飲むる老舗名店酒場も多い。筆者も勝手に「梯子酒電車」なんてあだ名をつけているくらい。

飲兵衛が愛用する京急電鉄で、キリンビール横浜工場90周年を記念した「ビール電車」が走るというのだから、これは取材せねばなるまい。飲み鉄子として、ぜひとも電車の中で一番搾りが飲みたい!ということで、金沢検車区での設営段階から密着取材をしてきました。

 

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京急電鉄の金沢文庫駅から徒歩10分ほどの場所にある京急電鉄金沢検車区。今回は特別に取材で入れていただきました。無骨な門をこっそりと抜けていくのはワクワクします。

ほどなくして、当該編成となる京急1500形電車が見えてきました。ちょうど設営を始める瞬間で、乗務員室からは「一番搾り樽詰生」の看板をもった京急電鉄総務部の飯島氏が顔を出されていました。

 

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筆者を含め、キリンビールの社員さんも保護帽を被り万全の体制でいざ車両へ。ゼロ災でいこう、ヨシ!

 

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側面扉が開いているので、ここから資材を次々と積み込んでいきます。

 

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イベント列車の運行中に、途中、工場の最寄り駅である生麦駅からできたての生ビールを積み込む予定ですが、駅の僅かな停車中に積み込める量を考えるとすべては難しいことから、事前に車内にも用意しておきます。15LのISだけかと思ったら、工場限定の珍しいピルスナーもちゃっかり準備されていました。これ、飲みたい!でも我慢!

 

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京急電鉄の社員やキリンビールマーケティングの営業さん、事務方さんたちで、まるで学園祭のような感じで手作りで内装を仕上げていきます。そういえば、キリンビールってイベント会社を使わずに、自分たちでお祭りの準備をすることが多いような気がします。

 

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泉岳寺方の2両がお客さん用のビアホールスペースです。ここの車内は、もともとは営業列車ですので一般の鉄道広告がついているわけですが、今夜のためだけにすべてキリンビールに差し替えです。居酒屋でみかける黄色い一番搾りの提灯も吊革の間にぶら下げられて、なんとも不思議な感じ。

 

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広告の差し替え、提灯の取り付けもみんなキリンと京急の社員さん。結構偉い人も駆り出されています。

 

本当に学園祭のノリ。

 

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ビール電車の運行中はビールの配膳役やビールの継ぎ手になる方々、夜も大変なのに日中から肉体労働、おつかれさまです。でも、美味しいビールを電車で楽しく飲んでもらうためには頑張れるという感じで、皆さん生き生きとされています。

 

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側面の広告も、路線図以外はすべてキリン化完了。終わったら戻さなきゃいけないから、さらに大変。

 

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さらに雰囲気をだすためにタペストリーも取り付けられます。両面テープや結束バンドで「ああでもない、こうでもない、あっ、これでばっちり!」と、普段居酒屋装飾をするキリンの営業マンと、京急の車両を知り尽くした電鉄社員の現場の協業が素敵。

 

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タペストリーも完成!

 

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お客さん用のテーブルを並べていきます。お客さんはロングシートに着席後、テーブルが手前まで寄せられて、電車の椅子なのに居心地のいいビアバーのような感じになります。

 

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ビール電車はキリンも横浜支社や工場、広域販売推進など様々な部署が関わっています。なかには、野球場のビール売りを担当している部門もあり、生ビールの売り歩きにはノウハウや必要なアイテムもある!

珍しい、番重が投入されています。

 

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定時で準備完了!

お客さん用の車両と、生ビールを注ぐ車両の間、普段なら普通の渡り板だけですが、雰囲気がでる大きなキリン一番搾りの暖簾がかけられました。さぁ、あとは横浜駅で乗客の皆さんをのせて、大いに飲んでもらいましょう。

 

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そうそう、忘れてはいけません。キリンビール横浜工場の方と、京急電鉄の方がヘッドマークを取り付けました。”赤い電車”とコーポレートカラーが赤いキリン、色もおそろいです。京急のキャラクター「けいきゅん」が可愛い。

 

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さぁ、あとは出発時刻までしばし待機。設営されたキリンビールと京急電鉄の皆さん、お疲れさまでした!

ビール電車り運転が終わったあとに、美味しいビールを飲みましょう。

 

つづく (後編はビール電車運転中の裏方の様子をご紹介します)

横浜繋がりで実現したキリン✕京急「ビール電車」の裏側[後編]

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ 取材協力/キリンビールマーケティング株式会社)