1月20日・21日と池袋で開催された居酒屋ジャパン2016。そこから見える普段私たちが飲用する機会の多い各社の今年の動きについてご紹介します。飲食店の事業に関わる人向けで一般の方が入れないクローズなイベントですが、日常接しているだけに興味がある方も多いかと思います。飲食店関係者目線ではなく、あくまでユーザー目線で見ていきたいと思います。
※同時開催のミートフードエキスポにも各社ブースを出されていますので、ここでは両展合わせて紹介しています。
まずはビールメーカー各社の動きから。アサヒビールさんのブースは、今年もスーパードライ・エクストラコールドを軸としていますが、フリージングハイボールの新提案もスーパードライ並に紹介されています。数年前からエクストラコールドのノウハウをつかって同社のグループであるニッカのウィスキーハイボールを氷点下まで冷やした商品を投入していますが、引き続き推しといったところ。ディスペンサーが毎年進化しているのも興味深い。
エクストラコールドについてはこの記事を読まれるような飲酒の頻度が高い方にはいまさら語る必要もないとは思いますが、すっきりとしてすいすいと飲める味。フリージングハイボールも同様にくいくいと飲めるのですが、炭酸がしっかり効いているので喉をしっかり刺激してくれる感覚があります。味わえば通常のニッカハイボールですが、冷えプラスぱちぱちとした刺激というのは新しい価値だと思います。
RTSでは「かのか」を今年の推しだそう。フレーバー入でほんのり甘くて飲みやすさの工夫がされた「和みのゆず」と「大人のカシス」の二種類が紹介されています。天然香料のみを使用した自然由来の香りと甘みがポイント。度数は16%。ロックで飲むと丁度いい。ターゲットは20~30代の男女とのこと。ビールや酎ハイで乾杯した後のゆっくりと飲む商品として、日本酒や焼酎などのしっかりとしたものではない場合はこれまでカシスオレンジや梅酒が選ばれていたポジション狙いと思いますが、清涼飲料水の延長でアルコールドリンクを飲み始めた人には、こういう味わいのほうが好まれるのではないかとも感じます。
昨年から導入しているとのことでしたが、まだ実際に飲食店で見かけたことはありません。ここはどうテコ入れされていくのかも注目したいところ。
続いてキリンビールさん。アサヒビールさんや後述のサッポロビールさんが「ビール」という基本軸を維持しているのに対して、キリンビールさんはビールではなくあえて”コンク”を推しています。2014年にRTDで登場した、「氷結」「本搾り」に並ぶ三本目の柱として成長の「ビターズ」の業務用コンクに力を注がれています。
本商品の登場は昨年でしたが、今年はますます力を入れていくとのこと。専用のPOPでは、従来のCMキャラクターとして起用されていた速水もこみさんが業務用にも登場。これまではRTDの飲用シーンのイメージでの展開をしていましたが、業務用には新たに専用のジョッキを持って登場。このジョッキも新規開発で、嬉しい3サイズでの展開。大きなジョッキにたっぷり入ったビターズをすいすいと飲むと気分が盛り上がりますね。
ビターズそのもののコンセプトは変わらず、ビールや新ジャンルを飲用する人の別の選択肢としての酎ハイであるということ。また人工的な甘さやジュース感ではなく、人工的な甘さがなくほろにがさを含めて食事シーンに合わせやすさを軸にしているとのこと。コンクはほろにがレモンライム、ほろにがグレープフルーツ、 スパイシージンジャーの三種類。
飲食店はもちろん、行楽施設など家族で楽しむ場にも広く普及しそうな予感です。
続いてお待たせしましたサッポロビールさん。サッポロビールは年初にリリースされましたマーケティング方針の通り、今年は創業140年の節目であり、ビール強化元年として位置づけています。ビール市場全体が縮小傾向にあるなかで、昨年は同社の主力商品であるサッポロ生ビール黒ラベルが21年ぶりに昨年対比でプラス成長になったこともあり、やはりブースの主力はビールになっています。
ミートフードエキスポ側のブースでは100年プレミアムブランドのヱビスビールを提案。合わせて焼肉ということもあり、昨今は韓国風の昔からの焼肉ではない様々なコンセプトの店舗が増えていく中でニーズがありそうな樽詰めスパークリングのポールスターを提案。ポールスターはチリ産のソーヴィニヨン・ブラン種を原料にしたもので、ほんのりとした甘さが楽しめます。女子会コンセプトで2012年から登場しましたが、根強い人気のもよう。一杯目はスパークリングワインをという人、私のまわりでも多いですし、安定したニーズはありそうです。
続いて居酒屋ジャパン側のコーナー。こちらは同社と業務提携を結んでいるバカルディジャパンさんの看板商品のひとつであるバカルディラムを出展。世界販売量No.1ラムブランドのバカルディラムを使った新定番ハイボールという飲み方を提案しています。焼酎ハイボールやウィスキーハイボールなど、ソーダでビルドした商品は各種あるなかで、ラムを使うとどうなのかというのがポイント。サッポロビールさんは数年前にもバカルディジャパンさんとモヒートの提案をして市場を作り上げたように、ラムハイもブームを引き起こすか楽しみなところ。
作り方はバカルディ1にソーダ4、そしてカットレモンを入れて完成。ガス圧は強いままのほがよいので、軽くステアするたげ。厚みのある味・香りで、コクはあるのですが食事との組み合わせで料理の味を引き立ててくれるものだと思います。
サッポロビールさんというば、ポッカサッポロさんをグループに持つので、シロップを使った展開の提案もありました。気に入ったのはこの沖縄パイナップル。数滴垂らすだけで果実感がしっかりとでて、それでいて甘すぎない。ラムもパイナップルも同じ南国育ち。飲むと陽気な気分になりそう。
同じ沖縄でシークワーサーもやはり美味しい。すっきりとした味で風味に変化があって、肉料理の間の口直しにぴったり。マンゴーで割るような提案もありました。
ポッカサッポロさんのシロップをご紹介しましたので、その他も見てみましょう。今ではすっかり飲食店でお馴染みのポジションとなった男梅サワーのシロップや、サッポロ飲料時代からのおなじみ、緑の玉露入りお茶や先ほど紹介しましたシークワーサーなどが並びます。
ポッカコーポレーション時代からのラインナップも変化が。通常のポッカレモンに加え豊富な業務用ラインナップが。シチリアレモンを使ったものや、特に気に入ったのがプロフェッショナルスクィーズ。シチリアレモンを使っていて、「生レモンを搾った瞬間のようなレモンのおいしさを再現するため、レモンの果皮、パルプ、果汁を搾汁時にブレンドした、香料、保存料無添加のレモン果汁」と同社。
一般的なしぼりたてレモンの果汁と同商品をゼリーにして食べ比べてみたところ、笑ってしまったのが、「こっちが生レモンで、こっちが濃縮還元」と答えたら正解は逆でした。生のレモン果汁より美味しい濃縮還元がでる時代とはすごい。
続いてサントリーさん。サントリーさんはビールではなくハイボールをやはり推しています。居酒屋の方では樽詰めのハイボールタワーを引き続き提案。強炭酸が注げるハイボールということで、ニーズはまだまだあるので提案していくとのこと。そしてミートフードエキスポのほうでは、ワイルドターキーとビーフィーターの営業に力が入っています。
ジンのビーフィーターをトニックウォーターで割ったジントニックは世界中の飲食店で飲まれている定番商品ですが、これを「ジンと肉」というサントリーらしい(?)キャッチフレーズをつけて、なんと専用のディスペンサーまで用意して登場。ジントニックのディスペンサーなんて初めてで驚き。専用のジョッキも用意する気合の入れよう。
おもしろいのがブラックペッパーを最後にふりかけるというレシピ。肉に負けないインパクトのある味になっています。ターゲットはM1M2層とのことですが、これは果たしてどう広まっていくか。わいわいがやがやと飲みたいドリンクですね。数年前にドイツ産のリキュール、イエーガーマイスターを全力を推しているときもありましたが、ニッチなものや違ったシーンで飲まれているのを大衆化するのはとても強い。それにしても、「ジンと肉」ねぇー、サントリーらしいなぁ…まだ言っている(笑)
ターキーだから鳥専用、わかりやすい!男のバーボン、ワイルドハイボールだそう。
こちらも専用の男のバーボン、ワイルドハイボールが印刷された専用のジョッキで登場。黒胡椒入り、山椒入り、七味入りの味のバリエーションも紹介されています。なるほど、焼鳥業態にある香辛料がそのまま使えるということですね。
ワイルドターキーはもちろん飲みますし、焼鳥も大好物ですが、このふたつを組み合わせるとは、これまたあっぱれというか。焼鳥屋で角ハイボールがよく飲まれていますし、これをターキーにして話題をつくりませんか?ということなのかもしれません。
日本ビールさんは変わらず各国や国内の様々なクラフトビールを展開されています。
宝酒造さんも出展されています。宝さんといえば大衆酒場の味方である宝25や、スナックでお馴染みのJAPANなど、甲類が強い。もちろん本格焼酎では一刻者ブランドがありますし日本酒の松竹梅も歴史ある銘柄のひとつ。
そんな中、今年の提案は、レジェンドプレミアムと澪ドライの2種類。
澪は日本酒スパークリングを定着させた立役者ですし、いまも同分野においては圧倒的なシェアを誇っています。澪は引き続き提案を強化したい商品だそう。どっしりと飲む京都伏見の松竹梅に対して、女性にも日本酒にふれる機会を増やして欲しいというところから生まれた澪。ボトルのデザインからしてとても上品で可愛らしいものになっています。これに昨年新商品が追加されました。
「すっきりタイプのスパークリング清酒を求める声も一部のお客様からあり、今回の「澪」<DRY>の発売に至りました」と同社。これまでの澪はとてもフルーティーで果実酒的な風味があり、しっかりと飲酒をする層からすると「甘い」と感じていたこともあったと思います。これをすっきりさせたのが同商品。試飲させていただきましたが、とてもすっきりとしていて、より繊細な味の和食とも合わせやすくなったように思います。
「塩見さんはこっちですね」と、もう名指し狙い撃ち的にお話いただいたのがこの「レジェンドプレミアム」。1988年登場の従来からのレジェンドブランドのプレミアムVerで、今年の1月26日発売のできたてほやほやの新商品。「深い味わいと芳醇な香りに加え、食事に合うすっきりとした飲み口を併せ持ち、爽やかな喉越しが楽しめる」と同社ですが、これはですね、ウィスキーではない、あくまで宝らしい提案の「ウィスキー風甲類」というのが私の感想。
東京の下町で愛されている下町焼酎ハイボールもウィスキー風味を求めて作られた背景もありますし、常にそこには宝酒造さんの姿がありました。それを2016年の現代風に作るとこうなんだ、というのを決め打ちした商品だと感じます。
ソーダで作って、最新の焼酎ハイボールをぜひ味わってみて欲しいです。業務用専用なので飲食店さんがどこに置いてくださるか楽しみ。
最後にキンミヤ焼酎でお馴染みの宮崎本店さん。今年は伊勢志摩サミット2016が開催されるということもあり、三重県の酒造である同社の気合は十分。同社の商品がサミットで飲まれたらおもしろいですね!
さて、今回の提案は変わることなく甲類焼酎のキンミヤ20です。割り方の提案として、従来からの梅エキスをいれたロックと、ジンジャーハイボール、そして伊勢茶割りの3種類が並びます。
梅エキスのロックは、東京の下町の梅割りとは異なり、酸味のある本当に梅の味わいがあるもの。20度をロックにして同社の梅シロップをいれるとだいたい度数は17くらい。甲類のロックというと今までもありましたがあまり馴染みのない商品でもありました。それが、昨今各社がRTSに力を注いでいることから、梅割りロックもRTSに近い15度程度の度数なので、もしかしたら世間がキンミヤさんに追いついたのかも?風味があって、昔風のコンセプトで展開するやきとんや昭和レトロ的な総合居酒屋に向いていそう。
ジンジャーハイボールはソーダでビルドした酎ハイの中にしょうがをいれたもの。比重の違いと炭酸ガスの力でコップ内を舞う生姜が楽しい飲み方です。
「ジンジャーハイボールや伊勢茶割りなどは、ビールテイスト飲料がまだ広まっていない地域でも甲類の楽しい飲み方を広めていきたいという思いから開発した」と同社担当者。下町の名脇役のキンミヤですが、主演をつとめてくれるビールテイスト飲料やサワー類がない地域はまだまだあるので、そういうところでは主役を含めて提案していきたいという考えなのかもしれません。
以上、普段から私たちが飲用機会の多いメーカー各社の2016年の飲食店提案の様子をご紹介してまいりました。各社とも、自社の主力商品ではなく、二番目に選ばれる商品に対して大きな力を注いでいることがわかります。ラムをはじめ、ジンやバーボンなどの洋酒の再提案、RTSもコンクもまだまだ目が離せません。あえてニッチな世界をもってきて広めていこうという姿勢も多く、ますます今年の飲食店での乾杯が楽しみになるところです。
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(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
(取材協力/アサヒビール株式会社/キリンビールマーケティング株式会社/サッポロビール株式会社/サントリー酒類株式会社/宝酒造株式会社/株式会社宮崎本店)