花巻「マルカンビル大食堂」 昭和レトロなデパートの食堂は、空間が肴です。

花巻「マルカンビル大食堂」 昭和レトロなデパートの食堂は、空間が肴です。

奥州街道の宿場町・花巻。現在も北東北へ伸びる交通の大動脈が街の中を通ります。

歴史と交通がある場所によき酒場あり。老舗の名店を尋ねるのも楽しみですが、今日はお昼から飲み始めたいと思います。ここ花巻には奇跡の復活と呼ばれた「マルカンビル大食堂」があり、もちろんお酒を楽しむことができます。

わんこそばもよいですが、まずは街のシンボル食堂で乾杯しましょう。

 

宮沢賢治の故郷というのはあまりにも有名な話。童話「銀河鉄道の夜」のモチーフとなった釜石線は、ここ花巻を起点に遠野・釜石へ伸びています。

 

花巻駅。お土産品を販売する売店で日本酒をすかさず購入。どこか異国の駅にいるような雰囲気が旅情を誘います。

 

駅と中心市街地が離れている花巻。駅前から路線バスで5分ほどです。ちょっとした飲食店街やレクリエーション施設が並ぶ遊歩道があり、歩いていくのも楽しめます。

 

徒歩10分ほど。有名なわんこそばの店の前などを通るので、感覚的にはあっという間です。この交差点に面した大きな建物が「マルカンビル大食堂」です。

2016年まで営業していた花巻を代表する百貨店「マルカンデパート」だった建物。1973年築、地上8階地下1階建て。現在使用しているのは最上階の大食堂と1階などの一部のみ。閉店後、大食堂の復活を望む声が多く、9千人をこえる署名が集まったそうです。

 

いまは大食堂への直行となったエレベーターにのって、6階へ。

そういえば、私もデパートの特別食堂が大好きでした。記憶が曖昧なのですが、たしか荻窪のタウンセブン(杉並区)でお子様ランチを食べていたような。幼少の頃、特別な外食の場所として輝いて見えていたデパートの食堂は、ふるさとの味・思い出の空間です。

 

エレベーターを降りると、そこは昭和のパラダイス。ステンドグラス風の証明飾りやボール状の照明器具、そしてびっしり並ぶ食品サンプルのケース。もうたまりません。

 

お寿司、ラーメン、カレーに洋食となんでもござれ。盛り盛りのパフェ、子供の頃の夢がここにはまだあります。セーラームーングッズはないのですか?(笑)

 

復活の署名活動を始めたのは地元の高校生だったそう。育ち盛りを支えるガッツリメニュー、無事に復活です。

 

「ジュースも飲んで良い?三ツ矢サイダーか、キリンレモンか、リボンシトロンかなぁ。」…

と言っていた私も、いまやすっかりお酒好き。アサヒスーパードライか、キリン一番搾りか、と悩むように。盛岡のサンクトガーレンもあります。樽生はアサヒスーパードライで昔ながらの中ジョッキで580円。ビールを飲む人の姿もちらほらみかけます。地元では大食堂は昼酒・ビアホールのようなポジションでもあるようです。

 

そうそう、この雰囲気!マルカンデパートは来たことはないけれど、昭和生まれには誰しもが見覚えのあるデパートの食堂。壁や床の色から、持ち上げると花開く箸ケースまであの頃のままです。窓からは花巻の中心街を一望できる開放感が嬉しいです。

 

一枚板のカウンターに感動する人ですが、合板に大理石調の化粧板を貼ったテーブルとパイプ椅子も大好き!

 

さて、注文方法ですが、まずは店の入口で店員さんからチケットを購入します。それから好きな席に座ってウェイトレスさん・ウェイターさんにチケットの半券を渡して届けてもらうという流れ。浅草の酒場「神谷バー」と同一の方式です。

 

それでは、キリン一番搾り(大びん630円)をトトトと注いで乾杯!

 

おつまみには、カレーライス(ミニ300円)。デパートの食堂といえば、こういう素朴なものがいいのです。グラタン(460円)やピザ(520円)も魅力的です。

8人以上集まると宴会コースもお願いすることができ、2,000円で生ビールや焼酎・日本酒などの飲み放題もできちゃいます!

 

デザートはみんな食べているソフトクリーム。このサイズで”ミニ”!しかも130円と駄菓子屋さん価格です。通常サイズは180円てこの3倍の高さがあるのですが、ノンベエにはミニでも十分すぎるほど。

中心市街地はお世辞にも賑やかとは言えませんが、マルカンビル大食堂は平日の14時頃にもかかわらず、老若男女でいっぱいです。街に愛され活きている空間で飲むお酒は改めてよいものです。

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

 

マルカンビル大食堂
0198-29-5588
岩手県花巻市上町6-2 マルカンビル6F
11:00〜18:30(水定休)
予算1,500円