遠野「酒蔵 待月」 地元の食材をじっくり楽しませてくれる明治創業の名酒場

遠野「酒蔵 待月」 地元の食材をじっくり楽しませてくれる明治創業の名酒場

遠野の街で料亭として明治に創業し、世紀をこえて親しまれている「待月」。現在は先代のあとを継いだ4代目ご主人が、酒蔵待月として店の暖簾を引き継いでいます。喫茶店も併設しており、酒場が開く前でも喫茶店の方で朝からお酒を楽しむことが可能です。

この街で老舗酒場を楽しみたいならば間違いのない一軒。今日はそんな待月にお邪魔します。

 

遠野はストーリーのある街です。カッパ伝説、遠野物語。そして宮沢賢治の銀河鉄道の夜のモチーフとなったJR釜石線のSL列車。近年はキリンビールより全国発売されるとれたてホップ一番搾り(TI)などに使用される国産ホップの産地として、ビールの街・遠野としても有名になりました。

遠野の街は、古き良き山里の佇まいを残し、都会の喧騒から離れのんびり過ごすには最高の場所です。

 

遠野の街とともに歩んできた待月。重厚感ある佇まいに背筋が伸びます。

 

北国だけあって客間までは二重となっていて、立派な玄関には地元の酒樽や観光ポスターがびっしりと飾られています。

 

遠野の歴史を伝える民芸家具や食器などもあり、ここはちょっとした資料館のよう。こんな空間で飲むお酒はさぞ美味しいことでしょう。

 

宴会間、テーブル席、カウンターと用意されていて、様々な利用が可能。今回はご主人のお話を伺いながら楽しめる特等席、カウンターにご案内いただきました。

 

遠野は東北新幹線や東北道が通る花巻と太平洋側の街・釜石のちょうど中間に位置し、山里でありながらも海産物の仕入れも容易な場所。豚や鶏、山菜といった山や里の食材に加え、いなだや蛸、鰹にメバチマグロ、しいらと三陸を中心とした魚介類も豊富に揃っていすます。

 

お酒の品揃えは、上閉伊酒造などの地酒や、どぶろく特区(同特区認定1号)である遠野らしいにごり酒を用意。日本酒好きもしっかり楽しめるラインナップです。

 

ビールはやっぱりキリンビール。遠野産ホップは「いぶき」という品種で、夏の終わりに収穫され、ほぼ100%をキリンビールが使用しています。街の主要農業のひとつで、遠野のほこりです。

 

キリンビールの看板銘柄、一番搾りで乾杯!

 

ドラフトビールファンの方向けの情報として、こちらのお店は樽ごと冷やす”樽冷”のディスペンサーを使用しています。樽ごと冷蔵保存するこの方式はファンも多いですね。

 

お通しは日替わりで、地元の食材を提供。三陸こんぶや岩手のかぼちゃに癒やされます。

 

かっぱも喜ぶ湧水の地・遠野。水がよいこの街は豆腐料理が古くから名物です。冷奴(400円)など、地元の豆腐を使った料理が揃っています。一品目の注文にぴったり。

 

今日の仕入れからご主人イチ推しのいなだを刺し身で。お皿をはじめとして盛り付けも美しく、魅せてくれる料理はさすがです。

 

山里でも鮮度の良い魚を用意しています。というご主人の言葉の通り、お刺身も、そしてカブト焼きも絶品です。古い店には、それ相応の仕入れ力があというもの。老舗の魅力のひとつです。

 

ビールは樽生の一番搾りから、昭和40年代のキリン味を守るキリンクラシックラガー。老舗のカウンターに似合う一本です。クラシックラガーに樽詰め(生ビール)はなく、昔ながらの瓶ビール(家庭向けは缶ビールもあります)というのがカッコイイ。

 

さぁ、そろそろ日本酒の時間でしょうか。冷蔵庫には季節限定のお酒がたっぷり。

 

どぶろくは遠野の言葉で「どべっこ」。日本酒ずくりが盛んな冬季には伝承行事「どべっこ祭り」も開催されるほど。お酒好きならば、これはぜひ飲まなくては。

 

料理の腕はもちろんのこと、お話好きで楽しませてくれるご主人と楽しく飲むひととき。そこにどぶろくがあれば、もう文句ないでしょう。

 

この”どべっこ”は万山にごり酒(上閉伊酒造)。米のカタチが残っていないにごり酒タイプです。原料米はひとめぼれ。

 

まったり甘いというファーストインプレッションですが、二口目と飲んでいくに従い、発酵からくる酸味による爽やかな余韻が感じられ、喉越しがよいです。

 

岩手の里山の食材を組み合わせた昔から食べられている料理「舞茸と鶏のうま煮」(700円)。濃厚な味に驚かされる舞茸により、味に深みが増していて美味。鶏胸肉はしっかり歯ごたえがあるのにパサツキはなく、程よい脂が舌を擽ります。

 

物語たくさん、お酒や料理も個性豊かな街「遠野」へ、癒やしを求めて飲みに行かれてみてはいかがでしょう。きっと楽しくほろ酔いのひとときを過ごせます。

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ 取材協力/キリンビール株式会社)

 

酒蔵待月
0198-62-2436
岩手県遠野市新穀町3−1
営業時間はお店にご連絡してご確認ください(日定休)
予算3,000円