盛岡「茶の間 櫻山店」 街の風情を楽しむ名酒場。土地の肴で一献。

盛岡「茶の間 櫻山店」 街の風情を楽しむ名酒場。土地の肴で一献。

2019年5月19日

北東北最大の歓楽街、盛岡は大通・肴町。古くから栄えたこの地は、歴史と文化と人々の活気が交差し、お酒を一層色っぽくみせてくれます。

盛岡城に隣接する江戸時代中期創建の櫻山神社は、そんな盛岡中心部の発展を見守り続けてきた神社です。この神社の参道に戦後誕生した昭和ノスタルジーたっぷりの飲み屋街があることはご存知でしょうか。向かいに岩手県庁という街の中枢に接しながら、古き良き北国の酒場風情が残されています。

ここで最も古いと言われている酒場、「茶の間櫻山店」をご紹介します。

 

盛岡へは東北新幹線はやぶさで2時間10分ほど。ビールを片手に流れる車窓を眺めていればあっという間です。

 

駅から目指す櫻山神社のある「内丸」までは、市内循環バスなどで約10分。駅と中心街を結ぶ区間はバスの本数が多いので助かります。

この商店街は門前町というよりは、境内の出店がそのまま店舗になったというほうが正しく、目抜き通りには鳥居が建っています。

 

歴史ある酒場やじゃじゃ麺専門店などがある他、最近は若い人がカウンターに立つお店も登場しています。冬季の雪化粧した様子が素敵ですが、春にほろ酔いで歩く櫻山もまたいいものです。

 

木造2階建て、味のある「茶の間」の看板の光に吸い寄せられて、それでは暖簾の向こう側へ。

 

年号がかわっても、変わることのない素敵なセピア色の店内。通常はカウンター席のみで、L字のカウンターに常連さんたちの笑顔が並びます。

 

場所柄、スーツ姿の男性が主ですが、居合わせた旅行者の方は、盛岡に来たら必ず立ち寄るそうです。ご主人と軽くお話されながら飲んでいらっしやいます。

 

どうぞ!と席を案内いただき、まずはビールを1本。今は珍しくなった大手の熱処理ビール、キリンクラシックラガー(CL)がよく冷えています。ビアタンを満たして流れるように乾杯。

生ビールもキリンで420円(以下税別・ただし1の位は切り捨て)、酎ハイは310円、地元の日本酒は240円と安心して飲めます。

 

料理は何にしましょう。土地の食材や郷土料理を中心に、ノンベエの気持ちを理解しきった秀逸な顔ぶれが誘惑します。新酒の時期から春にかけては、地元岩手の酒粕をつかった料理があり、それも魅力的です。

イカ、タコ、マグロなどの刺身、ほっけやさんま、イカなどの焼き物・揚げ物に、焼鳥やだし巻き卵といった酒場の定番が揃います。価格は400円ほどと手頃です。あぁ、東北の山里の定番、アミタケもありますね!

盛岡の地酒と自家製ぬか漬けでちびりと楽しむのもいいものですよ、とスーツ姿の常連さん。

 

銀鮭のトロ粕煮(420円)が逸品で、このトロトロな濃厚酒粕にもうメロメロにされてしまいます。

 

出汁や塩気もあって、この酒粕だけでも十分に飲めるのですが、鮭の脂の旨味とあわさると更に絶品です。

 

お酒(240円)は八幡平のわしの尾。肉厚のガラスの角8勺グラスになみなみ注いでくれます。

 

これを水飲み鳥のようにきゅっと。

 

刺身ではぜひたこ頭のぶつ切り(400円)を。赤くなく、もちろん吸盤もないタコのあたま。その表面の分厚い部分を濃いめの醤油につけて頂くのですが、これが噛むほどに海の美味しさが溢れ出し、お酒を誘います。

 

老舗ながら、料理もお酒もお手頃で居心地抜群の名店「茶の間」。地元のお酒好きのベテランさんや仕事帰りに頻繁に立ち寄られる方が多いですが、皆さんに配慮しつつ、この雰囲気はぜひ味わってみてほしいです。

盛岡のお酒の場を体感するなら間違えなくおすすめです。きっと、二回目、三回目と通うはず。

素敵なひとときを、お店の皆さんや常連さんに感謝して、ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

 

茶の間 桜山店
019-651-4583
岩手県盛岡市内丸5-17
17:00~22:00(日定休)
予算1,800円