東京都中央区入船。この界隈は、入船、湊、明石、新川など古くからの町名が今も残され、江戸時代に栄えた水運の町の情緒が感じられます。
入船の由来となった入船川は大正時代に、八丁堀も昭和40年頃に埋め立てられ、現在はオフィスビルが立ち並ぶビジネス街となりました。かつて川や堀だった場所は現在、公園などに姿を変えています。
この町で1995年創業の山海料理 「ラクミ」は、界隈で働く会社員たちに愛されてきた居酒屋です。ご夫婦で切り盛りされてきたお店ですが、現在はお子さんが引き継ぎ、ご主人は新たに立ち飲みの「ラクミ」を開業。こちらも一寸一杯楽しむ人々で毎夜賑わっています。
今回は、そんなご主人が始めた立ち飲み、2017年12月開業の「ラクミ入船店」をご紹介します。
八丁堀駅から徒歩3分ほど。八丁堀(桜川)跡碑が置かれた桜川公園近くの路地にあります。周辺はぽつぽつと居酒屋やバー、焼き鳥店などが点在し、繁華街の飲み屋通りにはない落ち着いた風情の中で飲むことが出来ます。
ご主人が切り盛りする店内。平日はもちろん、土曜日も賑わう店内は、スーツ姿の二人組や一人で飲んでいる若い方もいて、老若男女楽しまれています。
街歩きのあとの一杯目は、やっぱりビールでしょう。アサヒスーパードライ(中生380円)で乾杯!
生ビールはスーパードライ、瓶ビールでは赤星の名でお馴染み、サッポロラガー(中瓶550円)も置いています。酎ハイ類は250円~で、全体的にリーズナブルです。プレーンの酎ハイは樽詰めの樽ハイ倶楽部。
日本酒はご主人が選ぶ地酒が並び、雪の茅舎山廃純米などファンにたまらない顔ぶれが揃います。
「ラクミ」に来たら”ますもり(380円)”はぜひ頼んでみてください。内容は日替わりで、升いっぱいに魚介類が盛られています。いわし刺し(350円)など通常のお刺身もありますが、あれもこれも食べたいならばこれがイチオシ。
お刺身が肴ならば、やっぱり日本酒が飲みたくなるもの。越乃景虎特別純米(650円)をいただいて、きゅっと一口。上品な米の旨味と淡麗さのバランスを楽しみ、その余韻にコハダを一口。これで一日幸せに終われます。
まぐろ酒盗かけ(300円)、ゆでヤリイカ生姜醤油(350円)、ぶり大根にカキフライ、何を頼むか悩ましい限りです。箸休めに頼んだこちらはは花わさびおひたし(350円)。この爽やかな辛味がたまりません。
灘の酒が集まり江戸の街に配られた場所、新川。そんな歴史を薬味感覚に思いつつ、灘の生一本・菊正宗のお燗酒。
ほら、もうこれで十分じゃないですか。あ、でもお刺身も食べたいし、アジフライをつまみに酎ハイも飲みたいです。
そういうことで、揚げたてサクサクのアジフライ(300円)が登場です。分厚くぽくぽくの身からふわっと湯気が広がります。
アジフライ、今日の気分はお醤油で。熱いうちに垂らすとすぐに染み込んで衣のエッジを損ないません。
飲んでいると、ご家族の方がお夕飯を取りにやってきました。都心にあってもご家族で営まれているので、どこか懐かしいアットホームな雰囲気があり癒やされます。
着席型のしっかりとした居酒屋をやられているからこそ食材に余裕があり、種類豊富な料理が楽しめる立ち飲みの「ラクミ入船店」。お近くでしたらぜひ。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
立ち飲み居酒屋ラクミ 入船店
東京都中央区入船1-2-4
17:00〜23:00(土は21:00まで・日祝定休)
予算1,800円