【閉店】蒲田「三州屋本店」 ここが本店。老舗大衆割烹を心ゆくまで…

【閉店】蒲田「三州屋本店」 ここが本店。老舗大衆割烹を心ゆくまで…

2020年6月8日

飲み屋とひと括りにしても、老舗酒場、やきとり、立ち飲み、角打ちなど様々。いずれも好きなのですが、とくに好んで訪ね歩くお店は「大衆割烹」です。ベテランの板前さんが包丁を握り、気取らず、良心価格で、旬の美味しい魚介類などを楽しませてくれる大衆割烹は、魚好きにはたまらないスポットです。

三州屋は現在7店舗あり、都心部を代表する大衆割烹です。各店は暖簾分けの関係で、いずれの店舗も半世紀近い歴史があります。その本店が大田区・蒲田にある「三州屋本店」です。

 

JR蒲田駅東口すぐ。駅前広場に面した三州屋は、創業から60年以上、老舗らしい風格を漂わせています。渋さから敷居の高さを感じてしまいがちですが、土曜日は正午前から通し営業、平日も15時にオープンし、500円前後の料理で楽しめる、まさしく「大衆」的なお店です。

 

壁に向いた10席(平常時)のL字カウンターと、4人テーブルを配置したコンパクトなつくり。店の奥が厨房にあり間に仕切りがあることから、客席は静かな時間を過ごすことができます。店内にはテレビはなく、あけられた窓から聞こえる街の喧騒や電車の行き交う音が静かに聞こえてくる程度。

 

久しぶりの三州屋本店。やっぱり心地いい空間。

三州屋本店の生はキリンです。生麦で作られた状態抜群の樽生一番搾り(560円)。では乾杯!

お通しはしらすおろしと冷奴から選べます。

 

瓶ビールはキリンクラシックラガーとサッポロヱビスビールの二種類。ともに嬉しい大ビン(720円)です。ホッピーセット(450円・ナカ320円)、チューハイ類は420円。イチオシは老舗酒場でよくみかける緑色が濃い業務用玉露茶を使用した玉露割り(420円)です。

 

三州屋といえば「鳥豆腐」(480円)。ほぼ魚料理オンリーの三州屋各店において、貴重な肉料理。蒲田の本店には鶏の唐揚げ(500円)、串かつ(520円)もあります。

まぐろぬた(480円)、どじよう丸煮(600円)など、多くの料理が500円前後と、今の時代では割安感を感じる価格設定です。

 

加えて、今日のおすすめがはいるホワイトボード。歴史ある店は、魚屋(卸)との長い付き合いも強みの一つ。ちょうどよい食材を手頃な価格でだしてくれる恩恵をしっかりと楽しみたいです。真鯛刺身(480円)、本まぐろ刺身(680円)など。

 

しまあじ刺身(580円)。後味のよさはさすがシマアジ。ハラのほうですが脂ののりはほどほどで、コリコリとした食感がお酒を誘います。

 

三州屋の定番酒は全店で灘の酒「白鶴」(小徳利400円)。大手銘柄がつくる普通酒のこのどっしりした味は、やっぱり燗酒が合うと思います。徳利を湯煎して燗をつけるため、滴るお湯を受け止める袴(はかま)をつけて運ばれてきます。最近見かけなくなった、徳利袴。これもまた老舗のお店の魅力のひとつでしょう。

 

「まあ、一杯。」と、一人飲みでも心でつぶやいて、シマアジの余韻にきゅっと合わせます。辛口のお酒で背筋が伸びる気分。

 

必ずと言って良いほど頼む、三州屋の鯛カブト。今日は塩焼きか、酒蒸しか、やっぱり定番のかぶと煮(いずれも580円)か。

 

三州屋本店のかぶとは相変わらずかなりの大物。一人ならば、これ一品でも十分なほどです。引き締まっているのに脂も蓄えている頬肉、脳天の身もなかなか。しっかり濃くて甘じょっぱい、まさに江戸風の味。これで飲む日本酒がまたよいのです。

 

レモンサワー(ベースはキンミヤ焼酎)をもらって、ほっと一呼吸。

 

鳥豆腐(480円)。作り置きではなく、注文を受けてから煮始めるので少し時間がかかります。鰹と鶏の出汁がきいた、一人前の水炊きのようなもの。ポン酢の小鉢がでてきますが、そのままでも優しい旨味があってポン酢は風味づけ程度で食べるのが私のおすすめ。

 

鶏肉、豆腐、春菊、白ネギだけのシンプルな内容ですが、毎回食べたくなる一品。

 

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蒲田の三州屋は全国から取り寄せたこだわりの地酒を豊富に揃え、飲みきりで次々と銘柄が変わっていきます。豊富な地酒と旬の魚を楽しみに来るご隠居さんの姿が多いのも、三州屋本店らしい光景です。

 

繁華街・蒲田とは思えない、静かな時間が流れる三州屋本店。大衆割烹がお好きでしたら、一度は訪ねてほしい名店です。

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)