【保留】［世界の大衆食堂］香港 九龍『富記粥品』で、ガチョウをつまみに青島ビール

香港・九龍の裏路地で飛び込んだ食堂。そこで食べた燒鵝（ガチョウのロースト）が忘れられません。店の名は『富記粥品』。香港ローカルの間では評判の大衆食堂だそう。店名に入る「粥」の文字の通りおかゆが看板料理ですが、お酒あり・23時過ぎまで営業という、香港版「街中華」飲みスポットでもあります。

世界のローカルな食堂でみつける、絶品おつまみ

香港・旺角（Mong Kok）で半世紀続く大衆食堂へ

本格的な海外旅行の再開を前に、筆者おすすめの海外ローカルフードをご紹介します。

羽田から飛行機で約5時間。香港国際空港から九龍までは、エアポートエクスプレスで約20分。ニューヨークやロンドンと並ぶグローバル都市で、世界有数の人口過密都市でもあります。

香港100万ドルの夜景と言われ、英国統治時代から日本人観光客に人気の都市ですが、グルメ枠を忘れてはいけません。香港は大陸の食文化に、港湾都市ならではの魚介料理の数々、そして国際都市ならではの世界の食文化が入り交じる、一大「食いしん坊」タウンです。

尖沙咀にあるハイクラスホテルのレストランを目指すもよし、観光地として有名な九龍ナイトマーケットの屋台メシを食べるもよし。

外観

筆者の目的は、街の大衆食堂にあります。目指したお店は旺角にある『富記粥品』。聞けば60年以上続いている店だとか。

歩道からは周囲はよくみえませんが、非常にレトロな巨大なコンクリート建造物の中にあり、これぞ香港という密集度が非常に高いエリアの裏路地にあります。

香港の人たちには有名なお店ですが、観光客の姿は皆無です。そのため、英語メニュー（当然日本語も）はありませんし、英語も通じません。ただ、街の大衆食堂ですから値段は手頃。思っていたものと違った料理がでてもご愛嬌です。ここは思い切って、漢字3～4文字を見ながらインスピレーションで頼んでみようではありませんか。

内観

中国文化圏の食堂でポピュラーな、入口に厨房、奥にテーブルという構造です。古い店ですが、店内はこれでもかと蛍光灯が照らしており、壁一面の白いタイルと鏡張りの空間に清潔感を感じます。

一人客でもグループ客でも、相席ごめんの大きなテーブルがあり、ローカルの人々が思い思いに過ごしています。中国系の人では珍しく？、お酒を飲んでいるグループも多いです。

品書き

ビールは青島ビール：約30香港ドル（約500円）

料理はほとんどが50香港ドル（約800円）ほど。名物は干炒牛河（牛肉平打ビーフン麺炒め）と秘製燒鵝（ダチョウ焼き）、及第粥（豚モツの粥）、切鶏飯など。料理は40品ほど。

世界の大衆食堂で街を肴に、ビールが進む

街の大衆食堂や酒場をみると、その街の素顔が見えてくる――

地元の皆さんがワイワイと楽しく過ごしている空間に一人身を置くと、その街の風景の一部になれたような気がします。喧騒も酒の肴と思いながら、ごくっと進む青島ビール。乾杯！

秘製燒鵝（70香港ドル）

この店を訪ねた理由は、これ！燒鵝（ガチョウのロースト）です。道路からみえる店頭で、焼き豚と並んで丸肉のままぶら下がっているガチョウ（グース）の照焼を、ささっと食べやすく包丁を入れ、豪快にお皿に盛って出してくれます。

飴色に輝く皮目は、見た目通りにパリパリとしており、甘いタレで照焼に近い味付けがされています。お好みでチリソースにつけて食べるのだそう。

これでビールが進まないはずがありません。香ばしく、柔らかく、噛むと肉汁がじゅわっと滲み出てきます。その旨味はとても濃厚です。鶏よりも脂がのっている印象で、一度食べたらクセになります。東京でも1,000円くらいで食べられるお店を探したくなります。

乾炒牛河（40香港ドル）

「ゴ－チャ－アウホ－」でいいのかな。平打のビーフン（ライスヌードル）に、甘じょっぱく下味をつけた牛肉と野菜をあわせ、油と醤油で豪快に炒めたもの。ガッツリ系な料理ですが、味付けは日本人の好みで箸が止まりません。追いかけるようにビールもぐんぐんと進みます。

香港の大衆食堂”アルアル”ですが、お店の皆さんは終始真顔で表情を変えません。外国人でもローカルの人にでも、変わらずドライに接しています。ですが、たどたどしいオーダーでもしっかり受けてくれますし、何より料理が美味しく、店を出る頃には「あのお母さん、いい人だったなぁ」と思えてきます。

青島ビールを数本空にして、お腹いっぱいになりました。世界のローカル食堂めぐりはやめられません。

ごちそうさま。

（取材・文・撮影／塩見 なゆ　取材時期／2019年）