神田に誕生した『ちどりあし』は、日本酒・日本ワイン好きならば一度は訪ねて欲しい居酒屋。店主は都内の有名酒販店の社員だった方で、お酒の魅力をもっと伝えたいという想いから同店を開業しました。こだわりのお酒が350円~とお手頃なのも嬉しいです。
酒が好き過ぎて、酒屋から飲食店へ
今回ご紹介する居酒屋は、東京・千代田区、JR神田駅から徒歩2分にある店『ちどりあし』。2023年1月9日から営業を開始した新店です。
同店の店主・北殿さんは長年、酒類販売に携わってきた方で相当なお酒の知識を持っています。都内でけでなく海外でも日本酒の販売や提案を経験されており、近年は台東区の有名酒販店で飲食店向けの営業に携わっていました。
いつか自身が好きなお酒を提供する飲食店を開きたいという想いがあり、今回、念願かなって開業となりました。
お酒にこだわりがある店と聞くと敷居や、そもそも値段が割高なイメージがあるかもしれませんが、『ちどりあし』は手頃な価格で、日常的な酒場として気軽に利用できます。
外観
店は神田駅から日銀通りを南へ80mほど。ワイン専門店柳屋の地階にあります。
地下の店舗は外から様子がわからないので不安かもしれませんが、本記事が「行ってみようかな?」という判断材料になれば幸いです。
内観
店内は4人用のテーブルが4卓にカウンター4席というコンパクトなつくり。完全オープンの厨房と、びっしりとお酒が収納された冷蔵ケースが特徴的。
地階店舗ならではの一体感があり、お酒好きの秘密基地のような雰囲気です。
温厚で物腰柔らかな店主はお酒について尋ねればいろいろ教えてくれますが、「肩肘張らずに気軽に飲んで欲しい」というスタンスなので、ビールや酎ハイ、一升瓶ワインなどを飲む大衆酒場的な利用も歓迎してくれます。お通しはありません。
品書き
お酒
- サッポロホワイトベルグ樽生:350円
- サッポロ生ビール黒ラベル:550円
- 和製カリモチョ(日本ワインのクラフトコーラ割り):650円
- 日本酒:350円~
- 日本ワイン:500円~
- 金鵄盛典 特別純米:400円
料理
- 愛媛産真鯛のなめろう:680円
- 塩辛の味噌和え:480円
- うずらの青唐醤油麹漬け:480円
- 冬野菜の塩べったら漬け:580円
- 前菜の3種盛り合わせ:880円
- 本日の自家製ピクルス:480円
- ドライフルーツ泡盛漬けクリームチーズ:580円
- とうふの味噌漬け:480円
- モンドールのポテサラ:580円
- 名古屋風ドテ煮バケット添え:680円
- 燻製盛り合わせ(カキ・帆立・うずら卵・カマンベール):880円
- サーモンの切込み:680円
- 塩麹仕込みの鶏唐揚:580円
- 本日の生ハム盛り合わせ:1,280円
- 本日のチーズ盛り合わせ:1,080円
など(取材時等に確認した金額です。値段は変更になっている可能性があります。)
貴重なプレミアム銘柄も適正価格!まるで角打ちのような居酒屋
サッポロ生ビール黒ラベル(550円)
日本酒がメインですが、まずはビールで整えてから。銘柄は北殿さんの好みからサッポロ生ビール黒ラベルが選ばれました。当然、生ビールの提供品質は完璧です。それでは乾杯!
金鵄盛典 特別純米 無濾過生原酒(400円)
お酒は日本酒を中心に常時30品以上揃っています。店主が公私を問わずテイスティングしてきた中から選りすぐりの銘柄揃いで、聞けば味覚の情報やペアリング提案はもちろん、蔵の歴史など背景までも教えてくれます。
そうしたお酒の中で、番号札「1」に選ばれている銘柄は、加古川市内唯一の酒蔵・岡田本家がつくる「金鵄盛典(きんしせいてん)特別純米 無濾過生原酒」です。
兵庫県産五百万石60%磨き。飲める店が限られた、非常に珍しい銘柄です。
「お燗はご自分でどうぞ」というのが『ちどりあし』のルール。お燗にあうお酒や適温についてはもちろんアドバイスしてくれます。
カウンターにも小さな酒燗器がありました。店主が以前勤めていた酒販店は小売店内に角打ち(有料試飲)スペースがあり、そこでお客さんが思い思いにお燗していたことがヒントななったそうです。
和らぎ水もセルフサービスで完備。今は終売となったカップ酒のレトロ瓶がコップ代わりです。
お酒は開栓後から酸化が進むという考えから、『ちどりあし』では抜栓した日本酒は予め1杯単位(100ml)に小分けにし、王冠を打って冷温保管しています。
風味を維持することが目的ですが、提供が早いのも嬉しいです。もちろんレッテルを見ながら飲めるよう、注文したお酒の空瓶も持ってきてくれます。小分けの瓶で素早く提供されるとなんだか酒屋さんみたいです。
陸奥八仙 特別純米生(550円)
「酒屋さんみたい」といえば、そのお酒のラインナップと価格設定も角打ちのようです。”適正価格に飲食店運営分の値段を均等に載せただけ”という価格設定で、希少銘柄も手頃感たっぷり。
亀齢(きれい)辛口純米 八拾 辛口純米生(350円)
西条の亀齢酒造がつくる生酒。精米歩合80%が名前の由来。季節銘柄や特徴的な銘柄が多く、あれもこれも飲んでみたくなります。100mlという単位はいろいろ飲むのには丁度いいですね。
鳳凰美田純米吟醸初しぼり生(550円)
冬は新酒の季節、ここならば全国から集められたフレッシュなお酒が楽しめます。
行光(ゆきみつ) 特別純米酒(700円)
蔵本屋本店という酒蔵をご存知でしょうか。私はこちらで頂くまで知りませんでした。西条市の酒蔵で、なんと社長兼杜氏である田坂さんという方がたった一人で仕込みから瓶詰めまでしている、日本最小単位の酒蔵なのだそう。
松山三井を50%まで磨き、西条の名水で仕込んだこだわりのお酒。都心が生活圏で同銘柄が気になる方は『ちどりあし』で飲むのが最も手軽な選択でしょう。
褒紋正宗ゴールド(450円)
珍しいお酒といえば、販路が制限されている褒紋正宗もあります。限られた流通経路で選ばれた飲食店でしか飲めない白鷹(旧辰馬悦蔵商店)がつくる最上級のお酒であり、伊勢神宮御料酒です。
小布施ワイナリー そがちゃぶ台ワイン(800円)
『ちどりあし』は「日本の発酵」がテーマです。日本酒と同じく醸造酒である国産ワインも用意されており、店主みずからワイナリーに足を運ぶなどして、たしかな接点があるお酒が用意されています。
酒井ワイナリー まぜこぜ赤(550円)
一升瓶にはいった山形のまぜこぜワイン。文字通り、ワイナリーで造る全種類のお酒をブレンドした変わり種。マイルドな味わいです。
和製カリモチョ(650円)
変わり種繋がりで、塩山にある機山洋酒工業の赤ワインをクラフトコーラ「日々乃コーラ」(大阪)で割った「和製カリモチョ」はおもしろいカクテルです。厚みがあり複雑な味が楽しめます。
サッポロホワイトベルグ(350円)
一番手頃で、これを目的にふらりと立ち寄るのもいいなーと思える、ホワイトベルグの樽生。いろいろ飲み比べたいときもあれば、気軽に2,000円未満で楽しみたいときもありますから!
ペアリングを考えた料理しかない贅沢
モンドールのポテサラ(580円)
チーズプロフェッショナル(チーズプロフェッショナル協会)の資格を持つ店主と、長年洋食をつくってきた料理人さんが考案したモンドール(フランス・スイスのチーズ)をたっぷりつかったポテトサラダ。
ポテサラは居酒屋料理の指標です。チーズ好きにはたまらない逸品でした。
前菜の3種盛り合わせ(880円)
いろいろつまみたいときは、自家製ピクルスや豆腐味噌漬け、ブルスケッタなどを盛り合わせた前菜盛り合わせがぴったり。
生ハム盛り合わせ
生ハムも店主みずから探し出した国産のこだわりあるもの。注文を受けてからスライスしてくれます。
名古屋風ドテ煮バケット添え(680円)
酒場料理といえば煮込み。甘い味噌味の名古屋風ドテ煮もいい味です。日本酒にもワインともよくあいます。
ごちそうさま
3,000円ほどの予算で、いままで飲んだことがない美味しいお酒に出会えると思います。
土日は14時から営業しており、神田で少なくなった土曜日・日曜日のお昼酒スポットとして嬉しい存在。
店主の北殿さんの人柄を感じる優しくて心地いいお店です。お酒の知識が深まるだけでなく、お酒っていいなと改めて感じる取材となりました。
近くの酒場
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)