酒類各社の取り組みは?外食ソリューションEXPO(居酒屋JAPAN)2024レポート

酒類各社の取り組みは?外食ソリューションEXPO(居酒屋JAPAN)2024レポート

2024年01月17日・18日の2日間、毎年恒例の「外食ソリューションEXPO」(焼肉ビジネスフェア・居酒屋JAPAN)が池袋サンシャインシティ文化会館で開催されました。

飲食・外食の専門展示会で、とくに居酒屋業界としては非常に規模の大きな展示会となっています。毎年、大手ビールメーカーなどの酒類各社が出展していますので、その様子をレポートします。

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アサヒグループ

まずは、鮮やかな青が爽やかなアサヒビールから。アサヒ飲料(カルピスを含む)と共同出展です。

主力のアサヒスーパードライとアサヒ生ビールの2液種を大きくアピールしつつも、近年同社が力を入れている飲み方の多様性「アルコールを含まないものや微アルもいいよね」という取り組み「スマドリ(スマートドリンキング)」をPRするブースになっています。

炭酸水を注ぐだけでつくれる樽ハイ倶楽部ブランドのレモンサワーの素、現存するアイリッシュウイスキー蒸溜所の中では最古であるBUSHMILLS(ブッシュミルズ)などが並びます。BUSHMILLSは、アサヒビールが以前から販売していましたが、ニッカ推しの影に隠れていた印象がありました。ここにきて何かしらの展開があるのかもしれません。

スマドリ関連では、度数を抑えたアルコール分3%のライトなハイボールがつくれるリキュール『アサヒ ハイボリー 18%』『アサヒ ハイボリージン 18%』も登場。2022年の全国発売以降、引き続き力を入れていることがわかりました。とくにハイボール用のハイボリーはニッカの希少な原酒を使用しており、微アルというだけでなく、味覚も満足感が得られます。

アサヒ飲料では、2023年登場、割材にも使える緑茶「アサヒ 颯(そう」や、定番の三ツ矢サイダー、バーで大活躍のウイルキンソンなどを陳列していました。バヤリースオレンジの245缶は懐かしさが感じられます。

一部で人気のカフェイン飲料「モンスターエナジー」もアサヒ飲料の商品です。モンエネハイとか、もうありそう。

キリングループ

総合酒類メーカーのキリングループは、いま力を入れて育てているSPRING VALLEY(スプリングバレー)と、旗艦ブランドである「キリン一番搾り」のふたつを全面に出した展示です。「SPRING VALLEY 豊潤<496>」は2月より中味・パッケージともにリニューアルを予定しているため、力が入っています。

一番搾りは、従来の大樽(樽生)を設置するほど生ビールの出数が見込めない店舗でも、注ぎたての美味しさが提供できるように考案された小型サーバー「TAPPY」での提案となっていました。キリンのパッケージイノベーション研究所が開発した同社のオリジナルで、回路がほとんどないため、水通洗浄のロスが軽減でき、また、3Lペットボトルのため開封後、比較的早く使い切れるという特長があります。

2口型に続いて、スリムタワーPCサイズの1口型も登場。液種は、一番搾りのほか、陸ハイボール、キリンサワーの合計3種類です。

RTS系では、去年同様、炭酸水とあわせるだけでつくれる氷結の”ナカ”が紹介されています。缶商品の氷結特有の「ダイヤカット缶」のテイストを取り入れた専用グラスも紹介されていました。

サッポログループ

日本最古のビールブランド「サッポロラガー」、日本最古のビヤホール「銀座ライオン」など、歴史あるブランドを多数抱えるサッポログループ。バックパネルこそ同社主力の「サッポロ生ビール黒ラベル」ですが、並べている商品は、歴史ある商品群ではなく、少しアレンジを効かせたものとなっていました。

大きく場所をとって並べているのは、同社と長年協力関係にあるバカルディ社の看板ブランド「バカルディラム」をつかった「バカルディハイボール」です。

深みのある「バカルディ ゴールド」を使うことがポイント。

引き続き、ウイスキーはデュワーズ、ジンはボンベイ・サファイアを推しています。その隣には、見慣れない香水瓶のようなリキュールが。これはフレンチリキュールの「サンジェルマン エルダーフラワー」。マスカットのような香り、グレープフルーツや洋梨をあわせたようなフレッシュな味わいです。

サッポロ飲料の系譜にあるポッカサッポロでは、おなじみのレモンサワーやドレッシングで使えるポッカレモン、老舗酒場御用達の玉露入りお茶、男梅シロップなどが並びます。

そんな中で、見かけないデザインの1Lパッケージを発見。これは近年酒場でよくみかける「北海道コーン茶ハイ」のベースになる業務用のお茶ではありませんか。いままでは、真っ白なパッケージに、最低限の表記があるだけでしたが、デザインが変わりました。

宝酒造

日本最大の和酒メーカーであり、甲類焼酎の生産数も最多である宝酒造。日本酒は由緒あるブランド「松竹梅」ですが、今回の展示は焼酎一色になっています。

宝酒造の調査で、20代にも人気があるという「宝焼酎やわらかお茶割り」。ここ10年近く宝酒造はお茶割りシリーズを推し続けています。今年は、樽貯蔵焼酎を一部使用した極上宝焼酎の成分と、緑茶が持つ旨味成分の親和性の高さに注目した、「極上お茶割り」に力を入れているとのこと。

展示会でも試飲させてもらいましたが、このときの緑茶は伊藤園のおーいお茶でした。以前、松戸にある宝酒造の工場取材後に飲ませてもらったのは、サッポロ玉露茶。いろいろなお茶のペアリングを試してみたくなります。

宮崎本店

酒場ブーム、ビールテイストの麦芽発酵飲料ブームもあって一躍有名になった「キンミヤ焼酎」をつくる、三重県四日市にある歴史ある日本酒蔵「宮崎本店」。ブースのつくりも、「キンミヤだけじゃない!!」と大きく書かれており、同社の日本酒銘柄である「宮の雪」の提案に力を注いでいました。

全国燗酒コンテストで入賞した「燗酒」をテーマにした顔ぶれです。珍しいのは「宮の雪 日本酒 純米 にごり酒」のお燗提案です。

支店長が「美味しいよ」と注いでくれました。甘酒のようなねっとり感はなく、米のコクに続く余韻はすっきりしており、食中酒にも楽しめる味わいでした。

甲類の金宮と対をなす乙類の黒宮。本格麦焼酎「くろみや」。常圧と減圧の焼酎をブレンドしたコクのある味わい。今流行りのソーダ割りでも楽しめました。

神楽酒造

「神楽酒造」は宮崎県高千穂町にある焼酎メーカーです。宮崎では大定番の焼酎のひとつである「ひむかのくろうま」の蔵。お湯割りやロックのイメージが強い本場の焼酎ですが、こちらもソーダ割りに力を入れています。

くろうま長期熟成酒は樽熟成なので琥珀色をしています。ロックで飲むとまろやかな味わいですが、ソーダで割ると香りがより引き立ち、別のお酒を飲んでいるような違いがあります。名称「うまサワー」で展開していくとのこと。

三田飲料

三田飲料を飲んだことがない居酒屋好きはいないと思います。Sunfieldブランドでおなじみ、アサヒシロップ、ポッカサッポロ、サントリーシロップのような総合酒類の系列ではない、独立系の業務用のシロップメーカーです。フルーツ系サワーでよく使われています。

そんな同社の新商品は、なんと炭酸水と合わせるだけでハイボール風味になる「◯(まる)でウイスキー」と、同じく甲類焼酎のような味になる「◯(まる)で焼酎」です。

ハイボール風になる割材といえば、有限会社ジィ・ティ・ユーのホイスがありますが、令和になってウイスキー風エキスが新たに登場するとは驚きます。また、甲類焼酎のような味になるエキスも非常にチャレンジな商品です。どちらも飲みましたが、お酒が飲めない状況・環境ならば、十分選択肢にはいると感じました。

今年は業務用酒類、完全復活の年

酒類提供の制限や、宴会の自粛、物価高騰と、この4年間苦しめられてきた酒類提供のある外食産業ですが、今年は完全復活となることを、外食好きとして強く願っています。ともに歩む酒類業界の皆さんの挑戦も含め、外食業界をこれからも取材してまいります。

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)